「AI」の進化は誰のため? 人間が「ただの労働力」に堕ちる前に考えるべきこと
ChatGPTの登場で、盛り上がっているAI活用。日本では、というか僕の身の回りでは拍子抜けするほど、ChatGPTを歓迎する人が多い。AIでの画像生成に夢中になっている人も多い。
でも、僕が思うのは「なんでみんな、AIを警戒しないのだろう?」ということ。
考えるべき項目は数々あるのですが、先ずは「仕事」について懸念があります。あちこちで話題になっていますが、AIによってどんな仕事が淘汰されるのか? これについては、“AI なくなる仕事” で検索するといろんな記事が出てきます。
そして2023年5月2日には ↓ こんなニュースが届きました。
すごいですよね。2万6000人の雇用の3割がAIに置き換わっちゃう可能性がある。
日本の中小企業でAIの本格活用が始まるのは、まだまだ相当先だろうけど、もし普及したら事務職の雇用は壊滅的な状況になるかもしれません。
しかし、AIの活用が進んでも、無くならない仕事もあります。
その代表例が、機械的に単純作業を繰り返す肉体労働=「単純作業」です。
↑こう言うとね「バカじゃねぇの? そういう安くて過酷な労働をなくすことに、AIが活かされるんだぜ? 知らねぇの?」って思われる方も少なくないと思います。
でもね。技術革新によって単純作業が無くなったことはないんです。作業の質は変わりますが、人間並みに器用に動けるロボットが一体100〜300万で量産されるようにならない限り、単純作業は無くなりません。
その好例が、次に紹介するAmazonの「フルフィルメントセンター(FC)」です。
第二次産業革命の昔から、変わっていない厳しい現実
Amazonといえば、泣く子も黙る超巨大ECモール。
僕もよく利用していますが、品数が多くて、Amazon Primeに加入していれば配送料もかからない。何より、発送が早い!
発送が早いと言うことは、倉庫での商品仕分けから梱包、発送作業もほぼ24時間の体制でフル稼働しているということになります。
だから現場は、時間がない。忙しい。止められない。倉庫内の作業を効率化すると共に、多少のトラブルがあっても倉庫全体の作業が止まらない継続性を確保することが重要になってきます。
そこで登場したのが「Amazon Robotics(AR)」。
↓ こちらの記事に詳しく紹介されています。
Amazonのスタッフが見学用のデモンストレーションを行っているので、一見するとのんびりとした職場に見えます。
記事に埋め込まれた動画の1つ、同一フロア内の「荷合わせ」を行なうP2Rステーションの作業の様子 -Impress Watchを見ると、2回目にピックアップした3個口の商品を棚に納めて緑のランプを消すまでの時間が約14秒。
のんびりしているように見えて、それほど遅くはありません。
14秒に1回、商品をピックアップし続けると1分間に4.28個。
10分で42.8個。
? 思ったより少ないか。
それでも動画の右側、黒い金網の向こうに、黄色い棚(ポッド)が列を作って待機している。延々と、休むことなく14秒に1個ピックアップし続けるというのは、結構辛い作業だと思います。
でもね、14秒ってほとんどTVCM1本分の時間だからね。すごいゆっくり。
実際の倉庫ではもっと速い動作が求められていると想像します。だって、Amazonの発注数に応える作業スピードが、あんなにゆっくりだとは思えないんだもの。だとすれば、求められる作業はさらに過酷。
試しに「アマゾン P2R 目標」でググってみたら、作業の辛さをつぶやき合う掲示板 ↓ を見つけました。
めまいや頭痛が起きやすいというのは、黄色い棚と背後のスチールラックの間をクルクルクルクル動き回ることで「回転性めまい」になったり、肩こり・頸のこりやストレスが原因となる「緊張型頭痛」になってしまったことが考えられます。
いずれにしても、昔から「単純作業」って呼ばれる労働が、楽勝だったことはないんです。作業内容が単純な分、肉体的には辛いのが当たり前。
単純作業っていうのは、要するにバカでもできる仕事だというレッテルだから、賃金も安い。
そして、作業量の多さが、評価の全て。
西村賢太氏が芥川賞を受賞した『苦役列車』には次の1節があります。
最近の人材募集広告を眺めていると「誰にでもできる単純作業」という記述を多く見かけるようになりましたが、その内実は貫多が経験した港湾労働のような、過酷な肉体労働でしょう。
尚且つ、この単純作業の悪いところは、職業を通じての成長が見込めないというところにあります。評価につながらない。昇給につながらない。
例えば、同じように過酷な肉体労働である土工事やとび、外壁、内装、電気工事 等々といった職人さんたちは、その技術の進歩に応じて評価されます。
ある時、せんべろで有名なアーケードで、もつ焼き屋の開店を待つ行列に並んでいたら、そのアーケードの補修を請け負ったことがあるという職人さんがいて、
「お金ないから何とかしてくれって〇〇さんに言われて、じゃぁいいよってんで、あそこも俺が補修したんだけど……ダメだねぇ。今見ると全然ダメだねぇ。今ならもっと綺麗にやってやれんだけどねぇ」
何てことを話しているのが耳に入りました。
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今まで書く機会がなかった、いい話、すごい話、ダメな話から、仕事のアレコレを書かせていただきます。
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