見出し画像

アマゾンプライムお薦めビデオ④ 170:ギターウルフのためのギターウルフによる映画かと思ったらそうでもなかった!これぞロックファンにして&B級映画ファンのための隠れた傑作!『WiLD ZERO』

前回、傑作アニメ映画『ルックバック』を紹介した際に、新作をしれっと公開してしまうアマゾンプライムビデオの凄さを述べたが、隠れた名作、傑作、怪作というものも同じようにしれっと公開してしまうのもアマゾンプライムビデオの凄さである。

そして今回紹介する作品『WiLD ZWRO』も、その手の、知る人ぞ知る隠れた名作にして傑作にして怪作である。

この映画について紹介する前に、まずはロックバンド「ギターウルフ」について言及しておく必要があろう。革ジャン、リーゼント、サングラスというファッションからロカビリー系かと一瞬思われるかもしれないが、実はガレージ、パンク系のハードなロックバンドである。ギターウルフの名の通り、ギター&ボーカル担当のギターウルフことセイジ氏が奏でるギターサウンドが魅力の、一度聞くと間違いなくはまってしまう類のバンドである。その活動歴は長く、海外でも高い評価をされている(というかむしろ海外での評価の方が高いかも)。今ではセイジ氏を除いてメンバーが変わっているが(よって、ギターウルフ=セイジ氏、と一般には捉えられてしまっているが)1999年公開のこの映画には今は亡きベースのビリーも含めたオリジナルメンバーが登場している。もちろん流れる音楽も基本的には全編バンドとしてのギターウルフの音楽である。

しかし、この映画、決してギターウルフが主演という立ち位置ではない。ギターウルフはなんというかギターウルフでしなかく、それ故に別格の立ち位置である。映画上の主役はむしろ「ACE」こと遠藤雅氏である。そしてこれは日本人である「ACE」とタイ人である「トキオ」の国籍も性別も超えた愛の映画である(というか国籍の件はこの映画自体ではあえて強調されていないが)。そして、というかだからこそ、これは「ロックンロール」の映画となっている。そう、すべての差別や区別に対して「No」と言い続けるのがロックンロールのスピリッツ(=精神)なのだから。

さらにこの映画、なんとかのタイ国軍が全面協力しているということにもまた驚かされる。確かにこの映画の無国籍感は際立っているが(えっ、これ日本なの?と見ている人は何度も思わされるであろう)、まさか、タイで撮影していたとは!。まあ、ある意味ぶっ飛んだ映画ではあるがその意味で(というかむしろいい意味で)この時代のタイは(そして日本も)はぶっ飛んでいた。そんな時代だからこそ許されたのかもしれないが、本当に火薬(というよりも弾薬?)を使っているのだから恐れ入る。そしてそれを見事に映画という形でパッケージング化しているのだからさらに恐れ入る。ロックンロール、パンク、ゾンビ、惨殺、武器弾薬、爆破、UFO、オカルト、セクシーという我々が好きではあるが表立っては大きな声では言えないものがここにはぎっしりとつまっている。そしてそれらをまとめているのが何度も言うようだが「ロックンロール」というスピリッツ」(精神)なのである。Love&Peaceと破壊と暴力、その両義性こそがロックンロールのスピリッツであり、魅力である。そしてその魅力が通低音として流れているからこそ、この映画にはギターウルフというバンドの存在は欠かせなかった。そう、だからこそ、バンドとしてのギターウルフはこの映画の主役(=フロントマン)ではなく、通低音(=ベース)なのである。

ということで、今となっては我々はこれをギターウルフの初代ベーシストであり夭折してしまったビリー氏に捧げざるを得ないであろう。しかし、この映画が撮影された当時、ビリー氏はまさか自分の死というものを夢にも考えてもいなかったはずである。そしえ、それこそが人生であり、人生であるという意味でロックンロールなのである。ラブ&ピースとは決して安定した平和や平穏の状態を指すではない。むしろ破壊暴力と紙一重の「刹那(せつな)」の瞬間なのである。そして逆に言えば(というかよく考えてみると同じことの繰り返しであるが)破壊ロ暴力というものはラブ&ピースとほんの紙一重のものなのである。

ギターウルフセイジ氏は生き残り、今も音楽を続けている。一方初代ベースウルフことビリー氏はもうこの世にはいない。でもギターウルフというバンド自体は続いている。そして我々は今でもそのバンドとその存在に惹かれ続けている。というのもこのバンド自体がまさにロックンロールのスピリッツ(精神)を体現しているからである。そして、この映画もある意味めちゃくちゃながらもその精神(スピリッツ)を見事に描いている。だからこその傑作なのであり、名作なのである。すべてのロックファン、すべての映画ファン必見の映画である。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集