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ミケランジェロの生涯

"天才なる者を信じない人、天才とはどんなものかを知らない人は、ミケランジェロを見るがいい。彼ほどそれの餌食となったものはかってない。"1906年発刊の本書は、戦争反対を世界に叫び続けたノーベル賞受賞の著者による、正確な考証の中から【芸術創作における人間の姿】を浮き彫りにした一冊。

個人的には、盛期ルネサンスの偉大なる3人、レオナルド、ミケランジェロ、ラファエロの中では(自伝を書いた事や資料が豊富なこともあり)一番、人間的な魅力が伝わってくるミケランジェロが大好きなことから、また資料として本書を手にとりました。

さて、そんな本書は著名なフランスの作家による偉人伝『ベートォヴェン』『ミケランジェロ』『トルストイ』の三部作の一つと見なされている作品で、圧倒される【作品や才能への賛美ではなく】むしろクライアント(法王たち)に振り回され続ける決断力や意志力に乏しい優柔不断さ、親友を保身の為に売り飛ばす臆病さの一方で、父親や兄弟に金銭的に依存され悩み落ち込む姿。また愛情生活でも満ち足りない人生を描いているのですが。

まったくの美術史初心者ではなく、ミケランジェロの様々なエピソードをある程度知っている人(贋作づくりとか)ならニヤリとしてしまうミケランジェロの人間味溢れる人生がダイジェストのように【美しい文書でわずか130ページにおさめられていて】楽しませてくれます。(詩作の紹介も嬉しい)

また、物語がないと我慢できない私たちの多くはジャンルを問わず偉大なる成功や作品を残した人は【人格的にも偉大に違いない!】と勝手にタグづけし、納得しようとする部分がある気がしますが。

本書で描かれているミケランジェロの姿からは、そういった周囲から求められるほどの偉大な徳性はなかったとしても『それでも』完璧に美しい作品にこだわり続け、少なくとも【家族や周りの弟子たちを大切にし続けた】1人の人間としての姿が敬意をもって描かれていて、とても良かったです。

ミケランジェロ好き、西洋美術史好きな人へ。また偉大なる作品は偉大なる人格を必ずしも伴わない(伴う必要性はない)事を確認したい人にもオススメ。

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