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ゲームソフトの工数見積り①基本編

ゲームソフトの開発を行う時には『工数見積り』という考え方で、開発着手時に「全体でいくらのお金がかかるのか」という計算を行います。

企画書にある内容をさらに分解して仕様書に落とし込んでそれをさらに細かくバラしていって工数を算出するのです。

開発スタッフひとりを雇うのにいくらかかるのかは会社によって異なりますし、まさにバラバラですが要するに【工数×人月単価=全体の開発費】という考え方そのものは変わりません。

例えば工数が10人月だった場合に、人月単価が85万円だとすると全体で850万円かかるという計算になります。

100人月だと8,500万円、1,000人月だと8億5千万円ということです。

今回はこの【工数見積り】の話です。

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15年前の工数見積り
『.hack』編

今から15年~10年前を振り返って考えるとなるとギリギリPlaystation2からPlaystation3くらいの感覚でしょうか。

例えば今までウチが手掛けてきたゲームソフト『.hack』や『NARUTO-ナルト- ナルティメットストーム』で考えていきましょう。

『.hack』はPlaystation2で開発を行っていましたのでハードのスペック的にもそんなに多くのポリゴン数を使用することが出来ませんでした。

ハセヲ(『.hack//G.U.』の主人公)【HIGHモデルの場合】
①モデル:ポリゴン数=5000
②テクスチャー:256×512・512×512・128×512・256×256(4枚*256色)
③モーション:物語のカットシーンで増減
④スキル(エフェクト含む):物語のカットシーンで増減
⑤奥義(覚醒):1

【HIGHモデル】というのはゲーム中の必殺技や物語のカットシーン専用のいわゆる“魅せる”ためのモデルです。主に顔や指やバストアップを中心に細かくポリゴンが割かれていたり、動かすためのボーン(骨)や関節が細かく設定されています。

しかしこれはあくまで“魅せる”用のモデルなので通常のゲーム中のモデルではありません。

歩き・走り・待機・バトルなどのゲーム中に実際にプレイヤーが動かすモデルはもっと少ないポリゴン数で構成されています。

それらをウチでは【LOWモデル】と呼んでいました。

実際にPlaystation2でプレイヤーの皆さんがコントローラーを握って操作していたキャラクターのポリゴンモデルは以下のようなスペックで作られています。

ハセヲ(『.hack//G.U.』の主人公)【LOWモデルの場合】
①モデル:ポリゴン数=2500
②テクスチャー:256×512(1枚*256色)
③モーション:通常=30+バトル=60
④スキル(エフェクト含む):9
⑤奥義(覚醒):HIGHモデルに含む

ポリゴン数を見比べればわかる通り、ざっくりHIGHモデルの半分以下で作られていることがわかります。

『.hack//G.U.』はRPGですので通常の操作では画面が俯瞰の見下ろし視点か、後ろからカメラが追従するスタイルが多いので基本的なプレイ中は全てLOWモデルで操作をして、奥義(覚醒)などの必殺技の演出の際に切り替えて描画するというシステムで動いていました。

(あまり細かい説明をしてしまうと専門的になりすぎてみんなが理解できない記事になってしまうので、あくまでざっくりとした説明で続けさせていただきます)

【HIGHモデル】と【LOWモデル】に分かれているとはいえ、あくまでハセヲというキャラクターを構成する要素なので、工数を出すときはこれらを合算して算出します。

まとめるとこうなります。

ハセヲ(『.hack//G.U.』の主人公)【HIGH+LOWモデル】制作工数
①モデル:2人月
②テクスチャー:1人月
③モーション:2人月
④スキル(エフェクト含む):1人月
⑤奥義(覚醒):1人月
合計=7人月

厳密に出すと本当は1.2~1.5人月などの小数点が出てくるのでですが、やっぱり細かくなりすぎるとわかりにくくなるのでざっくりと算出してあります。

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10年前の工数見積り
『NARUTO-ナルト-』編

さて、それでは次にPlaystation3の『NARUTO-ナルト- ナルティメットストーム』の場合を見ていきましょう。

もちろんPlaystation2の時代から考えると格段に使用できるポリゴン数や関節数などは増えましたし、シェーダー(質感設定)なども使用できるようになりましたので一気にやれることは増えています。

また『.hack//G.U.』のようなRPGと『ナルティメット』のような対戦アクションゲームでは単純な比較は出来ませんが、今回は同じ「操作してアクションさせるキャラクターモデル」ということでざっくりと比較していきます。

ナルト【HIGHモデルの場合】
①モデル:ポリゴン数=15000
②テクスチャー:1024×1024(4枚*フルカラー)
③モーション:物語のカットシーンで増減
④スキル(エフェクト含む):物語のカットシーンで増減
⑤奥義(覚醒):1

HIGHモデルとはいえ使用できるポリゴン数が一気に増えました。(記述はしませんが関節数やフェイシャル設定用のボーン数も格段に増えています)

またテクスチャーも減色された256色ではなくフルカラーが使用できるようになりました。

ナルト【LOWモデルの場合】
①モデル:ポリゴン数=5000
②テクスチャー:1024×1024(1枚*フルカラー)
③モーション:80
④スキル(エフェクト含む):7
⑤奥義(覚醒):HIGHモデルに含む

LOWモデルのポリゴン数がPlaystation2時代のHIGHモデルと同等という部分にハードの進化がうかがえますね。

さて、これらを工数に落とし込むとこのようになります。

ナルト【HIGH+LOWモデル】制作工数
①モデル:2人月
②テクスチャー:1人月
③モーション:3人月
④スキル(エフェクト含む):2人月
⑤奥義(覚醒):2人月
合計=10人月

キャラクター1体あたりの工数が10人月と増加しています。

(実際にはこの10人月という数字は「作るだけの工数」なので、パラメーター調整だったりバランス&デバッグは一切計上していませんし、プログラマーの実装工数もサウンド工数も含まれていません)

また今回の算出はあくまでざっくりなので厳密にはキャラクターによってとんでもなく増減することがあるということをここでお伝えしておきます。

例えば、ナルトも【九尾覚醒モード】を実装することになるとその工数は単純に倍になります。サスケの状態2だって同様です。チヨ婆やサソリのように人形傀儡を使用するキャラクターはもっと工数が増加します。

本当にキャラクターによって制作コストはバラバラで単純に平均化することは困難ですが、工数見積もりのためにあえて算出するとなるとだいたいこの時代で1体のキャラクターを制作するコストは15~25人月くらいだと思ってください。

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さて、そして更に時は流れて現在はPlaystation4の時代です。(これからPlaystation5が登場してまた更に時代は進みますが)

現在の制作工数はいったいどういった感じなのでしょう?

この5年くらいに開発したゲームタイトルを平均化して算出してみました。

あまり具体的に書くと怒られるのでフワっとした表現にしますが、実例がないとわからないと思うので開発中のタイトルを例に紹介します。

ということでここから後半部分に突入してしまいますが、ご理解いただければと思います。

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現在の工数見積り『????』編

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