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異常

"今朝、晴れ渡った空のおかげで、私は自分自身までをも見通している。そして私はみなと変わらない。私はみずからの生に終止符を打つのではなく、不滅に命を与えるのだ"2020年発表の本書はダブルをテーマ、ウリポらしい企みに溢れたSFミステリ、ゴンクール賞受賞作。

個人的にはSF好きの書店員さんにすすめられて手にとってみました。

さて、そんな本書は一見するとSF?とは思えない、殺し屋の話から始まり、自殺してしまう売れない作家、歳の離れた恋人のいるシングルマザーの映像編集者、末期癌の元機長、家庭に問題を抱えたカエル好きの少女、やり手の黒人弁護士、ナイジェリアのゲイのポップシンガー、といった【多様でありつつも、代表的な人物たち】の日常エピソードが紹介された後、一様に、最後に【FBIの訪問を受ける】のですが。それには彼らが乗り合わせた『エールフランス006便』が関係していて。。

と【そこから先】は未読な方の為に内容を伏せるとして。

正直、サービス精神溢れたごった煮が楽しかった中国SF『三体』や、極限状態での"前向きな"宇宙生活を描いたアメリカSF『プロジェクト・ヘイル・メアリー』とかと比較すると、良い意味でSFらしくなく【派手な設定やガジェットが出てくることはない】のだけれど。これはこれで『大人の心理小説』として、とても楽しく読ませていただきました。

また著者が、あの『文体練習』のレーモン・クノーが数学者と設立した文学グループ『ウリポ』の四代目会長というわけで、本書にも【一つの言葉に複数の意味を持たせたり】言葉遊び【過去の有名文学作品の引用】そして、テキスト自体も【多彩なジャンルや形態】が使われていたりと『実験的な企み』が随所に使われていて。(原書と比較したわけではないのですが)訳者の苦心が必然的に伝わってきました。(よい仕事ぶりに敬意を)

SF好きはもちろん、普段SFを手にとらない方にもオススメ。また巧みな実験小説を探す方にもオススメ。

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