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方法序説

"しかしそのすぐ後で、次のことに気がついた。すなわち、このようにすべてを偽と考えようとする間も、そう考えているこのわたしは必然的に何ものかでなければならない、と。"1637年発表の本書は『近代哲学の父』代表作にして、弾圧の中で世界の普遍的認識、真理を求め続けた求道の書。

個人的には代名詞的な『われ思う、ゆえにわれあり』(コギト・エルゴ・スム)こそ知ってはいるも、どういった流れから出てきた言葉だったのか?を知りたくて本書を手にとりました。

さて、そんな本書は元々は3つの科学論文集を収めた500ページを超える大著のうち、序文部分である最初の78ページであり、著者の自身の方法論の発見・確率や刊行に至るまでの経緯が六部構成で記されていて。

第一部は良識、理性は全ての人に平等に与えられているが『思考方法で意見が別れる』から始まり【学校で学んだ諸学問に不確実さを感じて旅に】フィールドワークにでることが。そして第二部では30年戦争に従軍、ドイツにいた時に『暖炉』でこもって考えた事としてゆっくりでも【一生独学で進むための自戒的な四つの規則】について。三部では独学で行き詰まっても外部環境的に【居心地よく暮らせるための三つの規則】が、国の法律や習慣に従う等が語られ、そして四部でいよいよ?方法論懐疑『われ思う、ゆえにわれあり』と当時主流であった【キリスト教的世界観に代わる思考のスタートライン】を見出し、第五部では公表を控えていた【論文『世界論』ダイジェスト】が、そして最後の第六部では『地動説の否定』ガリレイ事件に衝撃を受けて『世界論』の生前発表を中止した経緯、しかし【このテクストを後世に残す理由】が書かれているのですが。

まず、岩波版だとわずか100ページちょっとなのですが、決して難解な内容ではなくも、テキストがとにかく慎重というか丁寧というか【ぱらぱらと読み進めても頭に入ってこない】まわりくどい感覚があって、私的には何度も繰り返して読む羽目になりました。

一方で、師匠がいるわけでなく何でも独学派の私にとって『すべて良書を読むことは、著者である過去の世紀の一流の人びとと親しく語り合うようなもので』と【読書の有用性についてを語っている箇所】に激しく頷き、また(私なりの解釈だが)本当に真理を求めるなら、自分が有能だと過信し『すぐにわかったふりをする仲間とわいわいしたり』また、そういった人たちに『教えてもらって満足する(思考停止する)のを避けなければならない【=自分1人の頭で深く考えないといけない】にも深々と共感。

近代哲学の名著としてはもちろん、情報過多、全体主義台頭の時代に『自分の頭で考える』独学先輩、偉人の本としてもオススメ。

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