あまり知られていない ディストピアを舞台にした名作・傑作SF映画[3選]
こんばんは ぷらねったです
SF映画の中で訪れる 決して実現してほしくない ディストピアな近未来
今回は「あまり知られていない...ディストピアな近未来を舞台にした名作・傑作SF映画」というテーマで そんなSF映画を紹介していきます
1.デイブレイカー (2008年)
監督は マイケル・スピエリッグ,ピーター・スピエリッグ
ヴァンパイアをテーマにした アメリカ・オーストラリア合作のSFホラー映画です
舞台は近未来 地球では 吸血コウモリに起因する疫病により 人口の9割がヴァンパイアとなっていました
生き残った人間はヴァンパイアから虐げられており 多くが捕らえられ 血を生成する糧として使われています
生きるために逃げ惑う人間もいましたが その数は年々減少しており 今では絶滅の危機にある状況です
そんな中 ヴァンパイアたちが血の欠乏に危機感を示す中で 大手血液製造会社に勤務するヴァンパイアであり 研究員のエドワードは 人間の血に代わる"代替血液"の研究を任されていました
難航する研究に悩むエドワードでしたが ある日人間のオードリーと出会い 人間とヴァンパイア両方を救う方法があることを告げられる...というストーリーです
製作費は2000万ドル
2014年の傑作タイムトラベル映画「プリデスティネーション」で知られる スピエリッグ兄弟が監督をつとめました
彼らはドイツ生まれでオーストラリア国籍をもつ 双子の兄弟です
主演したのは その「プリデスティネーション」でもお馴染み イーサン・ホークです
「マウス・オブ・マッドネス」や「イベント・ホライゾン」などで知られるサム・ニールや「スパイダーマン」,「イグジステンズ」のウィレム・デフォーなども出演しており 嬉しいところです
作中では 疫病の蔓延したヴァンパイアだらけの世界が描かれます
近未来の地球を舞台に「猿の惑星」の猿がヴァンパイアに代わったような内容であり 例えばコーヒーショップでは血液が5%程度含まれていたりします
主人公のエドワードは「マトリックス」のネオのような救世主的存在でもあり 彼は研究者として ディストピアな世界へと戦いを挑むことになるのです
確信犯的に「マトリックス」を彷彿させる音楽の中で 裏切り,兄弟愛,そして人体発火...娯楽的な様々な演出も光っています
当初 主演のイーサン・ホークは こういったヴァンパイア系の映画が好きでは無いこともあり オファーを受けることをためらったそうです
しかし脚本を読み込むと いわゆる典型的なB級映画とは違う内容だとわかり 主演することを決めたといいます
そんなイーサン・ホークの判断通り"ヴァンパイアが圧倒的多数派となった世界"を描く今作の脚本は なかなかの見ごたえがあります
ヴァンパイア達にとって 人間は奴隷でもあり 血を手に入れるためにも必要不可欠な存在です
ヴァンパイア達は血を得て生き延びるためにディストピアな管理社会を築きあげていますが 下等と見なしている人間がいなくなられては困る...この映画はまるで 現実の社会における石油などの天然資源の寓話とも言えるでしょう
とはいえ高尚な作品という訳では決してなく あくまで娯楽的で 時にはシュールに笑えるシーンもあるのが素晴らしいです
そんな本作品ですが クリーチャーデザインには「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズでも知られるWETA Workshopが関わっており これがピーター・ジャクソンが設立したVFX制作会社 WETA Digitalの関連会社です
古典的なクリーチャーデザインに合わせたのか 武器はボウガンによる麻酔矢が中心となっており この辺りはファンタジー的です
そんな ヴァンパイア映画の中でも現実世界に寄り添った内容であり 異彩を放つ本作品
ヴァンパイア映画が好きではない方にもおすすめできる 傑作SF映画となっています
2.ブランデッド (2012年)
監督は ジェイミー・ブラッドショー, アレキサンドル・デュレライン
おそろしい近未来を描く ロシアのSFサスペンスアクション映画です
舞台はモスクワ
企業の電子広告で埋め尽くされる都市の中で ミーシャは広告代理店に勤め 映画業界の宣伝マンとして知られていました
そんなある日 広告を使って人々をマインドコントロールしようとしている巨大企業の陰謀に気づいたミーシャは 様々な犠牲を払いつつ 世界を操る悪との戦いに一人で立ち向かっていく...というストーリーです
本作品はロシア映画でありながら 主要な俳優がすべて ロシア出身の人物ではありません
「戦場のピアニスト」のエド・ストッパードはイギリス, 「アイズ・ワイド・シャット」のリーリー・ソビエスキーはアメリカ,「フラッシュ・ゴードン」や「デューン/砂の惑星」のマックス・フォン・シドーは当時フランス国籍と 様々な国の人物が出演しています
その一方で音楽は アンドレイ・タルコフスキー監督の映画『惑星ソラリス』,『鏡』,『ストーカー』などで知られる ロシアのエドゥアルド・アルテミエフがつとめました
作中では とある大企業による 広告を用いた社会のコントロールに関する物語が描かれます
例えば 大企業がハンバーガーを売るために"太っていることは素晴らしい"という価値観を強める広告を打ち出したり...そんな中で主人公のミーシャは ネガティブな広告を打ち出し 大企業の思惑を打ち砕こうと奮闘するのです
何といっていいのか分かりませんが この映画では 現代社会でも存在するような資本主義社会における大企業の思惑が具現化し それはモンスターとして登場します
モンスターたちは人々の欲求を貪り その食欲は止むことはない
...なんて大層なことを言ってしまいましたが まるで「ゼイリブ」のように 皮肉をたっぷり煮詰めたような社会の描写がされているのです
タルコフスキー作品のような青みがかったトーンの映像も特徴ですが 個人的には どこかフランス映画的な雰囲気のある作品だとも感じます
これがロシア映画というのは驚きですが アメリカ的な価値観の流入と それに感化されていく人々の姿を描いた内容は もしかしたら戦後の日本に通じる部分を感じる方も多いのではないでしょうか
おそらくこの映画のインスピレーションになったのは 旧ソ連の解体後 アメリカの文化や価値観が流入してきたロシアそのものなのではないか...個人的にはそう感じました
そんな 正直ラストはあっけないながらも なかなか類を見ないほどに奇妙な内容になっている 本作品
「デリカ・テッセン」や「ゼイリブ」など 皮肉でユニークな映画が好きな方には強くおすすめしたい おもしろいSF映画となっています
3.ギヴァー 記憶を注ぐ者 (2014年)
監督は フィリップ・ノイス
他人との差異を悪とする管理社会を描く アメリカのSF映画です
舞台は近未来
核戦争後に再建された社会では"コミュニティー"という 完全に平等な理想郷が生まれていました
ここでは誰も過去の記憶をもたず 他人との差異は極限まで削ぎ落され 人々は幼いころから様々なルールを刷り込まれ 争うことなく生きています
そんな中 長老委員会による職業決定の日を迎えた青年ジョナスは 記憶を受け継ぐ者である"レシーヴァー"という大役に任命されます
そして記憶を注ぐ者である"ギヴァー"と呼ばれる老人のもとへと向かうと 彼は自身を「過去のあらゆる記憶を蓄えている唯一の人物」だといいました
そこで記憶を受け継ぎ始めたジョナスは 過去に存在した様々な文化や 人類の歴史に加え 愛や憎しみなどの未知の感情を知っていく...というストーリーです
製作費は 2500万ドル
ロイス・ローリーの児童文学を原作として「ブラインド・フューリー」などで知られるフィリップ・ノイスが監督をつとめました
何度か紹介させていただいている低予算映画「シグナル」のブレントン・スウェイツが主演しています
ファンタジー的で美しい空気感が印象的な映画ですが 作中では さまざまなディストピア映画のオマージュと思われる要素が多数登場します
「赤ちゃんよ永遠に」.「2300年未来への旅」,「1984年」,「ラ・ジュテ」...こういった数々の名作から引用した要素が散見され 寓話的に描かれる物語が印象的です
映画内のディストピア設定としては 勝手に職業を決められてしまうことや"家族"とされる血縁関係のない人たちとの生活などがありますが それ以外にも守らなければいけないルールがいくつか存在します
例えば
・正しい言葉を使用すること
・指定された服を着用すること
・毎朝必ず決められた薬を飲むこと
・門限を厳守すること
・決してウソをつかないこと
こういったルールが存在しますが 主人公が命じられる"ギヴァー"はこれらのルールをほとんど免除され 嘘をつくことまで許可されるのです
これらに違反すれば メリル・ストリープ演じる"主席長老"にバレてしまい お叱りを受けるのです
映画が公開されたのは2014年ですが この時期に流行っていた「ハンガー・ゲーム」,「ダイバージェント」などの若年層向けディストピアSF映画と近い要素をもっており 興行的に大きな成功を収めています
元々の構想から劇場公開まで20年近い時間が掛かっており 先代のギヴァー役を演じるジェフ・ブリッジスは 90年代半ばから映画の実現を希望して製作にも携わっていて 1998年時点にはすでに脚本が完成していたそうです
しかし権利問題などで製作はなかなか進まず 当初は自身の父であるロイド・ブリッジスに"ギヴァー"を演じてほしかったそうですが 彼が亡くなってしまったことで自身がその役を演じることにしたそうです
また 歌手のテイラー・スウィフトもとある役のオファーを受けたとされますが これは実現していません
そんな本作品ですが 現時点ではU-NEXTでも視聴可能です
綺麗な雰囲気のディストピア映画好きの方は ぜひ観てみてください
あとがき
今回は「あまり知られていない...ディストピアな近未来を舞台にした名作・傑作SF映画」というテーマでのSF映画紹介でした
ディストピア映画を観ると 今の社会の良い点・悪い点に改めて気付けることがあると感じます
政治不信が蔓延した昨今の日本ですが より良い未来のために政治家を志す方々には ぜひディストピア映画を観ていただきたいものです
みなさんの未来が素晴らしいものになりますように...
最後までご覧いただき ありがとうございました