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とびら開けて

ねえ、ちょっとおかしなこと言ってもいい?

というのはディズニー映画「アナと雪の女王」の序盤でアナとハンスが歌う「とびら開けて」という曲の歌い出しの歌詞だ。しっかり覚えている。何回も聴かされたから。

アナ雪はうちの娘たちが大好きなディズニー作品である。
そして先日ディズニーシーで新しくオープンした「ファンタジースプリングス」にはそのアナ雪のエリアがあるらしい。

アレンデールに行けると聞けばさすがに出不精の娘たちも飛びつくことだろう。そう思って誘ってみたのだけど…まだいいと断られた。

まだいい、ってどういう意味だ。

ひらパーとUSJには行くけどディズニーリゾートはまだ早いらしい。夢の国をどんな大人向けの国だと思ってるんだろうか。プリンセスや王子様を侍らせてお酒を飲む場所とかじゃないよ?

二人ともアナ雪やアラジンのDVDを何十回と観ていたので興味はあるはずなのだけど、一周回って間違ったイメージを持ってしまったのかもしれない。

うちの娘達は一度何かの作品を気にいるとそれを何度も何度も連続で見るという恐ろしい習性を持っている。同じ映画を3日連続で観たり、ひどい時はエンディングを観た直後にまた平気な顔をして最初から観始めたりする。

まあ楽しみ方は人それぞれ。別に繰り返し観たいなら観れば良い。そう思って好きにさせたのが良くなかった。
当時DVDを観ることができたのはリビングのテレビのみ。そんな家族が集まる場所で昼食の時もおやつの時間も夕食の時も同じ映画を繰り返し見せられる日々が始まってしまったのだ。

地獄のアナ雪マラソンである。

何回も観ているうちに当然ストーリーも覚えてしまい…パパママお願いだからもう船に乗らないで!アナ、何回同じ男に騙されてるの!ああまたエルサが氷の城を建てては壊している。お前ら何回同じことを繰り返してるんだちゃんと話し合え言葉が足りんこうなったら私が行って解決するしかない…とだんだん現実とアレンデールの区別も曖昧になっていく。

この地獄のマラソンはアナ雪だけにとどまらず、「アラジン」や「塔の上のラプンツェル」でも開催された。


それだけ何回も観た作品というのは大抵の場合うんざりしてあと10年は観なくていい、という気持ちになる。
しかし作品によってはこの狂気のマラソンがある種のランナーズハイ(走ってないけど)ともいうべき興奮をもたらすのか、そこにあることも知らなかった新たな扉が開いて、ただならぬ愛着が湧いてしまう場合がある。

私の場合それが「塔の上のラプンツェル」マラソンで起こった。

アナ雪と同じく塔の上のラプンツェルも目を閉じれば頭の中で最初から最後までシーンを再現でき、歌も全部歌えるくらい観た。

ところがこの作品に限ってはマラソンが終わってもイヤになっていないのである。それどころかまだ観たい、ずっと観ていたいという気持ちが湧いてくる。

何が私を惹きつけるのか?ラプンツェルと他の作品の何が違うのか?しばらく考えてハッ!と気がついた。
他のプリンセスは靴を履いている。だがラプンツェルは…裸足だ。

私はラプンツェルが裸足だから好きなのか?裸足フェチだったのか?普段は靴や靴下で隠されている足が見えてしまっているという状況に興奮を覚える性質だったのか?

自覚はなかったがもしそうだとしたら、なんと人に話しにくい性質だろうか。
「ねえ、ちょっとおかしなこと言ってもいい?わたし裸足フェチみたいなの!」とアナのモノマネをして陽気に伝える私。妻が「ヒッ」と慌てて足を隠す場面が目に浮かぶ。

いや3作品を比較しただけで裸足フェチだと決めるのは早計である。他の好きなディズニー作品と比較すればまた別の、もう少しおおっぴらに話しやすい共通点が見つかるはず。
たとえばちょっと前の作品で言えば「眠りの森の美女」は割と好きだったのだけど…と調べたらオーロラ姫もばっちり裸足キャラだった。もうダメだ。

後はお前が認めれば済む話だぞ、と言わんばかりに裸足フェチの証拠が出てきそうでこれ以上調べるのが怖い。「眠りの森の美女」を観たのなんて小学生くらいの時だろうにその頃からフェチの扉が開いていたのかと思うとそれも怖い。


しかし落ち着いて考えてみると、「裸足フェチ」という言葉のインパクトが強すぎて条件反射で「ち、ちがいますよ!」という気持ちになっていたが自分の新たなフェチが見つかったというのはもしかして喜ぶべきことなのかもしれない。

それはつまり今まで美味しいと思っていなかった食べ物が実はとても美味しいということに気づいたのと同じであり、新たな好物として受け入れてこれから積極的に楽しんでいけば良いのでは…良いのか?

分からないがそれはそれとしてこんな話ばかりしていたらラプンツェルさんに「お前私の足しか見てなかったわけ?」とフライパンで殴られそうなのでこの話はここまでにしておこうと思う。

今さらだがディズニー作品を語るエッセイというのはもっとこう…なんていうか…爽やかな内容であるべきだった。



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