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ゲームソフトの工数見積り③ジョジョ編

今回は先に具体的なタイトルについてお話しした上でゲーム業界が抱える問題点について言及する流れでいこうと思います。

ということで早速行きましょう。

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『ジョジョの奇妙な冒険』の工数見積り

過去にサイバーコネクトツーが開発を手掛けてきた『ジョジョの奇妙な冒険』のゲームソフトは以下の二作品です。

『オールスターバトル』は1対1の対戦格闘アクションゲーム。『アイズオブヘブン』は2対2の対戦アクションゲームでした。

どちらのタイトルも第一部から第八部までの原作のキャラクターが一堂に会して対戦することが出来るというゲームソフトです。

一口に「色んなキャラクターで遊べる」と言っても、実際にゲーム開発における工数見積もりを行うとキャラクターによってその工数が全然異なるということがわかってきます。

例えば原作の第一部&第二部は『波紋使い』が登場し、第三部以降から第八部の登場人物はみんな『スタンド使い』となります。

これがどういうことかわかりますか?

順番にいきましょう。

第一部&第二部に登場するキャラクターはジョナサンもディオもスピードワゴンもジョセフ・シーザー・リサリサ・ワムウ・エシディシ・カーズも基本的に本人だけが闘います。(実際にはカーズには究極生命体モードがあるので同じではありませんが)

要するにキャラクターのモデルを1体作ってしまえばあとはモーションやエフェクトを組んで動かすだけで闘えるようになるのです。

工数に当てはめるとおよそこんな感じです。

『ジョジョ』第一部&第二部のプレイアブルキャラクターの制作工数
①モデル:3人月
②テクスチャー:1人月
③モーション:4人月
④スキル(エフェクト含む):3人月
⑤奥義(覚醒):3人月
合計=14人月

ほぼ『NARUTO-ナルト-』の時と変わりません。およそ1体が14人月くらいです。

しかし、第三部以降のキャラクターには必ず本体とは別にスタンドという存在があります。

なので実質2体分の工数が発生するということなのです。

『ジョジョ』第三部~第八部のプレイアブルキャラクターの制作工数
①モデル:3人月(本体)+3人月(スタンド)
②テクスチャー:1人月(本体)+1か月(スタンド)
③モーション:3人月(本体)+3人月(スタンド)
④スキル(エフェクト含む):3人月
⑤奥義(覚醒):3人月
合計=20人月

スタンド使いは実質2体分の制作作業となるため工数が増加します。

モーションが4人月から3人月に減少しているのは結局のところ2体の本体&スタンドを1体のキャラクターと操作することになるのでそれぞれは若干だけ減少しますが合算すると結局のところ4人月から6人月と増加していることがわかります。

またスキルや奥義などは同じく1体のキャラクターとして制作されますので基本的に増加することはありません。

しかしこれらに加えて更に【例外的なキャラクター】がいることを忘れてはいけません。

承太郎や花京院・ポルナレフ・仗助・億泰・ブチャラティ・ナランチャ・徐倫・エルメェス・ウェザー・アナスイなどはみんなスタンダードなスタンド使いなのでみんな上記の工数に当てはめることが出来るのですが、「そうじゃあないキャラクター」が存在するのです。

それは康一(エコーズACT1~3)・ジョルノ(レクイエム)・プッチ神父(メイド・イン・ヘブン)・などの作中で大きく進化&成長が描かれたキャラクター達です。

通常のゲームソフトであればエコーズACT3だけを使用できる康一くんなどを設計するのですが、それはウチの制作ポリシーに反する考え方です。

「そのキャラクターの全ての要素を楽しめる」

このポリシーを守るという制作を行ったがゆえに工数見積りはとんでもないことになりました。

そしてこうした原作再現を至高としたポリシーにより最も設計自体を破綻させることになったのがこのキャラクターです。

第七部に登場したジョニィ・ジョースター!

ある意味、彼は工数見積りにおけるワーストケースとも言えます。

ジョニィ本体に加えてスタンドがACT1~4まで進化する上に、馬(スロー・ダンサー)までを含めてひとりのキャラクターとなるのです。

実にジョナサン5人分以上の情報&要素を持っているというとんでもなく高カロリーなキャラクターなのです。

工数見積もりを出すとこうなります。

『ジョジョ』ジョニィのプレイアブルキャラクターの制作工数
①モデル:3人月(本体)+3人月(馬)+10人月(スタンドACT1~4)
②テクスチャー:1人月(本体)+1人月(馬)+3か月(スタンド)
③モーション:3人月(本体)+3人月(馬)+4人月(スタンド)
④スキル(エフェクト含む):3人月
⑤奥義(覚醒):3人月
合計=37人月

37人月ですよ?第一部&第二部のキャラクターは1体14人月なのに!?とても1本のゲームソフトの中でフェアに闘うゲームキャラとは思えないほどの不公平な工数見積りです。

しかし作品をゲームで表現するということはキャラクターを表現するということなのです。

第七部のジョニィやジャイロが存在しないゲームソフトは『オールスター』とは言えませんからね。

こうした制作上の工数見積りの段階から多くの不公平や矛盾を抱えながらゲーム開発はスタートさせたのでした。

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何度も言いますが上記で説明したような14人月・20人月・37人月というのはあくまでグラフィックリソースを制作する上での目安工数ですので、実際に発生するプログラム実装工数や調整・デバッグ・サウンドなどの工数は含まれていない数字であるということをお忘れなく。

ただ(あくまでざっくりですが)ジョニィ・ジョースターを1体実装するためだけに5千万円以上の開発費が必要だったということだけはお伝えしておきますね。

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さて後半部分は【工数見積りの変更って途中で出来るの?】という疑問にお答えしていこうと思います。

要するに途中で工数見積りに変更が入った時に契約書を更新してスケジュールや予算の変更が出来るのか?という疑問です。

先に答えだけを言ってしまうと「基本的には出来ない」と思ってください。

なので【なぜ開発途中で契約内容の変更が出来ないのか?】を説明していくことになります。

もちろん機密保持契約に違反しないカタチでの説明になりますが、極めてデリケートな話となりますので情報の取り扱いには十分に気を付けてくださいね。(もちろん転載禁止です)

では張り切っていきましょう!

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なぜ途中で契約内容の変更が出来ないのか?

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