法の精神
"三権力は、そこでは、われわれの述べた国制をモデルとして、配分されてもいない。それらは、おのおの独自の配分をもっており、その配分にしたがって、政治的自由に多少とも近づいている。"1748年発刊の本書はアメリカやフランスの憲法制定にも多大な影響を及ぼした政治哲学名著。
個人的には、主宰する読書会の課題図書として手にとりました。
さて、そんな本書は3年間イギリスに滞在し、立憲君主制の元での議会政治を研究した著者が、曰く20年間を費やして書いた"法"を『事物の本性に由来する必然的関係』と定義した上で、第31篇にわたって『専制、君主制、共和制』といった政治体制のよく知られる比較はもちろん、教育や刑法、軍事や徴税、風土や商業、宗教等とあらゆることの関係性が集まって『法の精神をかたちづくっている』と幅広く論じているのですが。
お恥ずかしながら教科書的に著者=『三権分立』(司法権、立法権、行政権)と、今の現代日本社会で当然に前提的に語られがちな前情報しかなかった私でしたが。解説にもある通り、それらの記述が本書について全体にしめるのは【第11篇6章のみと僅かに留まり】どちらかといえば、ルイ14世による【専制政治や貴族階級、宗教関係者への批判や啓発を目的にした】政治体制全般にわたる細やかな指摘になっているのに驚かされました。
一方で【イスラム圏やアジア(特に中国)に関しては誤解と偏見に満ちている記述も多く】専らフランス人である著者が【自国の政治体制に関心を寄せている】本書であり、また、共有される情報に限界がある当時で致し方ないとはいえ、些か残念。というか部分的にはツッコミ所が多く感じました(特に『風土と飲酒』の関係性)
政治国家論の名著として、また『三権分立』という考え方がどこから発生したのか。を、ちゃんと知りたい方にもオススメ。