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Amazon Prime Videoで観れる!おすすめ名作・傑作・カルトSF映画|⑥

こんばんは ぷらねったです
見ごたえのある内容にも関わらず ほとんど知られていない 埋もれてしまっているSF映画たち
今回は「Amazon Prime Videoで観れる!ほとんど知られていない おすすめの隠れた名作・傑作SF映画」というテーマで さまざまなSF映画を紹介していきます


1.アーカイヴ (2020年)

監督は ギャヴィン・ロザリー
人間の意識を保存できる装置をテーマにした イギリスのSF映画です

舞台は2038年
研究者のジョージ・アルモアはある会社と契約を結んでおり 山梨県の山中にあるラボで 人間と同じ能力を有する人工知能の開発に没頭していました
そんなジョージの一番の目的は 優れた人工知能を開発することではなく 自動車事故で亡くなってしまった妻のジュールスを復元し 別の形で取り戻すことです
彼女の意識はアーカイヴ社が開発した装置の中にデータとして保存されており 200時間という制限内であれば 彼女と会話することも可能になっていました
やがてジョージは その装置を研究に無断転用してジュールスの復活に成功しますが その再会は思い描いていたようなものではなかった...というストーリーです


本作品は「ミッション: 8ミニッツ」で知られるダンカン・ジョーンズ監督が かつてゲーム業界で働いていた頃の元同僚であり「月に囚われた男」でも月面基地のモデル構築などに携わった ギャヴィン・ロザリーが監督した映画です
「ダイバージェント」のテオ・ジェームズが主演し「ハイ・ライズ」のステイシー・マーティンが 亡き妻を演じています


作中では『亡くなった人物の意識を一定時間保存できる』という機能をもった アーカイヴ社が開発した装置をテーマに 物語が描かれます
舞台となる研究所内には 試作において完成したバージョン違いのロボットが3台おり それぞれ性能が異なっている設定です
これらは例えば嫉妬したりするなど 人間のような感情をもちます
主人公のジョージは研究者として3年間の契約期間中で 山梨県でロボットの試作研究をたった1人でおこなっている人物です
そこで 妻の意識を保存した装置の技術を許可なしで転用し 亡くなった妻を復活させようとしている...そんな状況になっています
この辺りは人工知能というテーマや舞台設定含め 2015年の傑作「エクス・マキナ」に通じるところが多くあります

海外のSF映画としては不思議に感じるのですが なぜか山梨県が舞台であるため 日本語が出てくるシーンも多いです
おそらく低予算ではありますが 研究所のセットはしっかり作られており 嫌な低予算感はありません
それぞれのロボットもよく出来ていて SF映画らしい雰囲気がしっかりと漂っています

そんな本作品はコロナウイルスの影響でプレミア上映が中止となり アメリカでは限定的に劇場公開されるのみになった映画であり あまり知られる機会が得られなかったようです
たとえ知名度は低くても 見ごたえのあるおもしろい内容になっている 本作品
ひねりの効いたラストが激しい賛否両論を巻き起こしているようですが 見ごたえのある内容になっているので ぜひ観てみてください

2.静かなる侵蝕 (2021年)

監督は マイケル・ピアース
Amazonオリジナル作品であり エイリアンの侵略をテーマにしながら一風変わった内容の描かれる アメリカ・イギリス合作のSFスリラー映画です

元海兵隊員のマリク・カーンは 別れた妻のピヤが養育していた2人の息子であるジェイとボビーの前に 突然姿を現します
マリクは夜遅くにも関わらず2人を旅行へと連れだしますが その道中 警察官の尋問を受け 抵抗の末に逃げ出すことになります
尋問の様子を見た息子たちが怯え切ってしまったため マリクはやむを得ず 彼らにとある事実を告げることにします
それは『現在 地球は人体に寄生して増殖するエイリアンの襲撃を受けており 人類は存亡の危機にあること』そして『子どもたちの母親であるピヤは既にエイリアンに寄生されていること』だった...というストーリーです

本作品はAmazon Studio製作の映画であり プライムビデオでの配信前には アメリカの映画祭などにおいて限定的な公開もされた映画です
主演のリズ・アーメッドはラッパーとしての経歴もあり 2019年の傑作「サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~」において アカデミー主演男優賞にもノミネートされた人物です

作中では 人間の体内に寄生して人を操るエイリアンにまつわる物語が描かれます
突然現れた父に車に乗せられ 旅行へ連れ出される子どもたち
その父は子どもたちに対し 地球がエイリアン襲撃の危機にあり 子どもたちの母親もすでに寄生されていることを告げ『エイリアンに寄生されないためには虫よけスプレーを使え』と言ったりします
そして詳細は明かせませんが 中盤から思わぬ方向に展開されていく物語は 単なるエイリアン映画ではなく スリラー映画的な予想外のおもしろさを放っていきます
そこに父と息子2人の家族としての関わりや 子どもたちの成長物語的な要素もあって 多角的なおもしろさがある内容です


エイリアンが物語の軸ですが いわゆるモンスターパニック的な作品を期待すると痛い目に遭ってしまいますので ご注意ください

それにしても 先日紹介させていただいた「ブリス ~たどり着く世界~」をはじめ Amazonオリジナル作品は しっかりしたクオリティーで尖った内容のSF映画がいくつか作られているので 今後も継続してほしいと思っています
この映画も好き嫌いの分かれる内容だとは思いますが 個人的にはとても好きです
素朴な雰囲気でありながら 終盤までドキドキさせてくれる 本作品
現実と幻が混同していくような 傑作SFスリラー映画となっています

3.シグナル (2014年)

監督は ウィリアム・ユーバンク
同監督の「地球、最後の男」の編集中に構想が開始されたという SFスリラー映画です

マサチューセッツ工科大学に通うニックは 大学のパソコンにハッキングを仕掛けてきたハッカーの居場所を突き止めるため 友人のジョナスやガールフレンドのヘイリーとともにネバダを訪れます
しかし そこで何者かに拉致されてしまい 気が付くと政府の隔離施設に監禁されていました
職員の説明によれば"何か"に接触して感染したため隔離する必要があるといいます
そんな時 どうにかして施設を出ようと試みたニックの身に 思いがけない力が発動する...というストーリーです


製作費は 400万ドル
「地球、最後の男」のウィリアム・ユーバンクが監督をつとめ 彼にとっては2つ目の監督作品となった映画です
脚本にクレジットされたカーライル・ユーバンクは 彼の兄弟です


本作品はデイヴィッド・リンチやスタンリー・キューブリックなどに影響を受けつつ「トワイライト・ゾーン」のドラマのように どこか捉えどころのはっきりしない 奇妙な物語を目指して制作されたと言います
これが影響したのか 観る側へ正解を提示するような内容ではなく 意味深なシーンばかりが映しだされます
そのため 作品に対してはっきりとした答えを求める方には あまり向かない映画かもしれません
物語は 大学生の青春を描いたロードムービーのように始まりますが そこから急展開をみせ 舞台は正体不明の研究所へ...そこにはなぜか防護服に身を包んだ人々がいて 自分は一体何者なのかを探るような物語になっています

舞台設定が2014年なのにも関わらず カセットレコーダーや固定電話といった前時代の小道具も織り交ぜられています
これにはユーバンク監督による意図があったそうで 映画の中に誤解を与える要素を入れることで 物語に対する視聴者へのミスリードを狙ったのだといいます
登場人物が少なく ミニマルでスタイリッシュな世界観は 同じく低予算で製作された「月に囚われた男」なども連想させます
また 緊張感のある音楽も魅力的で 注目ポイントのひとつになっています
これは 日本の漫画を実写化した2015年の映画「アイアムアヒーロー」でも音楽を担当した ニマ・ファクララによるものです
どういった経緯かはわかりませんが 彼は2013年の「ガッチャマン」や 人気ゲーム「バイオハザード リベレーションズ2」でも音楽にクレジットされています

「マトリックス」のモーフィアス役でお馴染みの ローレンス・フィッシュバーンも出演していて 思わぬ結末をむかえる物語が魅力的な 本作品
終始ミステリアスな雰囲気が光る 見ごたえのある低予算SF映画となっています

4.ひそひそ星 (2015年)

監督は 園子温
登場人物がとにかくひそひそ喋る 日本のSF映画です

舞台は 宇宙が機械によって支配され 人工知能を持つロボットが8割を占めるのに対し 人間が2割にまで減少した未来の世界
人類は数度にわたる大災害と失敗を繰り返し 衰退の一途にありました
アンドロイドの鈴木洋子は 相棒のAIと共に宇宙船に乗り込み 星々を巡って人間の荷物を届ける宇宙宅配便の仕事をしていました
そんな中 洋子は大きな音をたてると人間が死ぬ可能性のある"ひそひそ星"に住む女性に向けて 荷物を届けに行くことに...というストーリーです


物語の舞台となる ひそひそ星においては"30デシベル以上の音を立てると 死んでしまうかもしれない"という設定であるため 終始静かな話し声が 眠気をいざないます
近頃 不本意な形で世間を騒がせてしまった園子温監督ですが 自身が設立したプロダクションの第一作目となる本作品は 90年代初頭に考案されたという脚本を基にした 独自のSF設定が光っています


昭和中期の家を模したレトロ宇宙船や ひねれば音の鳴る蛇口, やかんなど シュールな船内の様子は 日本的な世界観であり それらがモノクロ映像で描かれた 意欲作となっています
美術監督の清水剛によって東宝スタジオ内に設立されたセットは 1963年のチェコスロバキアの傑作宇宙映画「イカリエ-XB-1」のような雰囲気を感じさせます


この映画を観ると 日本映画らしくない 広大な撮影ロケーションが気になります
実はこれらは 震災と原発事故でほぼ無人となった 福島県の富岡町, 南相馬市, 浪江町などで撮影され 誰もいない まるで時間が止まってしまったような街の様子が表現されているのです
この 現実離れしたように感じる風景の撮影にあたっては 現地の住民も撮影に参加したといいます
また この場所をロケ地に選んだことに対する批判も当時はあったようです

映画内では 人類が衰退した世界を描いているため 撮影ロケーションも踏まえると すこし違った見え方になってくる作品でもあります
奇遇ながらも アンドレイ・タルコフスキー監督の「ストーカー」で描かれる内容と この福島という撮影ロケーションは 通じる部分があると言えます
これが意図的かは不明ですが どちらも"静かなSF映画"として 魅力的な空気感を放っています

そんな本作品は 癖のある内容なので賛否両論あるかとは思いますが 園子音監督らしからぬ雰囲気の かなり個性的な作品です
多くの方に見落とされてしまっている印象のある 日本の隠れた傑作SF映画となっています

番外編.林檎とポラロイド (2020年)

監督は クリストス・ニク
記憶喪失を引き起こすパンデミックを描く ギリシャ・ポーランド・スロベニア合作の映画です
SFとは言えないと思いますが 記憶をテーマにした興味深い作品なので 紹介させていただきます

ある日記憶を失った男は 治療のための回復プログラムである"新しい自分"に参加します
彼は 毎日送られてくるカセットテープに吹き込まれた内容をもとに 様々なミッションをこなしていくことになりました
そんな中 男は同じく回復プログラムに参加する女性と出会い 親しくなっていきます
男は新しい日常に慣れはじめ ミッションをこなす内に過去の記憶が徐々にひも解かれていく...というストーリーです


本作品は ギリシャ生まれのクリストス・ニクにとって 長編映画監督デビュー作となります
「TAR/ター」でアカデミー主演女優賞にノミネートされたケイト・ブランシェットが製作総指揮を務め 彼女自身の製作会社ダーティ・フィルムズが製作に携わっています


作中では 記憶喪失の病にかかったという男が奇妙な回復プログラムに参加することになり 言われるままに様々なミッションをこなしていく物語が描かれます
とにかく捉えどころがないような抽象的なシーンが続き じわりと謎が解けていくような内容です
タイトルにも含まれるリンゴは"記憶力の低下を防ぐ"とされており これを踏まえて映画を観ると ある事実が浮かび上がってくる...そんな 視聴者に解釈をゆだねるような作品です

クリストス・ニク監督は撮影に当たって 主演のアリス・セルヴェタリスに対し「エターナル・サンシャイン」と「トゥルーマン・ショー」を観るように言ったとされますが 2つの作品との共通性も納得です
近頃のギリシャ出身の監督と言えば ヨルゴス・ランティモスが有名ですが 本作品は同監督の「ロブスター」などにも通じるシュールな空気感が 強い魅力を放ちます
音楽は要所で少し流れる程度で その場で鳴っている環境音を重要視している印象です


本作品は ヴェネチア国際映画祭のオリゾンティ部門でオープニング作品のひとつに選ばれました
その際 同映画祭でコンペティション部門の審査員長を務めていたケイト・ブランシェットも作品を観賞
作品内容に惚れ込んだ彼女は 映画完成後にも関わらずエグゼクティブ・プロデューサーへの就任を熱望し それが実現したといいます
クリストス・ニク監督の長編映画第2作目は ケイト・ブランシェットがプロデュース キャリー・マリガンの主演ということで ハリウッドデビューの企画が進行中とされています


そんな 今後の活躍が大きく期待されるギリシャの新鋭による 長編映画監督デビュー作となった本作品
気になる方は ぜひ観てみてください

あとがき

今回は「Amazon Prime Videoで観れる!ほとんど知られていない おすすめの隠れた名作・傑作・カルトSF映画」というテーマのSF映画紹介でした
観てみたい作品はありましたでしょうか
Amazon Prime Videoの傾向として 海外のマイナーな作品は特に すぐ配信終了してしまうことが多いように思います
時には日本でDVDもリリースされていないような映画もありますので 観れる内にぜひ観てみてください
最後までご覧いただき ありがとうございました

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