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「ふたりの夢」

ごろんと、ソファに寝転がっていた。

映画好きな颯太は、今日観るジャンルを思い倦ねていた。

ホラー、恋愛、アクション、アドベンチャー、ミステリー、

アニメ、ファンタジー、どのジャンルも好きだった。

過去作もシリーズものも関係なく、手当たり次第観ていた。

日によって、気分によって、90分ものや120分ものを見分けていた。

「今日、何食べよう」って、決めるような感覚で

颯太は、学生時代に自作映画を作ったことがある。

映画館上映は出来なかったが、身内だけの発表会は開催することができた。

映画好きな颯太には、熱烈なファンがいた。

同じく映画好きで、有名なプロダクションに所属しているCREATORの

貴文だった。颯太と貴文は、一緒に映画を作るのが夢だった。

憧れの人と一緒に創り上げる。ドキュメンタリータッチの映画を想像して

夢がどんどん膨らんでいった。

今は、颯太と貴文は一緒に映画を観て、映画談義を延々としている。

充電期間中で、1年後には本格始動させて制作することを計画していた。

颯太の悪い癖だが、ソファに座ってポテチを食べながら映画を観る。

感動や驚きのシーンになれば、ポテチが粉々に砕けてこぼしてしまう。

貴文は、そんな颯太の生き方が好きなのかも知れない。

二人で映画を作り上げる。貴文の想いも、どんどん強くなっていった。

猫がネズミを捕まえる映画なのか、大漁の魚を釣り上げた映画なのか

ファスティングをして、ダイエットに成功する映画なのか、

夜の峠道をスポーツカーで、走り抜ける映画なのか、まだ全くわからない。



ある日、そんな颯太に転機が訪れた。

貴文の所属しているプロダクションから、正式な制作依頼が届けられた。

内容は、自身の半生を描くことを前提に映画制作をして欲しいとのこと。

依頼が届けられた後、颯太と貴文は、毎日のように打ち合わせを行い、

颯太の半生をまとめ上げようとしていた。

大したことのない半生のようだけど、紆余曲折があったみたい。

打ち合わせ途中、感極まって、

ふと気がつくと、颯太は泣きながら、貴文に語り続けていた。

何時間も何日も掛けて、語り続けていた。

貴文は、ただただ聞くことしか出来なくて、それでも一生懸命

聞き続けていた。


なるほどって、思ったことの一つとして、

颯太が中学2年生の春、告白された話が、やけに気になった。

英語の先生の授業が、先生のお気に入りの曲を強制的に聞かされて

その曲に対して意見を求められたのがきっかけで、告白されたらしい。



大したことのない半生だけど、映画制作には演出や効果を盛り込める。

如何にして、面白く人を惹きつけて感動させるのか、いや、一人でも

多くの人に観てもらって、思いっきり感動していただけるのか


二人の夢は、始まったばかり

なるほどって、思えることが、まだまだあるみたい。

颯太と貴文の話は、夜通し続いた。


※本作は、フィクションです。登場人物等は、架空の存在です。



下記過去投稿は、ノンフィクションとなっております。
学生時代の熱い想いだけで映画制作をいたしました。
お時間のある時にも、ご覧になってください。


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