マガジンのカバー画像

小説

23
がんばって書いた小説。
運営しているクリエイター

記事一覧

小説:浮いたわたし

 午前中の、まだ客もそれほど多くないチェーン店のカフェで、二人掛けの席に春行と向かい合っ…

ピリから
1年前
3

小説:部屋の魚たち

 僕たちの部屋にたくさんの魚が泳いでいた。泳いでいる魚の種類はよくわからない。僕は魚に詳…

ピリから
1年前
4

小説:僕の中の真帆

 僕の中には真帆がいる。  真帆は僕が高校一年の時に同じクラスだった女の子で、二年の時も…

ピリから
1年前

小説:あの日あの場所のフレンチトースト

 わたしは、今まで生きてきておおよそ不味いフレンチトーストというものを食べたことがなかっ…

ピリから
2年前
2

小説:海で教えてくれたこと

 もう何年も前の話になるけれど、恵市と二人で海を見に行ったことがあった。季節は春で、何も…

ピリから
2年前
1

小説:青瀬さんのありがたいお話

 バイト先のスーパーにいる社員の青瀬さんは、細かいことに気が利いて指示が素早くて、けどい…

ピリから
2年前
1

小説:鬼に壊された部屋で

 ろくでもないことは起こるべくして起こるものだし、逆も同じだ。僕の家に突然鬼の集団が上がり込んできて、金棒を振り回して壊せるものを全て壊していったのにも、因果がある。  僕は恋人から金を借り、早く返せとせっつかれ続けているクズだ。恋人とは言ったが、向こうはもう僕に愛情など抱いていないだろうし、僕が抱いているのも愛情より不安感の方が強い。そんなどうしようもない僕を許せなくなった恋人が、鬼たちを雇って僕に復讐を命じた……というわけではない。が、回り回って僕の部屋には鬼たちが押し掛

小説:薄皮の恋

 川坂くんはあんまり背が高くなくて、喋る時いつも声が力んでて、ちょっとおどおどしてる頼り…

ピリから
2年前
2

小説:僕が好きな

 僕は仕事を終えた後に酒を飲むのが好きだが、別に仕事をすることは好きではない。加えて言え…

ピリから
2年前

小説:どんな顔の少女

 夜の十一時、ふと誰かに見られていることに気付いてわたしは立ち止まる。  自動ドアを通っ…

ピリから
2年前
1

小説:踊る彼女を見る夜

 夜に仕事から帰って一人で夕飯を食べていたら、ベランダからいきなりリビングの窓を割って人…

ピリから
2年前

小説:アルコールマジック

 三週間ぶりに居酒屋で会った道乃が新しい彼氏ができたという話を始めて、「今度の相手とは長…

ピリから
2年前
1

小説:できることならできることを

 のそのそ、とかガバリ、というよりは体に結び付けた一本か二本の糸に引っ張り上げられるよう…

ピリから
2年前
2

小説:妹の腰にいた男

 あたしがその夜のその時間に目が覚めたのはトイレに行きたくなったからだったけど、二階のトイレを使わずに一階に下りたのはそこから物音が聞こえたからだった。  布団から上体を起こし、画面の光に目をくらませながらスマホを確認する。さて、おおよそ物音の立たない時間にごとごとと聞こえてきたのはなぜだろう?  お父さんかお母さんが喉が渇いたとかでお茶を飲んでるという可能性はもちろんある。けど、過去に同じ状況でそう思って台所に行ったら違ったということが二回あった。  あたしは後者の可能性に