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【雑記】SIGMA BFの発表について思ったこと
はじめに
2025年2月24日、株式会社シグマはSIGMA BFと2本のレンズを発表しました。
本記事では、SIGMA BFとシグマのリブランディングについて、2016年からのシグマユーザーとして思ったことを記します。
※サムネイル写真は下記HPより
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全く新しいカメラ
SIGMA BFを始めて見たとき、コンセプトモデルだろうと思いました。それまでのカメラの文脈からすると非常に前衛的に感じたからです。
しかし、SNSを追ううちにそれがもうすぐ世に出ることを知ります。2018年のフォトキナで、シグマ、ライカ、パナソニックがLマウントアライアンスを締結する、という発表を見たとき以来の感覚でした。
また、シグマは併せてVI(ビジュアルアイデンティティ)刷新とArt Projectsという取り組みを発表します(後述)。
これはシグマの新時代への夜明けを思わせ、SIGMA BFをはじめとする新製品への意気込みは並のものではないことを間接的に示していました。
これらのリブランディングを手掛けたのは、Stockholm Design Lab。
シグマ内部のデザイナーとコラボすることで相乗効果を生んだのでしょう。
HPでは、adidasやコカ・コーラなどの名だたる有名企業にシグマが名を連ねています。
Appleでもなければライカでもない
情報収集していると、SIGMA BFはAppleやライカの製品とよく比較されているのを見かけました。
しかし、わたしはどちらとも異なるデザイン、文脈のカメラだと思っています。
fpで打ち出した、「デジタルカメラの脱構築」をSIGMA BFで完成させた。あくまでシグマの哲学の上に立っている、Made in Aizuのカメラ。わたしはそんなふうに思いました。リブランディングを経ても、シグマはシグマです。
このようなカメラが日本のメーカーから発表されたことに、わたしはとてもわくわくしています。
Iシリーズのデザイン刷新
Lマウント用にシルバーモデルが追加され、すべてのレンズでマグネットキャップが使用できるようになり、フォントが新しくなるなど、多数の変更がありました。
Iシリーズのシルバーモデルを望む声を聞くことも多かったため、これは市場に歓迎されそうだと感じました。
しかし、今年1月に65mm F2を購入したばかりのわたしとしては、少々複雑な思いがあります。SIGMA BFに装着する際、新デザインでないとレンズとカメラでフォントが異なってしまうからです。
同様に、fpユーザーは今後新品のレンズを購入するときにフォントが合わなくなってしまいます。リブランディングに際して仕方のない部分ではありますが、ちょっと気になった点でもあります。
価格について
SIGMA BFは公式オンラインストアで385,000円です。
2,400万画素のデジカメとして見れば非常に高価ですが、多くの手間とコストのかかったカメラとして見れば、さほど高くはないようにも思えます。
しかし、$1,999という海外での値付けに対して、日本での価格は相対的に少し高いと感じました。税抜き346,500円は、米ドル/円が170円以上となる計算だからです。
とはいえ、2024年7月には160円台にまで円安が進行しました。シグマのカメラの製品サイクルは長いので、5年後には170円を超えているかもしれません。fpが発売されたときは米ドル/円が110円程度だったことを思えば、納得できる値付けです。
それに、日本での価格を下げても、日本で購入していく外国人の手で海外で転売されてしまうことでしょう。他のカメラメーカーも対応に苦慮しているのが伺え、非常に繊細な部分といえます。
ART PROJECTS
同日にART PROJECTSも発表されました。
Sigmaの芸術に対する深い敬意を原動力とするこのプロジェクトでは、Sigma製品の使用の有無を問わず、幅広いアーティストとのコラボレーションを展開していきます。
先述のとおり、シグマのこれからにかける思いが伝わってくる取り組みだと感じました。
消費者がカメラやレンズを購入したことでシグマが得た利益が、アートの振興のために使われる。そして発表された作品が、消費者の感性を刺激し、新たな作品を生み出していく……
その消費者は、もう消費するだけではなくなるのです。ART PROJECTSからは、そんなことを夢見てしまいました。
※以降はわたしの想像で明確な情報源のないものです※
SIGMA BFの登場を示唆していたもの
2023年4月21日の17mm F4と50mm F2の登場を最後に、2年近くIシリーズの更新が止まっていました。
また、SIGMA fpも発売から5年が経過するカメラであり、そろそろ新型が登場してもおかしくありませんでした。
さらに、例年2月上旬にCP+に先駆けて新製品を発表するシグマが、今年は特にアナウンスがありませんでした。
今思えば、これらは嵐の前の静けさであり、シグマのリブランディングと新しいカメラを発表することを示唆していました。
ここからは、シグマのカメラの製品サイクルは少なくとも5年ということも窺えます。安心してSIGMA BFを購入できそうです。
リブランディングに至った経緯の考察
fpが登場した2019年以降、足元では円安が進行し、原材料費の高騰が製造業に重くのしかかっていました。その中にあって、シグマの価格改定は最小限だったと記憶しています。
そのため、新製品のレンズとIシリーズ最初期に発売したレンズの間の価格差が大きくなっていました。
例えば65mm F2などは、かかっているであろうコストを考えると10万円を超えてもおかしくないレンズですが、新品で8万円以下でした。
fpも同様で、製造コストと販売価格の乖離が続いていたのではないかと考えています。
他のカメラメーカーでは、OLYMPUSがOM SYSTEMにブランドを変更した経緯があります。
こちらはより経営的な側面が強かったのではないかと思われますが、それに伴ってOLYMPUSロゴのレンズは生産終了し、OM SYSTEMロゴとして新発売された際には、同じ性能のレンズでもそれまでより価格が上昇しました。
穿った見方かもしれませんが、円安や原価上昇の打開策の一つとしてリブランディングを選んだ…と考えられなくもありません。OM SYSTEMのときと同様、Iシリーズが新デザインとして発売された際は価格が上昇するのではないかと思っています。
しかし、逆にいえば、これは生産完了が発表されたレンズを安く手に入れるチャンスでもあります。fpを使い続ける方、他マウントのカメラで使う方には絶好の機会でしょう。
……などと考えていましたが、福島民報ではシグマについて以下のように記されています。
スマートフォンなどに押され、カメラ市場は世界的に縮小する一方、シグマは2024(令和6)年8月期決算で売り上げ、経常利益ともに過去最高を更新した。売り上げの9割近くが海外で、特に中国とインドで伸びている。
このような状況にあっても売り上げと経常利益が過去最高とは、恐れ入ります。シグマの売り上げに海外が占める割合は以前から大きかったと記憶していますが、円安を好機と捉えて輸出に力を入れていたことが伺えます。
日本国内だけを見て「安すぎたのでは?」と勘ぐってしまいましたが、グローバルな視点で見ればシグマは成功を収めていました。
リブランディングに伴う価格改定によって国内の利益率が改善すれば、シグマの経営はより盤石となり、魅力的な製品の開発や写真文化への投資にいっそうの期待が持てることでしょう。
※以上はわたしの想像で明確な情報源のないものです※
おわりに
本記事では、SIGMA BFとシグマのリブランディングについて、2016年からのシグマユーザーとして思ったことを記しました。
先述のとおり、このようなコンセプチュアルなカメラが日本の非上場企業から発表されたことに、わたしはとてもわくわくしています。
以前、わたしはfp hourというイベントで山木社長をはじめシグマの方とお話しさせていただきました。
イベントでは、ユーザーとの対談のようなコーナーもあり、実際のユーザーの声を製品開発に反映してくれている「小回りのきく小さなカメラメーカー」という印象を受けました。
翻って、本日の基調講演では「既成概念を打ち砕く新しい製品、ブランドを全世界に向けて発信するグローバル企業」という印象を受けました。
これらはどちらも真であり、それが魅力なのでしょう。
2016年にsd Quattroを手にして以来、シグマのファンなわたし。どうやら、これからもやめられそうにありませんね。
(おしまい)
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