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復活の日

"終わった時ー誰しも、この災厄が、いつかは終わるものと考えていた。『人類』にとって、災厄というものは、常に一過性のものにすぎない、と。"1964年発刊の本書は著者代表作の1つにして映画化もされた、新型ウイルスによる人類死滅の危機を描く"予見的"SF長編傑作。

個人的には新型コロナ禍で、やはり内容が気になっていたことから手にとりました。

さて、そんな本書は日本およびアジア地域で初めてのオリンピックとなった1964年東京オリンピック開催年に著者の初長編『日本アパッチ族』に続く描きおろし長編第二作として発表されたもので、米ソ冷戦時代、1962年に核戦争の火ぶたを切る一歩手前まで進んだキューバ危機が勃発するなど【第三次世界大戦が現実味を帯びていた時代】を色濃く反映しつつ、軍事施設から持ち出された致死率100パーセントの新型ウイルスが世界中に広まっていく中、唯一感染から免れた南極基地で生き延びようとする人類の姿を描いているのですが。

まず、執筆当時には著者はまだ一度も海外渡航経験もなく、また、そもそもインターネットも影も形もない時代に【よくぞここまで!】と思わされる圧倒的な生物学や軍事の情報量、そして『マスク姿が並ぶ車内』『緊急事態宣言の発令』といった日本の描写には、著者がまるで【2020年代の日本を見てきたかのようなリアルさ】があって驚かされました。

あと、本書のストーリー展開自体はこちらもコロナ禍でよく読まれる、読まれているカミュの『ペスト』や、各戦争後の終末SFにして映画化もされたネビル・シュートの『渚にて』の影響を強く感じましたが、それでもタイトル通り、【人類の良心や知のリレーによって】苦難を乗り越えて『復活の日』を迎えるラストは力強く、未だマスク生活を余儀なくされている2022年現在、希望を与えてくれるものでした。

ウイルスのパンデミックが襲ってくるサバイバル作品として、また冷戦期に書かれた昭和SF傑作としてもオススメ。

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