チェイサーゲーム 外伝 -此の花サクヤ編-
古荘サクヤはお年頃だった。
古荘は“フルショウ”と読む。が、そういえば2年前に熊本から東京に出てきて誰からも正しく名字で呼ばれたことが無い。
みんな“フルソウさん?”とか“コソウさん?”なんて間違えるので訂正するのも面倒くさくなってきたので“サクヤでいいよ”って言ってるうちに本当にそうなった。
サクヤは仲の良い両親の元で育ちすくすくと大きくなったが、高校の卒業が近づいてくるとだんだんと熊本の田舎から飛び出して自身の夢を叶えるために上京することを具体的に考え始めていた。
サクヤは役者になりたかった。
女優になりたかった。
自分の身体一つで他者に何かを与えられる表現者になりたいと願っていた。
そのことを両親に伝えると、意外にも母は快諾したが父は反対した。
“もっと他にもやれることがあるだろう?”
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