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誰にもわかるハイデガー : 文学部唯野教授・最終講義

"読み返して、この頃のおれ、よくやっていたなあと思う。今ならこんなこと、読書、思索、講演などを含め、とてもやれないであろう。"2018年書籍化された本書は20世紀最大の哲学者の一人、ハイデガーの主著『存在と時間』のエッセンスを的確に抽出、ユーモア溢れる語り口も魅力的な一冊。

個人的には著者ファンではあるも未読だったので、文庫化を機会に手にとってみました。

さて、そんな本書は「大学」と「文学」をテーマにした著者作『文学部唯野教授』の最終講義というサブタイトルをつけた1990年の講演『カセットブック』(懐かしい。。)に大幅な加筆修正を加えて書籍化されたもので、難解なハイデガーの主著にして未完のテクスト『存在と時間』をタイトル通り『誰にもわかる』ように【わかりやすく、ユーモアを交えて】第一講、第二講と講義形式で解説してくれているわけですが。

まず、文庫化にあたって冒頭に収録された著者挨拶で自ら【二度とない、脂がのっていた頃の小生】書いているように、当時の入院生活で死という現象に関心をもった著者が易しい言葉で用語を紐解いていくハイデガーは非常に読みやすく、原著の『存在と時間』未読な私でも引き込まれるところがありました。

また、50ページにわたる社会学者、大澤真幸の解説。『薔薇の名前』を引用しての本書での喜劇的な語り口の魅力や、『新訳聖書』を引用しての"死の先駆的了解"についての考察なども『存在と時間』への関心を強く惹きつける内容になっていて。これを機会に【原著にも手を伸ばしてみようか?】と思わされました。

著者ファンはもちろん、わかりやすい哲学解説書を探す方にもオススメ。

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