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新選組顛末記

"新八はこの部屋に閉じこもって、新選組の記憶を丹念に掘り起こし(中略)毎日のように訪れる記者に熱っぽく語りつづけた。それは新八にとって真剣勝負であり、剣を筆に持ち替えた最後の戦いだったと言っていい"2009年発刊の本書は小樽新聞の連載を原典にする元新選組二番組長による実戦談。

個人的に新選組を題材にした二次創作物には割と手を伸ばしてきましたが【当事者自らが残した言葉】は読んだ事がなかったので手にとりました。

さて、そんな本書は大正2年(1913年)75歳になっていた元新選組二番組長、永倉新八に小樽新聞の記者が取材をして連載された『永倉新八ー昔は近藤勇の友達 今は小樽に楽隠居』をもとに、最初は関係者のみに配布。のちに文庫化されて蘇ったもので、いかにも好好爺然となった永倉新八の写真から始まり【生い立ちから新選組への参加、そして訣別し松前藩に帰参するまで】池田屋襲撃や禁門の変、高台寺党粛正や鳥羽伏見といった有名新選組エピソードを挟みながら語られているのですが。

某るろうに剣心2021年現在の最新エピソード『北海道編』に登場しているとはいえ、やはり新選組本と言えば、土方歳三や沖田総司といった華のあるキャラが中心の語り手となっている本が多く、必然的に脇役にされがちな【永倉新八から見た新選組】という視点は新鮮で。特に連載タイトルにもあらわれている様に【近藤勇には終始、友情を感じていた】のが描写からも伝わってきて興味深かった。

一方で、研究者や歴史に詳しい方からは【永倉新八が活躍しすぎ】と【新選組の『資料』としては内容を疑う】方もいるかもしれないと思う部分もありましたが。新聞での連載を終えて一年半後に本人が生涯を閉じた事からも【75歳の老武士の終活】として、そもそも『関係者配布本』であった経緯からも私自身は捉えていて。『最後まで人生を聞いてくれ、残してくれる』記者と出会えて嬉しかっただろうな。と胸中を想像したり。

新選組好き、永倉新八好きな人。また幕末好きな方にもオススメ。

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