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『ルックバック』ネタバレあり感想

統合失調症当事者による、ただの感想です。
内容のネタバレを含みますので未読の方はご承知おきくださいね。

『ルックバック』感想


2021年7月24日読了。
朝食を食べながら「そういや話題になっていたし、気になってたからいい加減読むか」とページを開きました。(そういう気軽な気持ちでないと読むタイミングを逃してしまうのです)
その時点で本作に関してわたしが得ていた情報は、『チェンソーマン』(未読)の作者であること、なにか精神疾患に関係する内容らしい、ということだけでした。

こちらのツイートは読了直後のわたしの備忘録的な感想。


Twitterなのでネタバレは人目につくため内容には触れませんでした。なので、もうちょっと内容に触れた感想を書きたいと思ってnoteの記事にしました。
内容については読んだ方にとっては言うまでもないことですが、自分の言葉で書きたいのでつらつら書きますね。


↓以下、初見時の素直な感想です。

⚫︎小学生の頃、絵を描いて「将来漫画家?」なんて話をしていたのを思い出しました。中学に上がると途端に「絵を描いている」=「オタク」と認識されるという描写も覚えがあります。藤野さんの自意識過剰については、普遍的なものという感じでした。

⚫︎主人公の彼女たちふたりの出会い、京本さんが「藤野先生!!」というのはびっくりした。敵対するかと思いきや、なるほどそうきたかー。漫画をたくさん読んでる人や勘のいい人ならそんなに驚かないのかな。

⚫︎諦めかけた夢を再び目指す。いいことじゃん、と思いました。

⚫︎ ふたりの情緒的な交流の深まり、きらめく青春、漫画家デビュー、このあたりの描写はさらりと読みました。この時点では、『バクマン』ぽい感じになるのかな? という印象。

⚫︎そして京本さんとの離別。事件発生。あ、このことか。と思いました。精神疾患、とりわけ統合失調症という病気・統合失調症患者に対する差別を助長するのではないか、と言われている点。この時点で、自分はそういった考察もまだ読んでいなかったですが、「この男性、もしかして統合失調症……(偏見・差別に繋がるのでは……)」と思いつつ、とりあえず最後まで読もう、と読み進めます。

⚫︎時間の逆行? いや、もし京本さんが「出てこないで!!」という〈2016年の藤野さん〉のメッセージを受け取って不登校のままでいたら、というIF(もしもこうだったら良かったのに)か。「幽霊だ……」小学生の京本さんにとってはそうなるな。SFっぽい。

⚫︎「出てこないで!!」の意味合いが、同じ言葉であるにもかかわらず前半と後半で真逆の意味になる。巧い構成だと思いました。

⚫︎「幽霊」のメッセージに従ったまま時は過ぎ、京本さんと藤野さんは「理想的な」形で再会する。再会できたなら。(「藤野」という名字だけで「あの藤野先生」と気付くのはやはりこれがIFだからだと思わせる)
そして京本さんの描いた4コマ「背中を見て」……おそらく多くの人が胸を打たれた、「衝撃を受けた」というのは、京本さんの死自体ではなくこのあたりの表現なのでは。

⚫︎わたしも、このあたりの魅せ方におお、と思いました。時を隔てる「扉(ドア)」。象徴的です。時(ドア)の下をすり抜ける紙片。「扉(ドア)」は、同時にふたりの心の隔たり・他者性の象徴でもある。「扉(ドア)」の下をすり抜け、伝わったふたりの本心。これが本作の表現で一番すごいところだと感じました。


以上が、初見時の大まかな感想です。
その後、いろいろな方の感想や考察を拝見しました。
こちらの記事など。


いろいろなご意見を拝見した結果としての自分の思いも、やはり初見時と変わりません。
本作は、精神疾患、とりわけ妄想幻聴が代表的な症状として知られる統合失調症への、世間一般(本作の読者)の認識を歪める、無意識に差別的・忌避的な感情を抱かせるおそれがある。

わたし自身当事者として、「ああいう凶行に及ぶかもしれない存在(病気)でしょ? やだ、怖い」と思われる可能性があるのは、もちろん、不本意です。

なので、読了直後も、絶賛する方・批判する方、さまざまな意見を拝見した現在も、本作に対する自分の思いは「微妙」です。

自分がもし、統合失調症ではなかったら。妄想や幻聴、関係妄想を体験せず、知らずにいたなら、どんなふうに思っただろう。絶賛して、感動して、その心の隅に、「こういう妄想とか持ってる人って怖い」と思うのだろうか。
そう、思ってしまう可能性がある。

人間には、個々にさまざまな認知的バイアスがかかっているから、わたしも、他の病気や他人の事情をよく知らず、差別的な感情を抱いている可能性があると思います。
それに、できるだけ気付きたい。
無知や無関心ではいたくない。
そう思わされました。
本作は、そういった意味で、わたしにとっては読んでおくべきだった、読んでおいてよかった作品です。

また追記するかもしれませんが以上です。
画像お借りしました(画像説明文の「世の中のことはすべて自分事」に共感しました)。ありがとうございます。

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