隷従への道
"自由人からなる世界を創造しようとする最初の企画に失敗したとしても、われわれは再び試みなくてもならない。個人の自由に関する政策が、真に進歩的な唯一の政策であるという指導原理は、今日においても依然として19世紀と同様に真理である"1944年発刊の本書は市場自由主義を代表する歴史的名著。
個人的にはケインズの『雇用、利子および貨幣の一般理論』を読了したので、思想的に対立した著者の本も手にとることにしました。
さて、そんな本書は第二次世界大戦下、連合国の勝利が明らかになる中で、次第に非常時の戦時経済から【戦後経済の在り方】に注意が向けられる中で発表されたもので。市場に介入するケインズ経済学や、当時台頭しつつあった社会主義思想による中央計画経済では『必然的な結果』として、富は公平や効率的に配分されず、むしろ個人の自由や社会集団の自律性を認めず統制や画一化を行う【全体主義、独裁者が出現する】として、ナチスドイツ、ヒットラー、ソ連を例に出しながら『国民生活の隷属化』について警告。個々人の独立、自助を基調とした【自由人からなる国家の集団】を目指すべきと主張しているわけですが。
本書や新自由主義に対する専門的な解説や批判は【研究者や識者の方にお任せ】するとして。まず伝わってくるのは、著者自身も後年『この著作は真理を見出すための真摯な努力であったのだ』と振り返っているように、戦時中の混迷期における著者の同時代における【圧倒的な真摯さ、情熱】でした。(本書が出版後すぐに大人気となり、現在においても引用されるのが頷ける)
また、注釈によるとアメリカで本書出版後に活発な議論が巻き起こった中で、ディストピアSF小説の傑作、ジョージ・オーウェルが1949年に『1984年』を発表、著者が早い時期に同作を【紳士的に論評した】ことを知って。『1984年』好きな私としては『なるほど!ここに繋がるのか!』という【本が次々と影響しあって繋がる楽しさ】を感じてワクワクしました。
20世紀の保守主義、自由至上主義に重要な影響を与えた普遍的な名著として。アダム・スミスの『古典派経済学の延長線上にある一冊』として。全ての方々にオススメ。
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