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恥辱

"『最下段からのスタート。無一文で。それどころか丸裸で。持てるものもなく、持ち札も、武器も、土地も、権利も、尊厳もなくして』『犬のように』"1999年発刊の本書は、ノーベル賞作家の代表作にしてアパルトヘイト撤廃後、価値観が揺れ動く南アフリカを舞台に転落する男を無駄のない硬質な文体で描き、史上初となる2度目のブッカー賞受賞となった名著。

個人的には、タイトルにまずネガティブな印象があって何となく敬遠し積読になっていたのですが、周囲の高い評価にエイや!と手にとりました。

さて、そんな本書は52才、2度の離婚歴を持つ大学教授が関係をもった教え子にセクハラ告発されて、仕事も友人も失って娘の経営する農園に身を寄せるのですが。。冒頭からの【身勝手でナルシスト気味に欲望を処理する姿】には"何て不快でめんどくさい奴だ!"と感じたのに、気づけばページをめくる手が止まらず、一気に読み終え。いつしか【男に自分を重ね、感情を寄せてしまっている自分】に当惑しました。(著者の削ぎ落としたような文書力はもちろんですが、訳者の方も素晴らしい仕事ぶり!)

また本書舞台の南アフリカ、そして白人優先の人種隔離政策アパルトヘイトの1994年撤廃後の空気感は私には身近なものとは言い難いのですが。これぞ海外文学を読む醍醐味?日本からは遠いアフリカの大地に連れていかれる感じが(物語展開としては決して明るくはなくても)【没入感として、とても心地よい】本でした。問題は?あらすじ紹介だけでは、充分に魅力を他者に伝えられないところかな。。『とりあえず読んで!』という感じの一冊。

男性に限らず、全ての中高年へ。また南アフリカの大地へ読書で旅立ちたい方へもオススメ。

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