見出し画像

生活屋さん

三ヶ月ほど前に中華せいろを買った。
ずっと欲しかったけれどそうしょっちゅう使うものでもないし、かさばって収納にも困るので何年も見送っていた。
そんななかで先日、ネットショッピング中に「あと1200円買えば600円の送料が無料になります」という状況に置かれて、そこのショップにあった1,400円の中華せいろをあっさり買った。
私は愚かな人間なのでこういうことがままあります。

中華せいろが届いてすぐ、肉まんを作った。
使い方をよく読んでからさっそく鍋の上に置いて蒸してみると、湯気に乗ってびっくりするほど竹の匂いが溢れ出した。その時点で既にかなりの幸福が始まっていた。
竹の香りは明らかに食べ物の「美味しそう」とは異なるものなのに、せいろの中に入っている食べ物に特別美味しくなるおまじないをかけられているみたいで、食へのモチベーションというか愛着のようなものがむくむく膨れ上がるのを感じた。
中華せいろで蒸した肉まんは、控えめにいって最高だった。
まず中華せいろの見た目がだいぶいいし、電子レンジを使ったときよりも仕上がりは美しく、その柔らかさはなにものにも代えがたい。
蓋を開けたときの、たった今生まれたてですみたいな感じもキュンとくる。
何より本当に、本当に美味しいです。

私は食へのモチベーションというか、「納得して食べたい」という気持ちが強い。
料理が好きということも勿論あるのだけど、それ以上に食材に対する最低限の理解を示したいという気持ちがある。
中華せいろはそれをシンプルに手軽に叶えてくれる。
味付けや火の通し方などで悩んだときはまず蒸してしまえば、その食材の良さがダイレクトに伝わってくる。


中華せいろは殆ど毎日のように使っている。
主に野菜を蒸すのに重宝している。
最近だと蓮根、カボチャ、春菊、エノキあたりをよく入れる。肉はブロック豚か鶏団子が多い。
世の中には電子レンジで簡単にできるシリコンスチーマーやタッパーもあるけれど、中華せいろは特別美味しく感じる。
熱が満遍なく行き渡るので、あらゆる具材をたっぷり入れても問題ない。
冬は乾燥しがちなので家の中に上質な蒸気が立ち込めるのも良い。
何度蓋を開けても多幸感は薄れることを知らない。良い布団で眠るときと同じだ。
野菜を切って、せいろにどさどさ詰めて10〜20分ほど蒸すだけでできるので手軽だしかなり美味しい。
たれのお気に入りは白練りごまにポン酢を混ぜたものか、旭ポン酢。
旭ポン酢は以前関西に住んでいる友人がくれてから我が家のレギュラーメンバーなんですけどガチうまいからぜひ食べてほしい。
あとたまにお手製の醤油麴も使います。口当たりがまろやかでカボチャやお肉とよく合います。

中華せいろを使っていると、自愛という言葉が浮かぶ。
ご自愛ください、などとよく手紙の文末で見かけるその言葉は、自分を大切に・労って、という心が込められている。
中華せいろで蒸したものを食べていると、私は私をとても大切にしているように感じる。
竹の香りを纏った野菜をたちは、ひと口ごとに栄養が染み込んでいくのがよくわかる。
食べ終えた後、洗剤のついていないまっさらなたわしでこすり洗いをして、丁寧に乾かす作業も大事にしている感じがしてすごくいい。


三か月ほど経っても飽きるどころか食べる度に感動しているので、次はもう一回り大きいせいろを買いたいと思います。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集