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ゲームソフトの工数見積り②ナルト編

ゲームソフトの開発を行う際には必ず工数見積りを行います。そのプロジェクト自体の達成目標に見合った予算を設定するために不可欠な作業です。

サイバーコネクトツーが企画提案することによってプロジェクトが立ち上がったとしても、全ては発注を行うパブリッシャー側の判断で「高すぎる」と判断されたら契約締結とはなりません。

お互いが「これくらいの予算とスケジュールでこれくらいの売上目標を達成させましょう!」と同意の上で業務委託契約を締結します。

前回に続いて今回も【工数見積り】の話です。

具体的に説明するために今回は『NARUTO-ナルト- 疾風伝 ナルティメットストーム4』をベースにお話ししていきましょう。

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『ナルティメットストーム4』の工数見積り

ここで全体工数の話をしてしまうとウチとバンダイナムコエンターテインメントとの契約書の内容がわかってしまうし、それこそ機密保持契約違反になってしまいますのであくまで部分的な話に留めますね。

『ストーム4』は当初はPlaystation3ベースで開発を開始しましたが、途中からPlaystation4ベースの開発に切り替えたプロジェクトです。

これは世の中のPlaystation4の普及率の速さ&浸透度を見た上で、ウチからバンダイナムコエンターテインメントに提案をしました。

「今までのPlaystation3ベースでは出来ない事がPlaystation4ベースで再設計すると新しい体験が出来るようになることを伝えた上で、その凄さを実際に作ることで直接確認してもらった上で承認を取る」

こういった作戦を立てました。

時間はかかってしまいましたがおよそ半年間(実際には8か月)でPlaystation4ベースの新しいビルドを制作して「初代火影VSうちはマダラ戦」のボスバトルと、対戦モードにおける「スイッチ切り替えによる3VS3バトル」をプレゼンしました。

「初代火影VSうちはマダラ戦」のボスバトルではPlaystation4ならではのスケール感の大きい地形変化も含めた新体験を提案し。

対戦モードにおける「スイッチ切り替えによる3VS3バトル」ではそれまでのメモリでは不可能だった3人一組(スリーマンセル)によるバトルの新体験を提案しました。

結果、その提案は承認され新たに契約書を更新して改めてPlaystation4ベースのゲームソフトとしての開発がスタートしたのでした。

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『ナルティメット』シリーズ(というかウチで作るゲームソフトの多く)は基本的に【3つの柱=商品力】で構成されることが多いです。

『ナルティメット』シリーズ【3つの柱=商品力】
①濃厚な超アニメ演出によるストーリーモード(ドラマ体験)
②ひとりでも多くのプレイアブルキャラクター(VSバトル)
③長く遊べるオンライン対戦モード

これは私自身も含めて弊社スタッフの多くが「こういうゲームソフトが欲しい」という、ある種の理想をカタチにしています。

ストーリーモードだけじゃイヤ、対戦モードだけだと駄目、長く遊べないと売れない、こうした理由から(古くはPlaystation2の時代から・オンラインはPlaystation3から)守り続けている【3つの柱】です。

ストーリーモードやオンライン対戦モードについても語り始めると膨大なエピソードや考え方が出てきてしまうのですが、今回は②の『VSバトル』について掘り下げていきたいと思います。

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『ストーム4』のプレイアブルキャラクターの制作工数
①モデル:3人月
②テクスチャー:1人月
③モーション:4人月
④スキル(エフェクト含む):3人月
⑤奥義(覚醒):3人月
合計=14人月

『ストーム4』に登場するプレイアブルキャラクターをゼロから作ろうとすると、1体当たりおよそ14人月かかります。

またこの工数見積りにはプログラムの実装工数やサウンド・デバッグ工数などは含まれていません。あくまでグラフィック作業としての見積もりです。

そして『ストーム4』にはおよそ120体ものプレイアブルキャラクターが実装されていますので、単純計算だけでも以下のような予算が算出されます。

1体=14人月×85万円(人月単価)×120体制作=およそ14億円!

はい、とてもじゃないですが完全に予算オーバーです。

これグラフィック制作だけの予算ですからね?

こんな費用を投じられるはずがありません。

なので、ここから全体的に【作り込みレベル】を精査して分けます。

要はキャラクターによって重要度を設定して、ゼロからフルスクラッチで完全に新しく制作するキャラクターと、少しだけ要素を追加して調整するというキャラクターをランク付けするということです。

この辺はシリーズとして長く展開してきた『ナルティメット』シリーズの利点かもしれません。

ざっくり分けるとこんなイメージです。

『ストーム4』における【作り込みレベル】定義一覧
【Sランク】=完全にゼロからフルスクラッチ
【Aランク】=新術・奥義・モーション・モデルを一部追加変更
【Bランク】=奥義のみ・モーションなどを一部追加変更
【Cランク】=基本的にパラメーター調整デバッグのみ

これを実際にキャラクターに当てはめるとこのようになります。

『ストーム4』における【作り込みレベル】ランク一覧
【Sランク】=ナルト・サスケ・オビト・マダラ・カグヤ
【Aランク】=五影・ガイ・生前人柱力・先代火影
【Bランク】=先代五影・再不斬・白
【Cランク】=木ノ葉の忍・少年篇・他

ナルトなどはずっとシリーズに登場していてモデルはすでに存在すると思われがちですが、そこはやはり主人公ですので「六道仙人モード」などがストーリー展開上登場していますので完全にゼロから作り直すことになります。

サスケも同様に「輪廻写輪眼」や「完成体 須佐能乎」などの新規要素を網羅した新キャラとして制作を行うことになります。

こうしたランク付けを行い作り込みレベルを分けることで工数を分散化して全体の予算圧縮を図ることになるのです。

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さてここからは更に「キャラクターゲームならではの不公平要素」についてお話していきます。

キャラクターゲームの多くは漫画原作やアニメなどの作品が先行して存在しているがゆえに、すでに一定数のファンが存在しそれぞれのキャラクターに対するイメージ=先入観が生まれてしまっています。

それらを飲み込んだ上で一本のゲームソフトとしてのまとまりをどうやって作っていくかという考え方の話です。

もちろん開発工数を大きく左右する話です。

それでは張り切っていきましょう!

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キャラクターゲームならではの不公平要素

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