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【薄い本】

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エロ同人とかはよく俗に『薄い本』と言われます。 そして、僕の小説は文章の厚さが『薄い』です。 つまりは、ちょっとえっちな小説書いてます。と言ってもやっぱりえっちじゃないものの方が…
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#恋愛

【薄い本】バレンタインイベント

【薄い本】バレンタインイベント

ふたりでぺろりとスパゲッティを平らげる。
冷蔵庫に残っていた辛子明太子を使った、たらこクリームスパゲッティ。こいつ、ひょっとしてあたしより料理のスキル高いんじゃないか。ちょっぴり悔しさを覚えながら食器をキッチンへ運んだ。

料理を作ってもらった分、洗い物はあたしの仕事。ササっと済ませ、冷蔵庫からチョコレートを取り出す。彼はというと、こたつに入って携帯のゲームをしている。彼の目の前に、どんっとチョコ

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続・追いかけあう手

続・追いかけあう手

あれから4ヶ月。
身を斬るような風と共に、街の雪はどこかへ消えた。空は青く澄み渡り、春の陽気が身体を包む。
日用品の買い出しを済ませ、午後からの約束に間に合うように足早に道を歩いていた。
そこで、ふと目に止まった一件の店。

正確には、店の中の一枚の絵。

あの絵だ。あの雪の日、フリーマーケットで見かけた二本の手。あの絵は売らないって言ってた。てことは。

・・・

開いたドアのベルが、カランコロ

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追いかけあう手

追いかけあう手

この記事はnoハン会2nd小冊子企画に寄稿したものです。

ふーっと息を吹きかけ、手をこすり合わせる。
しばらく歩いていると、はらはらと雪が降ってきた。今年は例年より少し早い降雪。
折りたたんでいた傘をさし、コートのボタンをキュッと閉める。
バーか何かの曲がりくねったストローのようなネオンにはまだ明りはなく、CLOSEDの看板が傾いている。店の前の交差点で、赤いライトを無心で見つめる。

そんな、

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【薄い本】Eine kleine Nachtmusik

【薄い本】Eine kleine Nachtmusik

Eine kleine Nachtmusik (アイネ・クライネ・ナハトムジーク)
『小さな夜の歌』

・・・

『セミってさ、昼しか鳴かないらしいよ。夜はどこかで寝てるのかなぁ。』

彼女が急にそんなことを言い出した。既に夜の帳は下りている。夜風で揺れるカーテンの間から、気だるげなネオンが見え隠れする。彼女の服を脱がせ、ブラジャーのホックに指を掛けたところだった。

『なんで急にセミが出てくんだ

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