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やついフェス

やついフェスを配信で観た。スカートは相変わらず爽やかで、胸がざわざわする良い曲と歌だった。自分もあんなふうにギターを鳴らしてみたい。それで音から想起する物語や絵を形にしてみたい。物語や世界を描くなら文章を書くより歌った方が早いし、音楽の方が圧倒的に情報量が多いんじゃないだろうか。LEDと太陽の光、画素数で言ったらデジカメとフィルムカメラくらい違うはずだ。

別の配信場所へ移動すると、やついさんとしりあがり寿さん、スチャダラBOSEくん、ナイロン100℃のケラさんが、私が敬愛し、とても影響を受けた作家の宮沢章夫さんについてトークしていた。
そしてやついさんが、宮沢さんの奥様に聞いたという話がとても興味深く面白かったので、書き記しておこうと思う。

宮沢章夫さんの洗礼名はパウロという。
宮沢さんはキリスト教式のお葬式がしたかったらしい。
キリスト教でお葬式をするには、生きている間に洗礼をしないといけないそうだ。
そこで、いよいよ宮沢さんの旅立ちが近いとなった際に、宮沢さんの奥さんが神父さんを病室へ連れて行き洗礼を行うことになった。
医師は患者が亡くなる前から立ち会っている時は、遺族が認めていなければ検死はできず、死んでいないことになるらしい(このあたりの話は流れが早く、詳しいことがわからなかった。真偽不明)。
そのため、なんとか洗礼が終わるまではと、奥さんはギリギリまで粘っていたらしい。それで医師に「もういいですか?」と聞かれながらも粛々と儀式を進めた。やがてペットボトルに入った聖水を宮沢さんにかけるという過程で、緊張して焦っていた奥さんは、勢い余って宮沢さんの顔に水を豪快にかけてしまったらしい。奥さんは「あたし、バシャッてやっちゃったのよ〜」とやついさんに言っていたそうだ。
それでも、どうにか洗礼を済ませ、パウロという名前をいただいたという。
これで話は終わった。
悲しいお別れの場面なのに、そこはかとなくおもしろいことが起きてしまっているところが、宮沢さんの書く作品そのまんまだと思った。それは意図して起きるというよりも、空気中の水分がにじむような、西向きの部屋に夕陽が差し込んでくるような自然さ。
そして、そんな「プレ死」の時間があるとは知らなかった。よくある臨死体験と言われる話は、そういう時に起きるのではないかと思う。
しかも、生前の宮沢さんなら「冷たい!」といいながらがばっと起き上がりそうな気もする。
そして、こういう話をすでに書いていそうだなと思ったし、少しうらやましさも感じた。自身が亡くなる際にあった出来事が、宮沢さんの生前の魅力と一致し、作品でやりたかったこととリンクしているなんて、完璧に仕上がっている生だったのではないかと思う。
自分は、こんな風に、やりたいことを全部やりきってから行けるんだろうか?

余談ではあるが、自分はあちらの世界に「あの世ロックフェス」があると思っている。あらゆる歌手やバンド、ミュージシャンがいて、音楽をやったりトークやってたり、自主制作関連のエリアもあって、そこに行けば「みんなの臨死体験ZINE」とか読めると思ってる。生きてるうちは明かされないけど、いつかそのうち行ったらわかるんだろうと思って、なんとなく楽しみにしている。

なので、自分が死ぬことについてはあまり怖いものではない。
かといって進んで行きたいわけでもなく、そのうちわかるんじゃないか〜?くらいなゆるい感じ。そして、めちゃめちゃしんどくても、焦って自分から行くことはないよな、と自制にも使っている。フェスがあるとなかなか楽しくやっていけるのではと思う。

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八ツ波乱視
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