くそじじいとくそばばあの日本史
"昔話の爺婆がこんなふうに、決していい人ではなく、『いじわるばあさん』みたいなタイプが少なくないのは、お人好しでは世渡りできないからでしょう(中略)昔のヒーロー・ヒロインはくそ爺婆だったわけですよ"2020年発刊の本書は古典、日本史紹介という体裁で、中高年にエールをおくっている一冊。
個人的には著者の本は初めてでしたが、人生も後半戦。ミッドライフ・クライシスを覚え始めていることから興味を持って手にとりました。
さて、そんな本書は古典エッセイトの著者が超高齢化社会となった現代日本。年を重ねるにつれて周囲から自然に求められてきた【優しさや穏やかさに応えるのではなく】我が道をいく"くそ爺婆"のような『パワフルさ』こそが今は求められているんじゃなかろうか。と、平均寿命こそ現代と比較すると低いものの、それは乳幼児の死亡率が高いのが原因で、実は【長生き老人が沢山いた古代・中世日本の歴史上の人物たち】を、神話から始まり江戸時代まで。高齢になってもバリバリに活躍した権力者やクリエイターを【豊富な資料からの平易かつ自由な意訳】で紹介してくれているわけですが。
まあ。著者が最初に"『くそ』というのは、つまりはうんこで、つまらぬ、劣る、悪い、というマイナスの意味が先立ちがちですが(中略)歴史的にはプラスの意味もある"とわざわざ説明しているとは言え、それでもやはり先入観から【マイナスに捉えてしまう方には作中で連発されて辛いかも】またタイトルからユニークな。でも一般的にイメージする『日本史』を期待した方は【断片的で時系列に沿っていない内容に困惑してしまう】のではないか。と本書に対してお節介ながら思いました。
一方で、私のように本書は「日本史」という体裁をとって【中高年にエール(パワー)を送ってくれている】と解釈した人にとっては、豊臣秀吉や葛飾北斎、小林一茶といった誰もが知る有名人の知られざる?高齢者としてのエピソードは興味深く。現代日本が未知の超高齢社会に突入しているとは言え、平和で多様な生き方が昔以上に認められつつある『100年時代』。紹介された人物たちに負けず【不安がるよりは自分なり楽しんで生きよう】と大いに元気をいただきました。
高齢者にクローズした古代・中世日本史のサブテキストとして、また歴史好きな中高年の方にオススメ。
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