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「水中ニーソ」から「架空のプラモデル」、フリーペーパーまで。サブカルとアートをつなぐ30年とこれから|古賀学 個展「OPEN TO THE PUBLIC」(OVERGROUND)
福岡市博多区にある約600㎡の広大なスペースをもつギャラリーOVERGROUNDで、「水中ニーソ」などの作品で知られる古賀学さんの大規模個展が開催されています。
30年の活動を振り返る回顧展でありつつ、新作展でもある本展覧会。2023年8月12日に開催されたトークイベントの様子も含めてご紹介します。
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▍アート、デザイン、写真、映像、出版… 30年のクリエイター活動を振り返る回顧展
この展覧会でまず驚くのが、そのクリエイティブの多様さ!
HPの言葉を借りると、”つくりたいという欲望をあらゆる手段で実現してきた古賀学の仕事や作品の道のりそのままに、アート、デザイン、写真、映像、出版が混在する展覧会”です。まずはその一部を見てみましょう。
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エディターとしての「OPEN TO THE PUBLIC」
展覧会のはじまりは壁一面を覆う多数のモノクロームの紙面から。1993年4月、専門学校生時代の20歳の古賀さんが作成したフリーペーパー「PEPPER SHOP」です。
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様々なアーティストが影響を受けた「INPUT」と、それを解釈して発信する「OUTPUT」で構成されたフリーペーパーに登場するのは、村上隆さん、佐藤可士和さん、岡崎京子さん、宇治野宗輝さん、八谷和彦さんなどなど…様々なジャンルのクリエイターの30年前のインタビューの数々は、内容にも興味津々です!
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当時はDTPの黎明期。「今でいえばYouTuberのような活動かもしれない」(トークより)だったそう。
今回の展覧会タイトル「OPEN TO THE PUBLIC」とは、このフリーペーパー「PEPPER SHOP」に入れていたキャッチコピー。クリエイティブのブラックボックスを「一般に公開しよう」という意図が込められているそうです。これがすべての活動の原点なんですね。
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デザイナーとしての「OPEN TO THE PUBLIC」
続いて、こうした活動からデザイナーとしての仕事が軌道にのるものの、ご自身がもともと好きだったアニメやプラモデルといった、”本当の好きなこと”のクリエイティブと繋がっていない、と考えたのをきっかけに、活動を広げられたそう。
「機動戦士ガンダム」や「仮面ライダー」をはじめとするアニメや漫画の書籍や雑誌、CDジャケット、玩具のグラフィックデザインなどのデザインも会場に並びます。これらのデザインは、近年のクリエイティブにも繋がっているようにも感じられます。
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90年代に「月刊モデルグラフィックス」誌で連載されていた「架空のプラモデル」の説明書なんていうデザインも。
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一方、2022年には、フィギュアメーカー海洋堂が2022年からはじめたプラモブランド「ARTPLA」のパッケージデザインや説明書線画もデザインされていて、架空と現実を行き来するようですね。
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アーティストとしての「OPEN TO THE PUBLIC」
そして、2000年代からは水中女性ポートレートの映像や写真の活動を開始。菊地成孔さん主宰のビッグバンドDCPRGのMVや、映画「ヘルタースケルター」中の水中撮影などを手掛けられます。こうしたイメージビデオの映像を目にされた方も多いのではないでしょうか。
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わたし自身、十数年前に古賀さんの映像で初めて見た「水の中の女の子」の、水中の光や泡、地上とは重力の異なる髪や服の動きの美しさに衝撃を受け、そこで初めて古賀学さんの作品を知ったひとりです。
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そこから発展し、水中ポートレートと水着とニーハイソックスを組み合わせ、SNSで多くの話題を呼んだ「水中ニーソ」は、2012年から始まり、2016年〜2018年には「月刊水中ニーソ」も刊行されました。
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なお、今回の展覧会では、入場特典として「月刊水中ニーソ」の最新号がいただけます!
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▍多様な活動が一本の軸で繋がって見える展覧会
過去の作品を一堂に見られる回顧展的な展覧会である一方、新作や近年の作品も多数展示されています。
例えば、「ViiVii」は【2077年にリリースされる高機動型のダイビング機材】といった設定で2022年に発表された作品シリーズ。この独創的なダイビング機材、実は古賀さんがメカデザイン、制作された1/6の模型を合成したというもの。
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それから、写真だけ見たら”もうひとつの展覧会場?”と思ってしまうこちらの「PEP GALLERY」。
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実は、1/20のサイズでとても精巧に制作された、ギャラリーの模型なんです!こちらは、コロナ禍で実際の会場の展覧会の中止・中断が続いていた2021年に発表された作品。
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どこまでが現実かわからなくなるような、こうした近年の作品は、水中撮影の作品と、模型制作やデザインの要素が掛け合わされているようですよね。2021年の展覧会でお話させていただいた際、「写真や映像、水中撮影、デザインに模型制作など、これまでにやってきたことが全てつながってできた作品」という旨をおっしゃっていたのが印象に残っています。
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今回の展覧会を見渡すと、アート、デザイン、写真、映像、出版と、そのクリエイティブのジャンルは多岐に亘り、それぞれは一見、全く違った活動にも見えます。その一方、よく見ると、そうした30年間のクリエイティブが繋がっている様子が感じられました。
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▍サブカルチャーとアートを繋ぎ、「OPEN TO THE PUBLIC」する作品群
2023年8月12日には、古賀学さんと、アーティストの八谷和彦さん、アナウンサーで小説家の村山仁志さんによるトークイベントも開催されました。
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その中で挙がったのが「今回の展覧会は”サブカルとアートの境目”」だという話題。
興味深かったのは、古賀さんの作品はサブカルをオシャレなものにしたり、その逆に、オシャレなものをサブカル風にしたりと、その表現が、サブカルチャーとハイカルチャー(アートやオシャレなもの) の境界を行ったり来たりするような作品だというお話。
例えば、ジャパニメーションブームだった1995年頃、当時、アートよりも下に観られがちだったアニメを、アクションフィギュアやガンダム占いなど、デザインでオシャレなモノの方向に融合させていったり。
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逆に、「水中ニーソ」は、「水中ポートレート」が、もともと世界的にあった”オシャレな”表現だったものに、水着+ニーハイソックスといった要素を入れることで、サブカルの方向に持っていったようなもの。
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今回の展覧会タイトルは「OPEN TO THE PUBLIC」=「一般に公開しよう」という意味でだそうですが、サブカルチャーとハイカルチャー、どちらの方面からも「OPEN TO THE PUBLIC」の精神で ”一般に手に取りやすい”ものへとアプローチすることで、今までに観たことのない表現が生み出されているのかもしれません。
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そんなアプローチについて、トークの中に出てきた中で印象的だったのは「ミーハー」という言葉。本来「ミーハー」と「オタク」は相反するような性質のものですが、メインエンジンは「オタク」の部分でありつつ、ある種「ミーハー」な部分もあるために、「『オタクの最前線』かつ『一般的な人も手に取りやすいもの』」が誕生したというのが印象的でした。
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30年の多岐に亘る活動から一貫した「OPEN TO THE PUBLIC」のクリエイションを体感できる展覧会です。
古賀学個展「OPEN TO THE PUBLIC」は、福岡市博多区にあるOVERGOROUNDで、2023年8月28日(月)まで開催されています。なお、27日(日)の15時と17時からは作家解説ツアー、18時からはクロージングパーティも開催されるそうです。
【展覧会情報】古賀学個展「OPEN TO THE PUBLIC」
会期:2023年8月4日(金) - 8月28日(月)
会場:OVERGROUND(〒812-0017 福岡県福岡市博多区美野島1丁目17−5 寿ビル 2F)
時間:13:00-19:00 (火水休廊)
入場料:1000円 (水中ニーソの新作撮り下ろしを中心にしたA5サイズ/32ページの特典ブックレット「別冊月刊水中ニーソ」付き)
つくりたいという欲望をあらゆる手段で実現してきた古賀学の仕事や作品の道のりそのままに、アート、デザイン、写真、映像、出版が混在する展覧会です。
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