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既読より、いいねより、直筆がくれたもの

毎年1月、誕生日に小包が届きます。
毎年9月、誕生日に小包を送ります。

出会って17年経つ親友と最後に会ったのは3年くらい前。ライフステージの変化に加え、お互い住んでいる地域が300kmほど離れていることもあり、昔のように気軽に会うことは難しい。いつからか、毎年誕生日に小包を送り合うようになった。

雲ひとつない晴天の寒い日、今年もわたしの元に小包がやってきた。毎年この瞬間が、わたしはたまらなく嬉しい。今年は何かな、という楽しみもさることながら、気軽に会えなくても変わらず繋がっていることに気付く。それが何よりも嬉しい。

今年は、オシャレで可愛いお菓子がたくさん!!
そしてこの缶が、なんとも彼女らしい。これなら誰から贈られたものか、絶対に忘れない。数あるお菓子の中からこれを選んだ、彼女のにやにやする顔が目に浮かぶ。

わたしはすぐに彼女に連絡をした。いつも彼女は凄い熱量のメッセージをくれるのだが、今年はまだ来ていない。わたしの方が早かったみたいだ。そう思って彼女に、たくさんのありがとうを詰め込んだメッセージを送った。

でも今年は、いつもと様子が違った。

待てど暮らせど、彼女からの返信はない。
メッセージは既読にもならない。
Instagramに投稿してみたが、反応もない。
こんなこと、今まで一度もなかった。

何かあったんじゃないか。

コロナはこんなにも流行している。小さな子供がいる彼女は、もしかしたら大変な事態になっているんじゃないか。そういえば今年の小包の送り状、彼女の直筆じゃなくて印刷だった。おそらくお店の人が手配したやつだ。もしくは、わたし何か気に触ることでも…?いや、そんな覚えはないけれど…。

普段あまり携帯を触る方ではないけれど、今回ばかりは気になって仕方がない。何度も携帯を見ては閉じ、を繰り返していた。

気になる気持ちを抱えながら迎えた、5日目。
ポストにピンク色の封筒を発見した。
見慣れた直筆の文字、その横に書いてあったひとこと。

携帯故障中のためしばらくLINE使えません😭


なんじゃーーい!😂
なぜか10円切手で埋め尽くされた封筒。家にたくさん10円切手があったのでしょう。そして差出人である彼女の名前の横には、このコメント。

1月31日に開けてね❤️

残念ながら31日に届いてなかったよ😂笑

彼女からの直筆メッセージを読んで、わたしは笑い転げてしまった。あんなに心配したのに!まぁ、何もなくてよかったけど!
どうりで既読にもならないし、いいねもコメントも無いわけだ。まったく相変わらずだなと思って、また笑みが溢れた。

彼女からのメッセージを読みながら、もちろん心配は吹き飛んだけれど、同時に予想とは違う安堵感と暖かさが込み上げてきた。

届いた直筆のメッセージからは、彼女の人柄(間違いをミノムシみたいな絵にして消しちゃうところも)や、会いたい!という気持ちがこれでもかという程伝わってきた。少し丸い、大きな字。文の後ろになるにつれて、その文字は段々と小さくなる。「あ!やばい!入らない!」と気が付いたんだな、とすぐわかる。
同じ大きさの字で書かれた、いつもの熱量あるメッセージとは少し違った。その字は、授業中に散々手紙のやり取りをした、高校時代を思い出させてくれた。

本当はここ最近、少しだけ、さみしさを覚えていた。ライフステージの違いは、心の距離を300kmよりもさらに遠くに感じさせた。本当はそんなこと杞憂だったのに。

もし今年、彼女からのメッセージが、既読やいいね、同じ大きさの字が連なったメッセージだけだったら?もちろん嬉しい。でも今のわたしは、そのさみしさに気が付かないふりをして、こっそり抱えたままだったかもしれない。
直筆のメッセージは、いつの間にか心の隅に居座っていた小さな氷の礫をひょいっとつまんで、ポイっと捨ててくれたようだ。

そしてもうひとつ、既読やいいね、そんな便利機能が充実していない時代なら、こんな気持ちにもならなかっただろう。自分が気が付かないうちに、こんなに機能にばかりに気を取られていたのか、そう痛感した。気軽に会うことが出来ない、そんな時だからこその気付きだった。

機能は便利だ。
毎日数えきれないほどの恩恵を受けている。
いいねと言われれば、それはもちろん嬉しい。

でも、人と人とのつながりは、もちろんそれだけじゃない。
温度を感じられるつながりは、たくさんある。
そのひとつは、直筆なのかもしれない。

久しぶりに直筆で手紙を書こうと思う。
きっと彼女の携帯復活には、まだ時間がかかることだろう。
まずは、彼女にピッタリの便箋を選ぶことにしよう。

もしかしたらこれを機に、17年前のように手紙でのやり取りが始まるかもしれない。
直筆だからこそ感じられる、つながりと温度。
またひとつ、楽しみが増えた。

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