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"自由意志"で学ぶということ

夕食のシチューを前にしてまだ何か食べたそうなおおきいさんに「パンもあるよ」と伝えたら返ってきた返事が面白すぎて、いつもなら「いや違うでしょ」とつっこんで、答えを正して先に進めたくなる真面目な自分が出てくるのだけど、そこから続く話を知りたくなった面白がる私が出てきてくれて、以下のような会話のラリーがスタート。

◆今朝食べた残りのパンのことを指して…
おおきいさん「あぁ、あのイタリアパンね」
私「ん? イタリアパン?」
お「そう、イタリアパン」
私「(笑いを堪えて) イタリアパンて初めて聞いたよ。フランスパンとかドイツパンなら聞いたことあるけど…」
お「あー、イギリスパンだわ」
私 「なんでそうなったん(爆笑)」

おおきいさんとMs,Erikaの会話

詳しく聞くと、国名と首都を彼なりに暗記しようと頑張っているとのこと。どうも彼の中で同じカテゴリーに入れちゃう国名と首都名があることがわかってきた。例えば、イタリア(パン) と イギリス(パン)とか、ダブリン と ベルリンとか。この「イギリスパン」からの思考の展開をその後も黙って聞いていたら、彼の暗記パターンが聴覚優位なんだろうなぁということがわかり、ごっちゃになるなら、聴覚で入ってきたものに視覚とかストーリー引っ付けてみることをやんわりアドバイス。そしたら、自分の記憶の曖昧なとことか、覚えていることを確認したくなってきたようで、ヨーロッパ諸国の国名と首都名を地図を見ながら確認していく流れに。

◆食後のお茶しつつ…
お「フランスはイギリスで、イギリスはロンドン」
私「じゃあパリはどこの首都?」
お「それはフランスでしょう」
私「さっきフランスの首都は、イギリスって言ってたよ(笑)」
お 「え、マジで?(笑) イギリスってどこだ? アイルランドの横だよね?」
私「そこ覚えてるのね〜」

おおきいさんとMs,Erikaの会話

といった感じに2人であーだこーだヨーロッパ諸国を眺める時間に。その後も「めっちゃ浮いちゃう死海ってどこなんだろ?」という話から、索引のページ数と2つの記号から該当箇所を探してみたり、どこの国にあるのかと確認してみたり、小さい頃よく眺めた"Maps"(https://www.amazon.co.jp/マップス-新・世界図絵-児童書-アレクサンドラ-ミジェリンスカ/dp/4198637857)という絵本を引っ張り出してきてフランスのページを開いて眺めたり、と学びを彼なりに展開し始めた。

テストの点数だけみると、もっと勉強時間作ればと言いたくなるのだけど、自分の頭に暗記させることよりも暗記するプロセスの中にある学びは豊かだよなぁと気づかせてもらう時間になった。私から見るとそんな遠回りしなくてもと口出ししたくなる勉強のやり方だったりもするのだけど、知識をどうやって自分のものにしていくかは本人が自分でいろいろ試して、やりやすいものを取り入れていく方が合う子だっているのだ。そしてそこに時間がかかっちゃう子だっている。

学ぶことを楽しめるようになるために目の前に現れた選択肢を手にして、選んでいけばよいのだと思う。そしてそれを身近な大人は待ってあげればいい。学校の一斉授業の中では、否応なく他のクラスメイトと比べられたり、比べてしまう状況がたくさんある。焦ったり、戸惑ったりもする。そこを一人で乗り越える強さも育ててあげたいのだけど、時折、一緒に現在地を確認してくれる大人がいれば、気持ちを切り替えて先に進みやすいんじゃないかな。そういう愚痴れる仲間や大人と出会うことも大事だな。環境の構成要素が子供たちにとっては自分を苦しめてしまう材料にも、自分を助けてくれる存在にもなる、そんなことを思った。

後日、主催している"のんびり輪読会"というオンラインの会で、甲野善紀さんと方条遼雨さんの共著"身体は考える"という本を読み進めている中で、/自由意志/ という項目を読んだ時にこの日の何気ない日常の子どもとの出来事のことを思い出した。

さらに彼らからの学びを応用して言葉にするなら、”勉強させよう”と思う”表の意識”は発動させず、”楽しんで一緒に学びたい”という”裏の意識”の方を発動させ、”裏の意識”の方に反応した相手が動き出す。結果”表の意識”の目的も達成されているということ、ちょっと都合よく考えすぎかもしれないけれどいかに自分の目的をわきにおいてほんとうに相手とつながりたいと思う部分がわかると、相互の学びは豊かになっていくのかもしれない。

”表の意識と裏の意識”の概念を体感として持っていると、”本当の自分の想い”みたいなもに気づきやすくなる気がする。そうしていると”我ならざる我”が発動することにも驚かなくなってくるのかもしれない。

”裏の意識”と自由意志はつながっているのかもしれない。

おしまい(2024.12.20)

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