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使える地政学

"地政学は『知識のための知識』『情報のための情報』『分析のための分析』という発想を忌避する。『真理は常に具体的である』というのが、地政学者の共通了解だ。"2016年発刊の本書は、あり得るし、あり得ない。答えのない世界情勢の眺め方を地政学的見地からわかりやすく伝えてくれる。


個人的には、数年前から地政学の本に関しては何冊か手にとってきましたが、有数の読書家として、あるいは解説者としての著者に個人的に好感を抱いている事から本書も手にとってみました。

さて本書は【理論というより現状分析】を優先し、2016年当時に話題になっていたISやパナマ文書、尖閣諸島からウイグル自治区、天皇と沖縄といった、国内マスメディアを通してだと、どうしても【アメリカ・英国文化圏に忖度した】一方的な利害情報に囲まれがちな話題に対し果敢かつ冷静に、また国際情勢は映画の様に絶対的な答えがあるわけではなく【互いの流動的な利益の着地点】である事を俯瞰的な解説と共に再確認させてくれていて、すっきりとさせてくれます。

一方で、著者が冒頭で述べている様に【地政学の理論】についてはあまり触れていないため(そもそも著者自身が専門家ではないので求める人は少ないと思いますが)そういったアカデミックな内容や解説を期待した人には、ちょっと物足りないかも?と思いました。

気軽に地政学アプローチでの世界情勢の眺め方を感じたい誰かに、また現在進行中の出来事を先読みする訓練を求める人にオススメ。

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