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とにかくヘンで素晴らしいSF映画[4選]

こんばんは ぷらねったです
『この映画は何かがおかしい』...観ていてそんな感想をもってしまう 異質な映画たち
今回は「とにかくヘンな名作・傑作・カルトSF映画」というテーマで 一風変わった内容のSF映画を4つ厳選して オマケの1つと共に紹介させていただきます


1.パリの確率 (1999年)

原題:PEUT-ETRE

監督は セドリック・クラピッシュ
脱力感あふれる フランスのシュールなSFコメディ映画です

舞台は2000年の12月31日 20世紀最後となる大晦日の夜
アーサーはガールフレンドのルーシーと共に 全員がSF的なファッションに身を包んだパーティに出かけました
パーティの最中 アーサーはルーシーから『子どもが欲しい』と迫られ なんとかそれをはぐらかし トイレまで逃げ込みます
しかし用を足していると 突然上から大量の砂が降ってきて 天井に大きな穴が空いていることに気づきました
アーサーが天井の穴から這い出してみると それは砂だらけの奇妙な部屋に繋がっており 出口の先には砂漠化した未来世界が広がっていた...というストーリーです

製作費は 概算15億円
「猫が行方不明」で知られる フランスのセドリック・クラピッシュが監督をつとめ「カメラを止めるな!」のフランス版リメイクである「キャメラを止めるな!」のロマン・デュリスが主演しています

本作品の主人公はSF好きの設定になっているため 冒頭から実在しないSFドラマがテレビで流されるという ちょっと洒落た始まり方になっています
作中では まるで「千と千尋の神隠し」のような『穴を抜け出てみたら そこは別世界だった』...というような導入で 物語が展開されていきます
主人公のアーサーがたどり着くのは砂漠化した奇妙な未来都市です
そこでは馬やラクダが人々を運んでいるだけでなく 太陽光パネルで走る車なども存在し 原始的な技術と発達した技術が混在している不思議な世界です
そして主人公が出会うことになる"とある人々"とのやり取りが 本作品のメインテーマになっています

終始ほんわかした雰囲気のコメディではありますが 脚本は意外にしっかりしており かなり楽しめます
砂漠,SF,コメディが合わさった脱力的な雰囲気は以前どこかで...と思ったのですが「不思議惑星キン・ザ・ザ」に似たものを感じたのでした
そんな砂漠のシーンはチュニジアで撮影されたそうで なかなか珍しいと感じます

また フランス映画と言えばやはり美術面に注目してしまいますが この映画も小道具, セットデザイン,音楽まで 奇妙なセンスが爆発しています
そしてなんといってもオープニングなどで使われている曲が秀逸で サンプリングした声など 様々な音を組み合わせた不思議な楽曲になっています

そんな本作品は 下らないように思える会話が多数登場しますが よく聞くとそれらは切実で 哲学的に響いてくるところがあります
フランスで生まれた皮肉たっぷりの傑作SFコメディ映画を ぜひ観てみてください


2.神風 (1986年)

原題:KAMIKAZE

監督は ディディエ・グルッセ
ブラックユーモアあふれる フランスのSFスリラー映画です

ある日 企業に勤めているアルベールは 事業縮小を理由に突然解雇されてしまいます
暇でやる事がなくなった彼は 毎日テレビ漬けの日々を送るうちに精神に異常をきたしはじめ テレビの出演者に対して激しい怒りを示すようになりました
科学者としては天才的だったアルベールは テレビの受信アンテナなどを改造し そこに機関銃のような機器を接続して奇妙な武器を開発
この武器は生放送中のテレビに映った出演者を射殺できるだけでなく 対象に弾痕は残っても弾そのものが存在しないという 完全犯罪を実現する危険な武器でした
担当となったロマン刑事はテレビ出演者の相次ぐ被害の謎に挑むべく このおかしな事件の捜査を開始する...というストーリーです

一風変わったタイトルの本作品は『フィフス・エレメント』でお馴染みのリュック・ベッソンが脚本・製作をつとめ 彼が監督した「最後の戦い」などで助監督をつとめた ディディエ・グルッセが初の長編映画監督をつとめた作品です

作中では 勤めていた企業に解雇された科学者の男が怒りに震え 自らの知識や技術を活かし 復讐を目的としたハイテク機器を開発するという 奇妙な物語が描かれます
彼が開発するのは テレビ越しに生放送に出演している人々を射殺するための とんでもない武器です
コメディ的な突拍子もない設定でありながら あくまで主人公の怒りは切実な理由に基づいていて 基本的にシリアスな演出となっており そのギャップがおもしろい映画です
テレビ画面を通して現実が変容するというテーマは 内容こそ違えど デヴィッド・クローネンバーグ監督の『ヴィデオドローム』にも通じる部分があると言えるかもしれません

大きな見どころとしては 主演のミシェル・ガラブリュによる陶酔したような怪演が炸裂しており ひとり芝居のシーンが多い中で 素晴らしい哀愁と狂気を醸しだしています


また 犯人が発明した機械のデザインや"銃弾"を打つ方法 そしてセットデザインなどもユニークで 警察との駆け引きもシュールで楽しめます
リュック・ベッソン監督の「最後の戦い」でも素晴らしかったエリック・セラの音楽ですが 今作でも秀逸で 前衛的でありながらもポップという 絶妙なバランスで楽曲を成立させています

そんなこの映画ですが 実は日本版DVDも出ていて 現在U-NEXTでも観れますので チェックしてみてください
また 1982年にはこの映画と似たようなタイトルで『未来世紀カミカゼ』という作品もあるので ご注意ください

奇妙な設定ながら あくまで刑事が犯人をまじめに追いかける内容になっている 本作品
普通の映画に飽きた方にはぜひおすすめしたい 個性あふれるフランスの傑作SF映画となっています


3.デスパウダー (1986年)

監督は 泉谷しげる
とあるレプリカントをめぐる 日本のSFホラー映画です

舞台は近未来
下っ端のチンピラであるキヨシと自称バウンティーハンターのノリスは レプリカントから採取できる『デスパウダー』を売りさばくことを目的として 売れない画家であるハリマの家へ向かいます
そこにはゲルニカという名前のレプリカントが匿われており 死の間際にいました
ハリマの家に到着後 ゲルニカから放出された『デスパウダー』を吸ってしまったキヨシの精神と肉体には おそろしい変化が起き始める...というストーリーです

本作品は 泉谷しげるが監督,脚本 そしてハリマという登場人物の役をつとめた 劇場未公開作品です
製作費は明かされていませんが 相当な低予算が推測されます
あえて作品名を出すと 泉谷しげるも出演した『爆裂都市 BURST CITY』に通じるパンクな空気感があり 3年後に公開される『鉄男』を感じさせる内容です
登場人物としてレプリカントが出てくるだけあって 構想にあたっては『ブレードランナー』の影響もあったのかもしれないと 泉谷しげる本人が回想しています
もちろん内容は全然違いますが...

そんなこの映画は全体的に様子がおかしいのですが 特におかしいのは字幕の使い方です
例えばセリフとは違う内容で表示される字幕や 徐々にズームアップされる字幕...さらに 謎の言語を話す人々の言葉が字幕で訳されて画面上に表示されたり しまいには字幕だけで会話シーンを成立させたりもします
こんなにおかしな字幕の使い方をしている映画は 個人的に初めてでした
不明瞭な音声のセリフや 不規則に表示される字幕...そして突然登場し 野外でエレキギターをかき鳴らす清志郎...どうやったらこんなバランスの映画ができるのか とても興味があります

また アンダーグラウンド感が爆発している映画ながら 俳優陣が謎の豪華さとなっているところに注目です
例えば佐藤浩市が演じるキヨシ そしてRIKACOこと村上里佳子が演じるノリス...そして 歌って踊れるルー博士の役を演じるのは忌野清志郎です
さらに ルー博士がつくった人造人間ゲルニカを夏木マリが演じ そのゲルニカと恋に落ちる画家のハリマを 監督の泉谷しげる自身が演じています

大友克洋の『AKIRA』や塚本晋也の『鉄男』よりも前の時代に映像化された 日本のサイバーパンクと称する声もある本作品ですが"デスパウダー"を浴びた佐藤浩市の顔がグニャグニャに動くシーンには驚きます
このシーンでは デヴィッド・クローネンバーグ監督の傑作『スキャナーズ』や『ヴィデオドローム』などにも近い 人体が変異していく過程が描かれています
また 夏木マリが演じる人造人間のゲルニカは強い存在感があり かなりのハマリ役となっています
このゲルニカは『4年の命をもち 滅ぶときに生命を人間の身体に移し替えることができる』という設定になっており 泉谷しげるとはまさかのキスシーンもあります

泉谷しげるが本作品の着想にいたった理由としては“人はみんな元々発狂していて それを常識や理性でコントロールして生きている”ということをどこかの雑誌で読んだことがきっかけだったそうです
そのため作品のテーマは「人の潜在意識にある恐怖や その真影」だったそうです
撮影は徹夜続きで しかも基本的に自宅を使っておこなわれたため 泉谷しげるが家族に嫌われる原因になったそうです
撮影に際しては自宅の地下室を爆破したとも言われており その破天荒ぶりが伺えます

そんな本作品は個人的に 今まで観た映画の中でもトップクラスにおかしな映画です
とても奇妙な映画ですが クローネンバーグ監督や塚本晋也監督の作品が好きな方であれば かなり楽しめると思います
泉谷しげるにとっては思い入れのある作品のようで 2011年には わざわざ再編集を施した上 映画祭での上映もされたといいます
残念ながら忌野清志郎の死去もあり この作品を金儲けの道具にしたくないという泉谷しげるの心情もあって DVD発売は難しい状況とのことですが...ぜひ発売してほしいものです
とにかくあまりにもパンチの効いた素晴らしい怪作となっているので 機会があればぜひ観てみてください

4.ターミナス (1987年)

原題:TERMINUS

監督は ピエール=ウィリアム・グレン
近未来を舞台にした フランス・ドイツ合作のSFカーアクション映画です

舞台は2037年
この世界では トラックドライバーによって行われる 国際的なスポーツが確立されていました
彼らは障害物や 敵となる他の参加者に立ち向かいながら国を横断し 指定されたゴール地点に到着することを目指します
今回のレースで先頭を走るトラックは"モンスター"と呼ばれるAIの搭載された装甲車両であり このAIは天才少年のマティによって設計されたものです
運転するのはガスというドライバーであり 彼女はモンスターのアドバイスを時に無視しながら 荒野,市街地を突き進んでいく...というストーリーです

本作品は 70本以上の映画に関わってきたとされ『バトルランナー2030』では撮影監督をつとめた フランスのピエール・ウィリアム・グレン監督によって映画化されました
フランスの国民的人気ロック歌手と言われた ジョニー・アリディが主演し 『スターマン』のカレン・アレンも重要な役で 序盤だけ出演しています
また デイヴィッドリンチ監督の『デューン/砂の惑星』でレト・アトレイデスを演じたユルゲン・プロホノフが まったく雰囲気の違う3役を一人で演じているのは 大きな注目ポイントです

『終点』を意味する『Terminus』というタイトルの付けられたこの映画では ポストアポカリプス風な荒野を舞台にして AI搭載の装甲トラックに乗って行われる謎のカーレースをテーマにした 奇妙な物語が描かれます
"ポストアポカリプス風"という表現は どうやらこの映画の世界はポストアポカリプスではなく 文明はまずまず現存していることが伺えることによるものです
一部は『マッドマックス2』からの影響を感じる世界観になっていて ガラの悪いチンピラ集団も登場します

この映画におけるカーレースにおいては トラックが走るのは荒野だけでなく 時にはとても狭い市街地や 公園のような場所も走ります
また トラックに搭載されたお喋りなAIの"モンスター"は 有益な情報から無益な情報まで 運転手へ向けてとにかく喋り続けます
謎多きカーレースと並行して なぜこんな競技が行われているのかなど 別のストーリーが徐々に展開されていくのです

そんな物語はテーマが捉えづらく 細かいセリフに重要な説明が潜んでいたりしてかなり分かりづらく おそらくほとんどの人が混乱させられると思います
主人公が途中で変わったりしながら ある意味驚きのラストへ向けて進んでいくのです

基本的にはゆるやかなテンポでストーリーが進行していきますが 突如とんでもない迫力の爆破シーンや車の破壊シーンが出てきたりして その独特のバランス感に驚かされます

また 撮影監督もつとめたことのある人物が監督ということもあるのか 映像・美術面でのこだわりを感じるシーンが多く見られます
例えばカーナビの画面には立体的な口が表示されており AIの音声に合わせて口が動くようになっています
この辺りの生々しいデザインは デヴィッド・クローネンバーグ監督のヴィデオドロームを彷彿させる雰囲気になっています
メインで描かれる装甲トラックのデザインはかっこいいとは言えませんが なかなか独特です
あまりにも物語が分かりづらすぎるので こういった美術面を含めた世界観を楽しむのがおすすめです
ちなみに詳細は確認できませんでしたが この映画には115分のフルバージョンと 83分ほどの短縮バージョンが存在しているようです

どこか掴みどころの難しい 奇妙な物語になっている 本作品
フランス・ドイツ合作の ヘンなSF映画となっています

番外編.リトルトウキョー殺人課 (1991年)

原題: Showdown in Little Tokyo

監督は マーク・L・レスター
日本を勘違いしたような内容が描かれる アメリカのクライムアクション映画です
SFではないですが どこかディストピアSF感のある映画なので 紹介させていただきます

舞台は ジャパニーズ・ヤクザに支配され 凶悪な犯罪都市に変貌したロサンゼルスの街 リトルトウキョー
日本で生まれ 現在はロサンゼルス市警の警官であるクリス・ケナーは 新たな相棒である日系アメリカ人のジョニー・ムラタと共に ヤクザ顔負けの強引な捜査によって組織壊滅を狙います
ケナーはアメリカ文化を評価しておらず ジョニーは日本文化があまり好きではありませんでしたが 彼らは格闘技の達人という共通点を持っていました
捜査は進展し ついに組長ヨシダと対峙の時を迎えたケナーは 両親を惨殺した男と同じ刺青をヨシダの体に見つけ 正義感を超えた怒りを燃え上がらせる...というストーリーです

製作費は 意外にも高額な800万ドル
「クラス・オブ・1999」や「炎の少女チャーリー」などで知られる マーク・L・レスターが監督をつとめました
『JM』や『ユニバーサル・ソルジャー』で知られるドルフ・ラングレンがクリス・ケナーを演じ『ファイアー・ドラゴン』のブランドン・リーがジョニー・ムラタを演じています

本作品は 2人の警官を主人公にした いわゆる"バディーもの"のストーリーになっており その中ではとにかく誤った日本観が描かれつづけ アメリカの日本人街リトルトウキョーを舞台に カタコトの日本語による『タナカ』,『ヨシダ』,『盆栽クラブ』など 香ばしいワードが並びます
日本観がどれぐらい誤っているかというと 街に存在する"盆栽クラブ"というクラブでは 顔を白塗りした裸の女性同士が相撲を取っていたり スーツを着たサラリーマンが女体盛りされた寿司を食べていたりします
また 当然『切腹』というワードも登場し 知っている日本語はとりあえず登場させよう という監督の気概を感じることができます

時には それまで英語で会話していたはずの外国人俳優が なぜか突然少し難しい日本語を話し始めたりして ツッコミどころの多いシュールな内容はとても魅力的です
大きな声ではおすすめできませんが 個人的にはとても笑える内容だったので オマケとしての紹介でした
全力でふざけた迷作になっているので 気になる方はぜひ観てみてください


あとがき

今回は「とにかくヘンな名作・傑作・カルトSF映画」というテーマでの SF映画紹介でした
決して意図した訳ではないのですが 番外編も含めると 5つの作品の内3つがフランス映画でした
ヘンな映画というだけあって戸惑いを覚える瞬間もあるような作品ばかりで 万人ウケしないのは間違いありません
とはいえ普通のSF映画に飽きてしまった方にはぜひ観ていただきたい 個性溢れる作品ばかりになっていますので 気になる方はチェックしてみてください
最後までご覧いただき ありがとうございました

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ぷらねった【SF映画チャンネル】
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