ノリーのおわらない物語
"『マリアナのおわらない冒険』シリーズは、もういくつも作ってあったけど、どれも紙に書けないくらい長くて、いったい全体どうやったら覚えていられるか心配だった。"1998年発刊の本書は著者が当時9歳だった自分の娘との日々の共同作業で描いた等身大かつハートフルな子どもの世界。
個人的には、常人離れしたミクロの観察眼で、身の回りを描き出す著者の作風がとても好きで『中二階』や『もしもし』『フェルマータ』といった作品に次いで手にとりました。
さて、そんな本書はアメリカから一家でイギリスに移り住んだ一年間の間、毎日車で迎えにいった実の娘、アリスを"情報提供者"に、彼女が車内で実際に語ったり、経験したことを聞いては、それを加工して、ノリーという女の子な話として、ほぼ現実の一年間の同時進行で描かれた作品らしいのですが。
まず、どうしても他作品における【大人が描く子ども達】はやけに性格が大人びていたり、合理的に行動したり、理路整然とした会話をしすぎている事に【人工的で違和感を覚える時があるのですが】本書に関しては(語り手は逆ですが)理不尽な物語が続くからこそリアルなルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』と似た読後感。しょっちゅう言い間違えをしていたり、散発的なノリーの語る物語がうまく描かれていて【自然な9歳の女の子の声が再現され、保存されている】ように感じました。
また、若干?【マニアックだったり、エロチックな大人たちの姿や関係】を描いた『中二階』『もしもし』『フェルマータ』を読んできた立場としては、こんなハートフルな作品もあるのか!と、後書きによると、発刊当時"おおかたのアメリカ人が驚いた"らしいですが。まったくもって私も予想外でびっくり。『やっぱりすごいな!ニコルソン・ベイカー!』っと、つい声に出したくなりました。
等身大、自然な子どもの姿や言葉を再現した本が好きな人へ、またアメリカとイギリスの言葉や文化、学校生活の違いをハートフルに知りたい人にもオススメ。