人質の朗読会
"『彼らは本を朗読しているのではない。自分について、語っているのだ』自己紹介のようなものですが、と私が質問すると、言下に否定した。『いや、もっと深遠な物語だ』"2014年発刊の本書は、ドラマ化もされた8人の人質と救出作戦を実行した兵士たちが語る非日常における日常の細やかで特別な物語。
個人的には毎月1回、黙読とも違う音読の魅力を感じる為に【テキストを声に出す会】を主宰している事から、本書のタイトルに惹かれて手にとりました。
そんな本書は日本からツアー旅行に参加し、ある国の山岳地帯に反政府ゲリラに捕らえられた人質たちが結果的に【全員犠牲になったことが冒頭で明らかにされた上で】残された盗聴テープに残された人質たちの朗読した物語が8つ+救出作戦に従事した兵士が1つ。合計9つの物語が短編的に展開していくわけですが。
書かれた時期的には2013年のアルジェリア人質事件が背景にあるのかな?と思いうかべつつ、それぞれが語る物語は、拘束されている状況とは思えないほど【穏やかで特別なこともなく】また互いに組み合わさるわけでもなく、不思議な読み心地でした。
一方で、あとがきでドラマで主演をつとめた佐藤隆太が書いてるように『小さなことが、それでも当人にとっては、本当に特別な出来事であり、時間だったことがわかる』という意味では、それぞれが主役としてSNSで何かしらの物語を毎日の様に語り、また演じる現在、客観的に眺めれば、そんなものかなあ。と思ったりしました。さて、私が同じ状況だったら。何を語るのだろうか?
誰かの物語に耳を傾けたい方へ、また穏やかな気持ちになりたい方へオススメ。
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