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旅の終わりの魯肉飯|台湾2019 #3(完結)

5年ぶり2回目

日星鋳字行 活字探し

街中のローカルファストフード的な胡椒餅の亜流のような食事。「薄い生地に野菜やら肉やらが包まれて揚げられたもの」を買い、近くの公園(=前日に訪れた当代芸術館の庭)でぱくつく。ジャンクな味がしてなかなか美味しい。

そして午前中のメイン「日星鋳字行」へ。大通りから路地に少し入ったところにあり、見た目は下町の工場(こうば)そのもの。ここは台湾に残る数少ない「活字屋」。今ではほとんど目にする機会の無い活版印刷の店だ。活字をスタンプにして販売しているお店で、日本人向け?にひらがなカタカナも取り揃えている。

朝一番で行ったが、店にはすでに数組のお客さんが。受付を済ませると、後は店内の活字から、自分が使いたい文字を探していく。アルファベットならともかく、漢字は無数にある上、楷書と行書とあるため、その数は計り知れない。そんな中から文字を一つずつ拾っていく作業は、宝探しのようで面白い。

・・・が、ものの見事に見つからない。

店内の文字が何らかの規則性に基づいて並んでいるのだが、それが分からない。はじめは部首かと思ったが、どうやら読み方のようなので、これは台湾の言葉が分からないとお手上げだ。

ということで、結局若い店員さんにお願いして探してもらうことに。せっかくの漢字圏なのだ、本名の文字を頼んだが、どうやら該当する字が無いらしい。そのためひらがなで「ぴよまろ」で依頼する。ひらがなでも、日本語堪能な店員さんは、ものの数分で探し出してくれた。

活字をスタンプ上にセットしてもらい、可愛らしい巾着に入れてお土産に。こうした古い文化を現代風にアレンジして、ここでしか出来ない経験をさせてくれるのは、大変素晴らしい。

十分 さだめ

台湾ではお馴染みの観光地である九份に向かう。とその前に、ランタン飛ばしで有名な十分へ。台北から瑞芳(ルイファン)でローカル線に乗る道のりだ。

台北駅で瑞芳行きの電車に乗る際、改札に入るとちょうど電車が入るところだったので、思わずダッシュで乗り込む。電車には乗れるときに乗れ、が、無駄に移動を重ねてできた旅の経験だ。友人には若干ひかれた上、瑞芳での乗り換えで結局1時間待つことになったが。

十分は、渓谷にある小さな地域で、ランタンを大量に飛ばす旧正月のイベントが有名だ。ただ旧正月でなくとも、ランタン飛ばしはいつでも体験できる。

十分駅を降りてすぐ、ローカル感のある商店がびっしりと立ち並ぶ。線路を挟んで両脇に立ち並ぶ商店の前の道に、観光客でごった返していた。店の軒先には、謎のお菓子やら食べ物が並ぶ中、ショーケースに入れられた寿司もある。この山間部で、野晒しで、寿司。。。疑問は尽きない。

メインであるランタン飛ばしは、そこらで呼び込みがされている。もはやどれがいいとかの区別はできないので、小柄で元気のいい男性に申し込みをする。すると男性はランタンを飛ばす前に文字を書けという。ようは、願いを書いて飛ばすという儀式?のようだ。

友人とともに、あれやこれやウケ狙いの文言を書き終わると、いよいよ飛ばす段になった。男性に導かれ、線路の真ん中にランタンを持って立たされる。この線路は先ほど乗ってきた鉄道が走ってきた線路だが、そこらで飛ばせるというのも一つのウリかもしれない。

男性がライターで火をつけ、熱気で膨らんだランタンを抱えて記念撮影、周囲でも他の観光客たちが次々と飛ばしているのをみながら、僕らのランタンもカウントダウンとともに上空へ。

僕らのランタンは、他のランタンと群れをなすことなく、一つだけあらぬ方向へ。

男性「バイバーイ」

どうも僕らは群れないさだめのようだ。

九份 茶はうまいが。

再び瑞芳まで戻り、路線バスに乗り換え、九份へと向かう。千と千尋の神隠しの舞台となった、と噂され、ジブリ的にはそうではないと否定され、結局よく分からなくなっているものの、日本人的には台湾といったらココという位、有名な場所だ。

山間にへばり付くように作られた街で、ぐるりと一周して1、2時間。観て回るだけでもそこそこ楽しい場所であることは間違いない。

そんな有名な九份のメインスポットが、「阿妹茶酒館」という茶芸館だ。件の千と千尋の湯屋に似ているとかなんとかの建物である。以前も訪れたことはあるが、あらためてここで茶をいただく。やはり台湾茶は美味しい。ただ超有名観光地である分、少し騒がしく、前日にガチ目の茶芸館に行っていたので、どうしてもそこと比べてしまう。

夕暮れ刻になり、提灯が灯されてくるころ、九份を後にして台北へと戻る。台北までの直通バスを待っていたが、すでに満員で乗る術はない。

これは困ったと思っていると、瑞芳行きのローカルバスが到着する。誰も乗る様子がなく、若干不安にはなったが、瑞芳にさえ出られればどうとでもなる、と乗り込んだ。台北行きのバスは満員だったのに、瑞芳行きは、地元の人らしきおばちゃんと、バックパッカーらしい白人男性。不安になるメンツだ。

バスは山の下り道だというのにスピードを緩めることなく、猛スピードで山を下っていく。いろは坂でもこんなことはしない。道中、何やら書き物をしたい白人男性が、ペンが無いらしいので、カバンに入っていたボールペンを貸して差し上げた。満面の笑みでOh, Thank you.と返されるのは気持ちがいい。

ただ、この猛スピードの車内で、よくモノを書きたいと思ったな。

旅の終わりの魯肉飯

来た時と同じ路線で、無事に台北に到着。あたりはすでに夜。翌日は朝には帰国予定なので、実質最後のアクションである。ここまで、コンビニ飯だ、街中のローカルファストフードだという、手間も時間もかけない食事をしてきたので、最後くらいはちゃんとした食事をしたいところ。(特に海外初めての友人にとって。)

と、友人が調べていた、魯肉飯(ルーローハン)が美味しい店があるという。超ローカルな店ながら、長い行列の多い人気店らしい。

その店は、街の明かりもほとんどない路地裏にあった。暗闇の中で、その店だけが明るく、遠目でも行列が見えた。店の名前は「今大魯肉飯」、地元の人たちが原付で乗り付けて食事をしているような店だった。

とりあえず列に並ぶも、どうも口頭で注文をしているらしい。いかな台湾とはいえ、この路地裏の店で言葉が通じるかどうかは分からない。そこで手元にあった紙に注文を書いて店員に渡す。すると店員は分かったというように、手際よく食事を用意して席へと案内してくれた。小ぶりな茶碗に盛り付けられた魯肉飯だ。

・・・めちゃ美味。

トロットロになるまで煮込まれた肉と、濃い目の味付けが、ご飯によく合う。そして、僕の苦手な八角も入っていない。旅先では時間優先で食事に時間をかけない僕だが、これは是非ともリピートしたくなる味。台湾の路地裏、あなどれない。

一夜明け、翌朝、早々にチェックアウトを済ませ、空港へと向かう。空港でほとんど店が空いていない中、唯一空いていたラーメンで朝食を食べる。決してまずいわけじゃないが、もはやなんだか物足りなかった。

あぁ、魯肉飯、美味しかったな。

次はダッシュしないでゆっくりと食事に時間をかけようか。(フラグ)

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