『アリス・ミラー城』殺人事件
"きわめて単純なたった一つのルールです。『アリス・ミラー』を手に入れられるのは、最後まで生き残った人間のみ。"2003年発刊の本書は物理トリックにこだわる著者による城シリーズ3作目にして、古典名作世界に挑んだシンプルかつ大胆な叙述トリックミステリ。
個人的には『不思議の国』と『鏡の国』2つのアリス作品にインスパイアされた作品として、興味津々に手にとってみました。
さて、そんな本書は著者が影響を受けた『十角館の殺人』(『そして誰もいなくなった』でも可)よろしく、東北の孤島にある『アリス・ミラー城』に集まった癖のある探偵たちーそれぞれに城に眠っているとされる『アリス・ミラー』を探すように依頼された。がチェスの駒に見立てられて何者かに1人ずつ殺されていくのですが。
探偵たちが語り合う『物理トリックの条件』物理法則に適っていること、単独による施行、新規性、必然性、殺人に関連していること。などなど、ミステリ、特に【本格ミステリ好きな方だと多分にニヤニヤしてしまう会話】が続き、楽しませていただきました。(『アリス』作品への言及も良かった)
また、アリス狂が造ったとされる異様な『アリス・ミラー城』では、扉が増えたり、人形が動いたりといった怪現象、そして『やっぱり』密室殺人がおきるわけですが。ちゃんと【合理的に意図が説明されている】し、また『完璧に隠蔽された犯人』自体も(すっかり騙されましたが)読み直すと【ヒントはちゃんと明示されている】し、不条理さはなく、意外にも親切かつ丁寧な作品の様に思いました。(え?『犯行動機』は?いや『それはそれ』イメージ的に美しいし、まあ良いのではないかと)
『十角館の殺人』などの本格ミステリ好きな方や、『アリス』の2次創作作として興味ある方にもオススメ。
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