教育についてあ〜だこ〜だ(4)ゆり【リレーエッセイ】
それぞれ教育やワークショップの現場をつくってきた、岩橋由莉・五味ウララ・向坂くじらの三人が、あらためて教育について「あ〜だこ〜だ」言いあうリレーエッセイ。今回は岩橋由莉が、それぞれが持つ表現のエピソードと教育のスタイルとを接続しながら、自分たちについて語ります。【隔週金曜更新】
前回(うらら)↓
さて一周まわって私の番になりましたね
このリレーエッセイで三人教育について書こうということでしたが
三人三様ですね。おもしろいです。
くじらちゃんの小さい頃や学生の頃のエピソード、うららの名前について。もうどれもおもしろくて、どちらにも言いたいことがあります。
高校の時にくじらちゃんが卒業文集に載せる短歌で先生と闘ったこと、すごいなあと思います。わたし、高校の時に姉の学校の紺色のコートを着続けたことでいろんな先生に怒られました。最終的に担任の先生に「言い分はわかるが、他の先生との手前、なんとかこらえてくれ」と言われて折れた自分はくじらちゃんほどの芯はないですな。
うららの書いた名前に関してはね、うららの言う通り、わたしは三つほど使い分けています。出生時はひらがなの「ゆり」だったのですが、身体が弱くて小学二年の時に「由梨」と改名し、三十代の初めで和歌山に戻ってきてフリーで仕事をやっていくにあたり、自分の中にある男性性にも手伝ってもらおうと調べて仕事用の名前を「由莉」と変えました。でもそのあたりから小さい頃の弱くて感じやすかった「ゆり」もいい名前だなあと思うようになり、今は気分で使い分けています。これは自分にとっての一種の呪(しゅ)ですね。呪いではなく、自分で自分に暗示をかけている感じです。
二人が「表現」についてのエピソードとしてこれらのものを挙げたことはすごく興味深いです。そういえば「教育」というテーマで三人でそれぞれでワークショップをやった時もおもしろかったね!
くじらちゃんは「教育」を語る時、根底に常に怒りがあったなあ〜。
「怒り」って決して悪いものと思っていなくて、私は物事を進める大切な原動力の一つだなと思っています。それがしっかりと今もあるのが感じられた。そしてうららの「教育」の場には、常にどんな人の想いや表現でも否定せずにあるべきだという信念を感じました。
くじらちゃんは、エッセイでもどんなに止められようとも表現に慣れていようともいなくとも、「あらわれてこようとする表現のしぶとさが好きだ」とし、うららは「人が自分が表現していることすら意識せずに気負わずに楽しく表現している瞬間。その無防備な瞬間にこそその人本来の持ち味があらわれる。」そんな瞬間がたまらなく好きなんだ、といってます。
二人の表現はそれぞれが行っていた「教育」の場に似ているね。
これってもっというとそれぞれのファシリテーターの存在感そのものを表しているなと思います。
うららのファシリテーターを何度か経験したことがありますが、そのどれもが遊び心が散りばめられていて、とても軽やかです。深刻にならない、なれない。それは、誰でもできるようでいて実はとても難しいです。うららのこだわりのない器の中で誰もが自由な気持ちで表現できます。
一方くじらちゃんは密度が濃い現場です。とっかかりはとても身近ですぐやれるのですが、自然に自分から湧き出てきたものから現れるその人らしさをちゃんと受け止めてくれます。そこを逃げようとすると容赦無く切れ味が鋭い言葉がやってきます。「ゆりさん、途中で投げないでください」「ゆりさん、途中で濁さないでください」何度言われたか……。真っ当な怒りの炎で相手をじりじりと照らします。さながら火を背負った明王のようです。そういえば、少し似てるかもしれない……。
人のことばっかり言ってないで、私はどうなのか、ファシリテーターがどうであるかは自分の存在についてなので私にはわからないのですが、三人で教育についてあ〜だこ〜だいう時間をオンラインでやっていた時、二人が言った私のファシリテーターの印象にはびっくりでした。
「誰よりも這いつくばって様子を見ながら、確実に前に進めていく」「下の方で境界線に居続ける」あまりのおもしろさに書き留めてボードに貼ってる程です。
自分ではよくわかりませんが、そんなことがこのリレーエッセイの文書にも滲み出ているのかもしれません。
三人が共通していることもあります。それは、互いを尊重するところ。尊重していながら踏み込む時には踏み込みます。けれど、領域を犯さない。目的に向かうことを優先するので、年齢やキャリアなどで変な気を使わないところも私には心地よい部分です。
なんかいつのまにか自画自賛してるなあ
このままではリレーエッセイやりにくいかもしれないので、最後に私からはひとつ課題を出しておきます。
ま、これを実際エッセイで扱うか扱わないかはお任せします。
二人にとって「教育」という言葉をどう捉えていますか?
(ゆり)
【次回更新予定→12/10(担当:くじら)】