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麻衣
2020年4月5日 00:15
玄関を開けると、母がランタンを持って佇んでいた。初夏の匂いがする。この匂い、東京では決して嗅ぎえない。だから、正確には初夏の地元の匂い。母のそばに駆け寄り、歩く。時々たわいもない言葉を交わす。黙ることもある。 空。やっぱり地元の空は一味違う。青と紫を溶かしたような色。西の空にはまだ明るさが尾を引いている。東の地平線近くは闇が迫っている。巨大な雲が、その隙間から模様を描いて
2019年3月8日 04:29
父とお風呂に入れなくなったのは、小学校高学年の時。理由は父が嫌だったからではない。膨らんできた胸が惨めでどうしようもなかったからだ。子供のわたしから見た時、大人の体はとってもグロテスクだった。だから大人は自分とは別の生き物に見えたし、自分が将来あの体になるなんて信じられなかった。だけど、体の成長は容赦なくわたしを襲ってきた。そう、襲ってくるという感覚に近かった。わたしは自身の体の変化