#42 「アルコール」のガチ解説
記事を書き始めた日が成人の日ということで。
お酒を飲む機会も多いと思うので、今回はお酒に含まれる「アルコール」について書いてみました。
◯「アルコール」吸収過程
お酒を飲んだ際に、体内でどのように吸収されていくかを確認します。
「アルコール」は他の食品と異なり吸収される過程で、消化を受けることなく吸収されます(通常の食品は、各消化器官で分泌される消化液や分解酵素による影響を受けます)。
通常、飲んだ量の約20%が胃から吸収、残り約80%は小腸上部から吸収されます。
胃からの吸収よりも小腸からの吸収の方が早いことが知られています。
「アルコール」の吸収は全般的に速く、飲酒後1〜2時間でほぼ吸収されると言われています。
胃・腸から吸収された「アルコール」は、門脈という太い静脈に入り、肝臓を通過して、全身の早期に流れていきます。
門脈に入った際の「アルコール濃度」は非常に高いですが、肝臓を通過する間にかなり濃度が下がります。
臓器に達した「アルコール」は、単純拡散により広がっていきます。
「アルコール」は水に極めてよく溶ける性質があるため、臓器の水に容易に拡散しますが、一方で、脂溶性は低いことから、脂肪組織にはゆっくりと拡散していきます。
◯「アルコール」の分解
続いて、分解過程に移ります。
「アルコール」は、体内に取り入れられた後、酵素の働きにより、分解されます(汗や尿、便などから直接対外に排出される「アルコール」もありますが、摂取された「アルコール」の数%以内しかないとされています)。
分解過程は、主に肝臓で行われます。
「アルコール」は、“アルコールデヒドロゲナーゼ”と呼ばれる酵素により、有毒な「アセトアルデヒド」に分解されます。
次に「アセトアルデヒド」は、“アルデヒドデヒドロゲナーゼ“という酵素によって、「酢酸」に分解されます。
「酢酸」になった後、肝臓から離れ、筋肉や心臓などの臓器に移動し、最終的に「二酸化炭素」と「水」になって体外へ排出されていきます。
・酔いが覚めるまでの時間(目安)
まずは「アルコール」摂取量の基準とされる“お酒の単位“を見てみましょう。
純アルコール20gが“1単位“とされていて、ビール(中びん1本500ml)、日本酒1合(180ml)、ウイスキーダブル1杯(60ml)、焼酎0.6合(110ml)が目安となります。
体重約60kgの人が、1単位のお酒を30分以内に飲んだ場合、「アルコール」は約3〜4時間体内に留まるとされていて、2単位の場合では、「アルコール」が体内から消失するまで約6〜7時間かかると言われています。
体質などの個人差によっては、消失するまでにさらに時間がかかることもあります。
また、遅い時間までお酒を飲んでいると、翌日の起床後にもまだ「アルコール」が体内に残っている状態になり、いわゆる”二日酔い”の状態になってしまいます。
◯「アルコール」による反応
・フラッシング反応
”フラッシング反応”とは、お酒を飲むことよる顔面紅葉、動悸、頭痛などの反応のことです。
上記で説明した”2型アセトアルデヒド脱水素酵素”は遺伝で3つのタイプに分かれています。
①普通に働くタイプ(活性型)
②活性型に比べてアセトアルデヒドの分解が非常に遅いタイプ(低活性型)
③全く働かないタイプ(非活性型)
②、③のタイプの人(働きの弱いタイプ)の人が飲酒すると、血液中のアセトアルデヒド濃度が上がり、フラッシング反応を引き起こします。
○「アルコール」による悪影響
「アルコール」を摂取することにより、体の中でどのような影響が出るのかをみてみましょう。
・炎症反応(サイトカノン)
「アルコール」は、体の炎症反応を強めてしまう作用があります。
体の炎症反応とは、アトピーや花粉症といったアレルギー、腰痛や肩痛などの痛みの要因です。
「アルコール」を摂取するとこれらの炎症反応を過剰に働かせてしまうため、症状が悪化するなどにつながります。
・免疫力低下
「アルコール」を分解する”アルコールデヒドロゲナーゼ”は、「アルコール」を分解する他に、「ビタミンA」の吸収、代謝、利用とった時にも使われるものになります。
しかし、「アルコール」を摂取することで、そこに使われる分がなくなってしまいます。
「ビタミンA」は免疫システムに必要であるため、うまく代謝・利用できないことで、免疫力の低下につながると言われています。
・酸化
「アルコール」は、体を酸化させます。
酸化とは、体の老い、老けのことです。
体が老けるということは、しみ・そばかす、しわなどができやすくなる状態です。
・脳への影響
「アルコール」を大量に飲む人は脳が萎縮するという話は聞いたことあるでしょう。
最近の調査では、飲酒量と脳萎縮の程度には、正の相関関係があることが判明しました。つまり、飲酒量が多ければ多いほど、脳が萎縮するということです。
一方で、断酒をすれば萎縮した脳が徐々に元の状態に戻っていくということもわかっています。
お酒を飲むことによる「酔い」は、「アルコール」が脳を麻痺させることで起こります。
最初に麻痺するのは”大脳新皮質”、理性の抑制がとれ”ほろ酔い”気分になります。この時の血中アルコール濃度は0.02〜0.01%程度です。
血中アルコール濃度が0.1〜0.2%程度に上昇してくると、麻痺が大脳辺縁系や小脳に及びます。そうなると呂律が回らなくなったり、吐き気がしたり、千鳥足になったりします。
血中アルコール濃度が0.2〜0.3%程度になると、麻痺が脳幹(間脳、中脳、橋、延髄など)にまで進み、いわゆる”泥酔”、酔い潰れた状態になります。
さらに麻痺が進むと、”昏睡”状態になり、呼吸中枢が存在する延髄まで到達してしまうと、死に至ります。この時の血中アルコール濃度は0.3〜0.4%です。
また、日常的に「アルコール」を摂取することによって、中枢と抹消の神経に様々な合併症が起きてきます。
代表的なものとしては、
アルコール性ウェルニッケ脳症
アルコール性マルキアファバ・ビニャミ病
アルコール性橋中心髄鞘崩壊
アルコール認知症
慢性硬膜下血腫
アルコール性小脳萎縮症
アルコール性脊髄症(痙性対麻痺)
アルコール性末梢神経障害(ニューロパチー)
があります。
※詳細は省きます。興味があるものがあれば、調べてみてください。
・栄養素との関連
●亜鉛
「アルコール」を分解する”アルコールデヒドロゲナーゼ”を生成する大元の材料は、「亜鉛」です。
「亜鉛」は、ミネラルの一つであり、日本人が不足していると言われている栄養素の一つになります。
「亜鉛」は、性機能の必要であったり、テストステロンの生成にも関与するため筋肉をつけるために必要であったり、味覚を正常に感じるために必要であったりします。さらに、「亜鉛」不足はアトピーなどの皮膚疾患と相関関係があるとも言われているため、非常に重要な栄養素です。
「アルコール」を摂取することによって、本来そういった体の機能に使われるはずの「亜鉛」が、「アルコール」の分解酵素を作るために使われるため、必要な機能に回す分がなくなってしまうという状態になります。
ただでさえ、足りていない栄養素が、さらに足りなくなるといった状態になることは、体にとってよくないということは明白ですね。
●ナイアシン、ビタミンB 12、葉酸
これら3つに共通することとして、”セロトニン”の生成に必要な栄養素になります。”セロトニン”は幸せホルモンとも呼ばれるもので、幸福感などを感じる時に分泌されます。
「アルコール」によって、これらの栄養素が失われてしまうため、幸福感などを感じることができず、さらに、”セロトニン”は、睡眠ホルモンである”メラトニン”の前駆体でもあるため、不眠症につながり、やがて鬱や精神疾患などにつながる可能性もあります。
・疾患との関係
①脂肪肝
中性脂肪が大量に蓄積し、肝臓全体が大きくなった状態。
「アルコール」を飲み続けることにより、しっぼうの分解が抑えられてしまい、中性脂肪の材料である脂肪酸の合成が高まることで起こります。
脂肪肝になると、
②アルコール性肝炎
脂肪肝の状態が数年以上続き、大量の飲酒を続けていると、肝細胞が炎症して壊れてしまいます。
③高血圧
アルコールを長期間摂取し続けると、血圧が上昇し、高血圧を引き起こします。
高江血圧の状態が続くと、心疾患や脳血管疾患、動脈硬化などを引き起こす可能性が高くなります。
④慢性膵炎
大量の「アルコール」を摂取し続けると、膵臓の中の消化酵素が活性化され続け、やがて自分自身の膵臓を消化してしまう状態になります。
⑤アルコール依存症
これは有名な症状ですね。いわゆる「アルコール中毒」の状態。
「アルコール」にも依存性があります。
一度、依存症になってしまうとなかなか自分で「アルコール」を止めることができず、「アルコール」を摂取しないと、イライラして不眠になる精神的依存や、幻覚や手指の震えなどの身体的依存があります。
依存症になってしまうと、自力で治療は困難なため専門の病院や自助グループのサポートを受けながら治療を行う必要があります。
⑥急性アルコール中毒
これも度々問題になるものですね。
大量の「アルコール」を短時間に摂取すると、肝臓でアルコールの処理が追いつかず、血中アルコール濃度が急上昇し、嘔吐、低血圧、意識混濁、昏睡などの状態になり、最悪の場合、死に至ることもあります。
特に大学生などの飲み会などで行われる「イッキ飲み」は、この急性アルコール中毒を招くため、非常に危険な行為です。
⑦がん
「アルコール」にも発ガン性があることがWHO(世界保健機構)の外部組織であるIARC(国際がん研究機構)で証明されています。
口腔がん、肝臓がん、咽頭がん、大腸がんなどのリスクが、飲酒によって高まります。
⑧その他疾患
さらに、「アルコール」の摂取によって、肝硬変や食道静脈瘤、性腺機能障害、糖尿病、膵炎など、さまざまな疾患を引き起こす可能性が示唆されています。
これらの疾患を見れば「アルコール」が如何に体に悪いかがわかると思います。
◯「アルコール」の豆知識
・寝付くための「アルコール」摂取
よく「アルコール」を飲むことで、寝付きが良くなるという話を聞いたことがあると思います。実際にそう感じている人もいるでしょう。
確かに「アルコール」を寝る前に摂取することで眠気が出てきて、入眠はしやすくなります。
しかし、実は「アルコール」を飲んで寝ると、”中途覚醒”といって3〜4時間後に目が覚めてしまう現象が起こってしまいます。
また、目が覚めなかったとしても眠りが浅い状態になることがわかっているため、質の良い睡眠には繋がらず、結果として目覚めが悪かったり、疲労感が抜けていなかったり、昼間に眠気でボーッとしてしまったりと、体や脳にとってあまり良い状態ではなくなってしまうため、おすすめはしません。
・お酒に強い、弱い
一般的にお酒に強い人は「アルコール」の分解が速く、弱い人は分解が遅い人と考えられています。また、フラッシング反応がない人は強く、ある人は弱いとも考えられていますが、フラッシング反応がない人でも、すぐに酔ってしまう人とそうでない人がいます。
これは、脳の「アルコール」に対する感受性の違いによるものと言われています。
飲酒は飲み続けると、徐々に強くなると言われています。これは、「アルコール」の分解速度が速くなるということもありますが、一番の要因は脳の神経細胞が機能変化を起こし、感受性が下がること(専門用語では、このプロセスのことを”耐性の獲得”と呼んでいるそうです。)が挙げられています。
・悪酔い
よく言われる「悪酔い」につながる要因の一つとして、挙げられるのが「吸収過程」。
空腹時の飲酒や手術等で胃が切除された人などは、飲んだ「アルコール」が胃を素通りして小腸に入りやすくなります。
上記で説明した通り、胃よりも小腸の方が吸収が早いことから、「アルコール」の吸収が加速し、血中の「アルコール濃度」が上昇しやすくなります。
これが「悪酔い」につながる原因とされています。
そのため、「アルコール」を飲む際は、食事やおつまみと一緒にゆっくりと飲むことで、胃に留まる時間が長くなるため、吸収がゆっくりになり、血中の「アルコール濃度」の急上昇も抑えられるため、このような飲み方が推奨されています。
○結論
「アルコール」に関して、様々なことを書きました。
僕個人的な結論として、
「アルコール」の摂取はおすすめしない、飲まないに越したことはない。
ただし、飲まないことによってストレスを感じてしまう人や付き合いで飲む場合に
関しては、適量飲むことを心がける」
べきだと思います。
この記事を読んで少しでもお酒に関する知識が増えてくれたらいいなと思います。
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