8 『「叱らない」が子どもを苦しめる』
自分が読んだ本のレビューを書いてみる。
まず、新書が税込で1,000円を超えていることに驚いた。
が❗️
この本は、十分にバリューフォーマネーだった。
ここ数年(特にコロナ騒動以降)の生徒の変質は、顕著だと感じていた。
これまで自分が「常識」だと考えていたことが、生徒とは共有できていない。
それだけならまだしも、保護者とも共有できていない。
そういう場面に遭遇する頻度が格段に増えていた。
この本は、スクール・カウンセラーをされている著者が、まさにこうした自分が感じていた違和感に、一つの示唆を与えてくれた。
昔は「学校には行くべき」という価値観を共有していた。
この価値観と、学校に行けない葛藤が、子どもの苦しみとして存在していた。
しかし昨今の不登校は、様子が変わってきた。
思い通りにならないことに耐えられない。
自分の要求が通らない状況や否定的な場面で「いじめられた」と主張する。
「世界から押し返される」体験の不足が原因ではないか。
「世界から押し返される」とは、叱られる、止められる、諌められるといったこと。
そうした体験の不足から、「外の世界に合わせて自分を調整する」という不快な体験をせずに「思い通りになるのは当然」という感覚のまま学齢期を迎えてしまった(そのまま大人になってしまう者も)。
学校は「思い通りにならない場所」。
不快感を納め、環境との調和を経験していく。
そして子どもが「社会的な存在」として成長する。
・「世界からの押し返し」を外注。
・子どもの現実を「加工」。
・子どもの環境を「操作」。
ネガティブな自分を受け入れられない。
その年齢に合わせた「心理的衝撃」の経験不足。
自分の未熟性から目を逸らす。
学校は「耳にしたくない情報を与えられる」ところ。
「万能的な自己イメージ」の増大。
→ 現実の自分を否定するしかない。状況を回避。イメージへのしがみつき。こころの奥底にある自信の無さ。
→ 指摘・注意されることへの過度の恐れ。
→ 不機嫌・怒り・脅し・暴力などの陰性感情を全面に出すことによる環境操作。
子どもの不穏感情に向き合えない保護者。
→ 人のせい。学校の瑕疵を指摘、「視点ずらし」、罪悪感や無力感を与える。
学校は「そう簡単に変わるわけにはいかない」社会的共通資本。一定以上の質のものを提供し続けることが重要。
成長のための不快。
子どもたちが成長する機会。
関係性の中で不快感を納める。
ネガティブな面も含めて、「そういうあなたが大切だ」。
多くの人が共存するためには、ルールや法律などの仕組みが必要で、「みんなが少しずつ我慢すること」でみんながそれなりに心地良く過ごすことができるように外の世界は設計されている。
外罰的な風潮。問題の在り処を自分の外側に帰属する構え。
自責から他責への変化。明確に子どもたちにも見受けられる。
他者から「傷つけられた」と感じる。
「いじめ」とラベリング、「◯◯された」という被害的な文体で語る。
社会的成熟の要件の一つ「責任の範囲を自覚する」。
自由や権利を行使することに付随する、義務や責任について理解する。
「責任の範囲」を知るということは、自身の「自由の範囲」を理解するということ。
「外界での傷つき+支えられる」もいう経験が大切。
子どもの不穏感情を関係性の中で納めていく。
「ごちゃごちゃとしたやり取り」を根気よく続ける。
「ネガティブな自分であっても関わってくれる」という体験。
「心配ベース」で伝えていく工夫、I message。
「世界は私たちに合わせて設計されていない」(養老孟司)。
要求を受け容れすぎてはいないか。
「押し返せるポイント」を探す。
「小さな押し返し」を作る。
「安全な対話」=子どもから話しかけてきたとき。
彼らが積極的に取り組んでいることに興味を向け、質問して、教えてもらう。
「こちらの世界が広がった」ということを伝える。
数字を排した関わり。「あなたと話していると楽しい」。
「びっくりする・不思議に思う」。
「変えようがない現実」を根拠とともに伝える。
「歴史的経緯」「価値観」「思想」も併せて提示。
学校での対応。
社会的に適切な対応を堅持する。
学校の枠組みを明確に示す。警察に相談・通報も。
周囲の生徒へのアプローチ。
学校全体で「金太郎飴」を目指す。
家庭でのルールの緩さ。
食事の際に足を上げていても注意しない、ゲームの時間が無制限で、布団の中まで持ち込んで夜中までプレイ。
子どもを「社会化」させていく。
不快感を受けとめ、納め、社会との折り合い点を見つけていく。
子どもが社会の中で成熟する、ということ。
叱る際のマナー。
①10分を超えて叱らない。
②人格を否定しない。
③他の子どもと比べない。
④すぐには変わらないし、思い通りにもならないと考える。
「価値観を押しつけること」を恐れない。
間違いと向き合って、考えていくことが大事。
「間違いを出せること」が大事。
「わからなさ」を体験する。
「私はこの状況にコミットしていきます」と表明する。
最後の時まで関与し続けることが、支援者にとって大切。