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真夜中に、詩たち

友人がブログで、アルチュール・ランボオの『地獄の季節』に触れていた。
俺はランボオを、小林秀雄や中原中也を通じてしか知らない。なので詳しく語る資格がない。

彼は19世紀後半における、吟遊詩人。少なくともそれを目指した人。
つまり異端者アウトサイダーであり、デラシネ(根なし草)である。来年2月、16年ぶりに再演さるる〝Never Say  Good bye〝の彼みたく。
♪俺たちは カマラーダ♪

西洋ではシェリーやバイロン、詩の一節を労働者でも引用する。それだけ共通知識となっている。
日本でも、江戸期から明治くらいまでは西鶴や近松の一節が日常会話で普通に使われていたようだ。だが、そんな国民的共通基盤は失われてしまった。

七重八重 花は咲けども山吹の
実のひとつだに なきぞ悲しき

太田道灌は雨の夜、貧しい農家に立ち寄って蓑を借りようとしたとき、ただ黙って山吹の花を差し出した娘に怒った。が、あとでこの歌が掛詞であるを知らぬ自身を恥じた。
今や日本人全員が恥じることもなく。

目下日本の詩人は〝知る人ぞ知る“以下。60年代から70年代にかけてはそれでも塚本邦雄や岡井隆、寺山修司と並ぶ前衛詩人(歌人)が耳目を集めたものだが。
あとは後年、遊びみたいな俵万智の『サラダ記念日』が流行ったくらい。

今の若い人たちは、音楽を聴くとき歌詞から入るらしい。だから洋楽をあまり聴かないとか。
聴いても聴かなくても別に良いのだが、例えばこんなのはどうか。

How many loved your moments of glad grace
And loved your beauty with love false or true
But one man loved the pilgrim soul in you
And the sorrows of your changing face

たくさんの男が若いおまえを愛した
ときには偽りから ときには真心から
だが年をとっていくおまえの悲しそうな顔を
愛した男はひとりだけだった

◆タイムスリップの名作、コッポラ監督『ペギー・スーの結婚』より

https://youtu.be/aERuI_XV8GQ

これはイェーツの詩。そしてくだんの友人は、女の子と詩を作って遊んでいるそうな。
人間みな、斯くあれかし。

そこから離れたら わからないのさ
2千1トンのハンマー それから落ちてくる
賑やかな通り避けて涙をばら撒く
出来損ないの世界 ひとりでに歩き出す

Hey、もうひとつの顔で
沈めてくれよVelvet Sky

荷物をまとめても 道がないのさ
新しいスローターハウス 屋根を広げてた
夜の来ない国では何も隠せない
片足切り落とされた 未来が
転がってた

もうひとつの顔で 沈めてくれよVelvet Sky

降り止まない雨に打たれよう
降り止まない雨に打たれよう

降り止まない雨に打たれたい

家にたどり着けば 愛はないのさ
できすぎたラプソディー 明日を嫌うだろう
思い出の残骸の中 夜に腰掛けた
目を開けたまま眠れと おまえは
言うだろう

Hey、もうひとつの顔で
沈めてくれよ Velvet Sky...

◆ストリート・スライダーズ ー Velvet Sky

https://youtu.be/q2o9tlLclzY

詩たちならぬ、天使たち。


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