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『悪なき殺人』を観た 2021年12月22日(水)

フランス映画『悪なき殺人』を観てきた。
視点が次々と変わることで、あの出来事の裏側はこういうことがあったのね、とわかる演出になっている。
内田けんじ監督の『運命じゃない人』を思い出した。

吹雪の夜、フランスの山間の町で女性が失踪し、殺害された。事件の犯人として疑われた農夫のジョセフ、彼と不倫関係にあったアリス、そして彼女の夫ミシェルなど、それぞれに秘密を抱えた5人の男女の関係が、失踪事件を軸にひも解かれていく。そして彼らが、フランスとアフリカのコートジボワールをつなぐ壮大なミステリーに絡んでいた事実が明らかになっていく。


この映画のキャッチコピーである、「人間は『偶然』には勝てないー」がこの映画を雄弁に語っている。

いわゆる《伏線》が見事に回収され観客にとって腑に落ちる感覚を味わえるのだが、下手をすると辻褄合わせと捉えられそうなところを丁寧に一人ひとりの人間像を描いていくことでうまく回避している。
伊坂幸太郎の小説のようなイメージだろうか。

登場人物はそれぞれ「秘密」を抱えており、大なり小なり現実との折り合いをその「秘密」によって埋め合わせている。
そのあたり、匂い立つような人間味がそれぞれのキャラクターから醸成されているために、伏線回収だけでない余韻を残している部分である。
滑稽であるが本質的な人間の業が描かれている。

後半コートジボワールの貧困層の犯罪など絡み、ストーリーがどこに着地するのわからないままラストまで進んでいく。
はっきりしないラストは賛否がありそうだが、自分としてはアリかなと思った。

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