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2020年代に公開された 奇妙で素晴らしいSF映画たち[3選]
こんばんは ぷらねったです
近年公開された中で 明らかに王道ではない 一風変わったSF映画たち
今回は「2020年代に公開された 奇妙で素晴らしいSF映画たち」というテーマで 少し変わったSF映画を紹介していきます
1.宇宙探索編集部 (2021年)
監督は コン・ダーシャン
廃刊寸前の科学雑誌をテーマにした 中国のSFコメディ映画です
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かつては注目を集めていた科学雑誌「宇宙探索」でしたが 今ではその人気も衰えて若い世代にも普及せず 廃刊の危機に頻していました
そんなある日 編集長のタンは中国西部の村で宇宙人の仕業と思われる怪現象が起きたという情報を掴みます
タンは雑誌の陥った危機的状況からの起死回生を図るべく クセの強い編集部員の仲間を連れて 現地へ調査に向かうことになりました
しかしそこで彼らを待ち受けていたのは 予想を遥かに超える出来事だった...というストーリーです
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本作品は 1990年代に人気を誇った実在のUFO雑誌「飛碟探索」をモデルとして制作されました
コン・ダーシャン監督にとっては映画大学の卒業制作作品であり それにも関わらずアジア各地の映画祭で話題を集めた作品です
エグゼクティブプロデューサーには「流転の地球」シリーズの監督として記録的大ヒットを達成した グオ・ファンがクレジットされています
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作中では 勢いを失った雑誌の復権にまつわる物語が描かれます
かつては人気を集めた科学雑誌「宇宙探索」...人気を復活させるために編集長が選んだのは 宇宙人が関係するかもしれない情報の調査でした
そんな雑誌の編集局員たちによる 真偽不明の怪しい超常現象についての取材の旅を描いた まったりとした内容になっているのです
また モキュメンタリー的な演出を取り入れており とにかく取材シーンが多いのが特徴ですが そんな中で見せる意外なラストの展開は特に異質で 注目ポイントとなっています
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英題はズバリ「Journey to the West」であり「西遊記」とまったく同じタイトルとなっています
ジャンルとしてはSFですが コメディ,ミステリー,ロードムービーといった要素を含んでおり おそらくかなりの低予算と言うこともあって素朴な内容ですが 中国映画らしからぬインディーズ感が心地よいです
個人的には中国に行ったことがないのですが 道路や建物などの土着的な雰囲気は他の中国映画であまり観たことがないもので 新鮮に感じました
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そんな今作の製作にあたっては 近年中国の大作SF映画として日本でも広まった「流転の地球」の監督であるグオ・ファンも関わり 一部出演もしている上に製作費の援助もおこなったそうです
この辺りの詳細は不明ですが どうやら映画学校の卒業制作として製作を進めるうちに可能性を見出され 次第に大きなプロジェクトになっていったような流れがあったようです
グオ・ファン そして今作の監督であるコン・ダーシャンは ともに北京電影学院の出身という共通点をもち これは1950年代から続く由緒ある映画学校だそうです
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学生が卒業制作のために完成させた映画とは思えないクオリティーとおもしろさのある本作品ですが 果たして人気を失った雑誌は復権を果たせるのでしょうか
そして 宇宙人は実在するのか...
現時点ではU-NEXTでレンタル可能なので 気になる方はぜひ観てみてください
2.スペースマン (2024年)
監督は ヨハン・レンク
Netflixによって製作され 人間と知的なエイリアンの奇妙な交流が描かれる アメリカの宇宙SF映画です
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舞台は太陽系の果て
チェコの宇宙飛行士ヤクブはたった独りの宇宙船内で過ごし 孤独な調査任務を始めてから半年が経ちます
しかしヤクブは大事なミッション中にも関わらず 妻であるレンカとの夫婦関係が破綻しかけていることに強い不安を感じており『このまま別れを迎えることになってしまうのではないか...』そんな思いに駆られていました
そんな中 ヤクブは宇宙船に潜んでいた謎の宇宙生物 ハヌーシュに出会います
そして知的な生命体でもあるハヌーシュと共に 愛,人生,命などに関する哲学的な会話を交わし 自身の過去や妻との記憶を回想しつつ 人間の真理を探究していくことに...というストーリーです
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製作費は 4000万ドル
本作品は ヤロスラフ・カルファーの小説「The Spaceman of Bohemia」を基に映画化されました
監督をつとめたのは マドンナやリバティーンズなどのミュージックビデオでも知られる ヨハン・レンクです
近年のNetflix作品に多数出演するアダム・サンドラーが主演として宇宙飛行士のヤクブ役をつとめ 妻役は「わたしを離さないで」などで知られるキャリー・マリガンが演じています
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作中で描かれるのは 著しく関係の悪化した夫妻の物語です
地球と宇宙 遠く離れた場所を通した心の通わないやり取り...そんな中で精神的に不安定になった宇宙飛行士の夫と 謎の知的な八本足のエイリアンの会話が主な内容になっています
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当然のように人間とエイリアンによる会話が描かれており とにかくシュールな雰囲気ですが その会話内容はかなり哲学的です
宇宙船でひとりぼっちという設定は 2011年の超低予算宇宙SF映画「地球、最後の男」とも共通するところで「2001年宇宙の旅」,「惑星ソラリス」の影響も感じました
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個人的に チェコの宇宙飛行士が主人公と言うのは映画としてかなり斬新な設定だと感じました
しかし現実世界でも 1978年にソユーズ28号,サリュート6号に搭乗したウラジミル・レメックという ヨーロッパ初の宇宙飛行士となった人物が実際にいたそうで これはアメリカ・ソ連以外で初の宇宙飛行士でもあったといいます
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そんな今作で音楽にクレジットされたのは「アド・アストラ」や「コングレス未来学会議」でも知られる ポストクラシカルの代表的存在 マックス・リヒターです
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映画の製作にあたっては 原作に忠実な内容を実現するために 俳優陣のほとんどがチェコ語で話す設定にすることも検討されましたが 最終的には実現されませんでした
登場人物は"チェコ語で話している"という設定ながらも 視聴者には英語で聞こえている...そんな暗黙の設定になっているようです
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2021年7月には撮影が終わっていたようですが 試写会での反応があまり芳しくなかったこともあり ポストプロダクションや追加撮影に3年間を掛けたあとで公開された経緯があるといいます
その結果生まれた ハリウッドの劇場公開映画では見られないであろう奇妙な内容になっていますが 海外サイトでは「Netflixのインターステラー」,「インターサンドラー」など 明らかにイジるような内容のレビューも目立ちます
しかし個人的にはおかしなバランス感がむしろ好きで Netflixにはどんどん変な映画を作っていってほしいと強く願っています
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そんな 万人には刺さらないのかもしれないカルトな内容の描かれる 本作品
一風変わったエイリアンとの会話劇が楽しめる シュールな宇宙SF映画となっています
3.ピンククラウド (2020年)
監督は イウリ・ジェルバーゼ
触ると危険な雲をテーマにした ブラジルのSFスリラー映画です
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ある朝 前日に一夜の関係を共にしたヤーゴとジョヴァナのもとに 突如けたたましい警報が鳴り響きます
どうやら強い毒性を持つピンク色の雲が街を覆っており その雲に触れるとわずか10秒で死に至ってしまうことが判明しました
これを知った2人は窓を閉め切って部屋に引きこもり そのままロックダウン生活を強いられることになってしまいます
しかし事態は一向に好転せず この屋内だけの生活が終わらないことを誰もが受け入れ始めました
そのまま月日は流れ 父親になることを望むヤーゴにジョヴァナは反対しますが やがてジョヴァナに新たな命が宿り 息子のリノと3人での生活がはじまる...というストーリーです
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本作品は 元々いくつかの短編映画を手掛けてきた経歴をもつ イウリ・ジェルバーゼの長編映画監督デビュー作となった作品です
とても珍しい ブラジルで製作されたポルトガル語のSF映画となっています
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作中では 死を招くピンク色の雲にまつわる 不条理な物語が描かれます
突如世界に漂いはじめたピンク色の危険な雲の影響で 人々は外出できなくなり それぞれ屋内だけでの生活が開始
そんなこの映画の主人公は 出会ったばかりで一夜の関係だったはずの2人...昨日までは赤の他人だったはずなのに パンデミックがきっかけで共に生きていくことになるという 世にも奇妙なストーリーです
一般的な夫婦生活とも違い ほとんどゼロからはじまる共同生活は まるで実験のようでもあります
子どもが欲しい男と 子どもを欲さず一人の人間として生きることを望む女...これではもちろんすべてがうまく行くはずもなく 物語は不思議な方向に展開されていくのです
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以前紹介したウルグアイの映画「ディアマンティーノ 未知との遭遇」もそうですが 南米のSF映画には奇想天外な作品が突如出現する土壌があるのでしょうか
調べたところ 監督のイウリ・ジェルバーゼはブラジル生まれの女性であり 2作目の監督作品の準備中という噂もあるので 今後もカルトなSF映画を作ってくれることを大いに期待したいです
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ところで 公開された年が2020年ということを考えると コロナウイルスから連想した映画だという印象を持つ方もいると思いますが 実は2017年頃からすでに構想が始まっていたそうで 偶然時代と内容が関連した映画になったようです
単体で観るとシュールさばかり際立ちますが パンデミックの時期を経たいま観ると 強い哲学性を帯びた作品という気もしてきます
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そんな ほとんど家の中だけで展開される唯一無二の内容が描かれる 本作品
すこし大人向けな内容も含む 一風変わった不思議なSF映画となっています
あとがき
今回は「2020年代に公開された 奇妙で素晴らしいSF映画たち」というテーマでのSF映画紹介でした
珍しく新しい映画ばかりを紹介してみましたが いかがでしたでしょうか
2020年以降など年代で作品を括るのもおもしろいと思ったので 今後も継続して紹介していきたいと思っています
また 比較的新しいSF映画はU-NEXTのレンタルで観れることが多いので こちらも参考までにお伝えします
最後までご覧いただき ありがとうございました
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