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「踊りたくて踊っているのか」

折り畳み傘を、外に広げて干していた。

夜中に風で、ぐるぐると回っていたみたい。

狭い玄関前を、ぐるぐると回っても、どこにも行けないのに。

傘を使い終わった後、すぐに畳むと匂いがするのが嫌で、

出掛けて帰ってきたら、広げて干している。

寝る前に畳んで中に入れるのだが、忘れちゃって干しっぱなし。

よくやることなので、どうのこうの、言うことではないのだが。

なんか踊りたくないダンスを夜中に、踊らされているような、

ラ・ラ・ランドのような、楽しいダンスだったら良いのだが、

風の向くまま、気の向くままのようなダンス。

ぐるぐる回っている傘、いやいや踊らされているダンスを、

見たことがなく、まるで鶴の恩返しのような気分にもなるが、

ひょっとしたら傘自身は、楽しいのかも知れない。

ご主人様に、臭い思いをさせないように、必死に踊っている。

そんな風にも感じる。


陰で隠れて頑張っている、人が寝静まった後に頑張っている、

そんな、ものや人たちがいるのは、確か。


ただ単に、畳むのを忘れただけなのだけど、

朝から雨が降っていて、乾かしても直ぐに濡れちゃうけど、

そんな姿を、愛おしくも感じる時がある。


傘、折り畳みの傘、なんだけどね。





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