世界一周にこだわっていたことに気づいたとき、やりたいことが見えてきた。
以前、実現したいプロジェクトと世界一周を両方叶えたいという話を書いた。
日本で「とっておきのおひとりさま時間」を提供する場所を作り、さらにその先世界一周に行く夢も叶えることは、不可能なのだろうか。それを実現させる術を考えることが、POOLOに入った大きな理由だった。
結論から言うと、私は世界一周には行かない。
これは決してネガティブな決断ではない。私が自分らしく生きるために選んだことだ。
その決断に至った経緯を今日は綴りたい。
旅好きの仲間たちとの出会い
2022年1月にPOOLOの幕が開け、「旅が好き」を共通項に集まった、面白くてやる気に満ち溢れた仲間たちと出会った。
世界一周に行きたい人、すでに経験した人とたくさん出会った。
今までの私の環境では、「世界一周に行きたい人」が夢物語のヒーローのように見られていた。POOLOの仲間がいる環境に変化したことで、より現実感を持って世界一周のことを捉えられるようになった。
そして、日本全国いろいろな場所を旅するようになった。
大人数で青春を追体験するような旅から、少人数でゆるりと過ごしながらも関係性が深く育まれる旅、すべての時間を共にせずとも各々が自由に集合して過ごす旅。
仲間が住んでるあの場所へ。だれかの旅に誘われ。いろいろな旅の形を経験した。
心が躍る日々。
旅が抑圧されていた日々を経て、新たな仲間と新たな旅のスタイルを経験できたことは、刺激になった。
刺激になったからこそ、疲れてしまう自分もいた。
世界一周への不安
私は不安になった。
日本での1週間程度の旅でも、気が合う仲間でも、旅中にひとりの時間があってもこんなに疲れているのに、世界一周を楽しめるのだろうか。
この数年で、私は変化していたのだ。自分の身体に鞭を打って、たくさんの刺激を求め、限界に達すると泥のように眠っていたあの頃から。
今の私は、日々の暮らしに余白を持たせ、感性を磨き、ひとりで自分の声に耳を傾ける時間が必要不可欠になっていた。
それを実現するために、自然と自分の家が居心地のいい場所へ変わっていた。
世界一周に行きたかった理由
そもそも、なぜ世界一周に行きたいと思っていたのだろう。
私の結婚の条件は、世界一周に一緒に行ける人、もしくは私がひとりで世界一周に旅立ってもいい人だった。
その条件を「いいね」と言ってくれるパートナーと出会い、一緒に世界一周を計画していた。
どこに行く?何を食べる?何を見に行く?どんな経験をしたい?
やりたいことはたくさんあった。
でも、改めて今の自分が考えたとき、どれも世界一周である理由にはならなかった。理由なんて、あまり必要ないのかもしれない。けれど、私の心には少し雲が翳り始めていた。
私は、「世界一周」の言葉にこだわっていただけなのかもしれない。
今の私は、本当は何がしたい?
一度、自分の心に正直になろう。「世界一周」の言葉に惑わされずに。
まず、変わっていない事実は、旅が好きなこと。
新しい出会いは、私の好奇心をくすぐる。人、もの、景色、すべてに物語があって、訪れることで知らない場所が身近な場所に変わっていく。
そして、わたしの人生最大の目標である「みんなが世界中に友達をつくることで世界が平和になること」を達成するために、私自身がいろいろな場所を旅して、世界中に友達を作りたい。これも変わらない。
では、今の私は、本当は何がしたい?何をするのが好き?
それを考えたときに、思ったことがある。
何をそんな個人的な趣味の発見を、世紀の大発明みたいに、と思っただろうか。
よければもう少しお付き合いいただきたい。
私は暮らしを彩る素敵なものを見つけたとき、新たな自分の暮らしを思い描いて心がときめく。
作り手のストーリーを聞き想いを馳せ、ここにたどり着いた道のりを想像する。
こんなお店が近くにあったら通うのにと、名残惜しくお店を練り歩く。
「自分のものにしたい」だけではなく、「あの人のもとに届けたい」と顔が浮かんでお土産にしたり。
自分の家には迎えられなくても、「素敵な商品を生み出してくれてありがとう」という感謝の気持ちが芽生えたり。
私にとって「買う」という行為は、作り手への最大限の敬意だと気がついた。
それをだれかに「届ける」という行為は、そのだれかを作り手や場所とつなぐコミュニケーションだと気がついた。
宝探しのように大好きな買い物をして、自分の愛する空間に帰り、その宝物を誰かの元に届けられたら。
物語を受け継いでいけたら。
旅をしながらの宝探しと物語集め。世界とあなたをつなぐ場所づくり。これが、私の心が躍る旅のスタイルかもしれない。
必要不可欠な仕事をしてきたからこそ生まれた思い
私は10年、薬剤師として医療現場で働いてきた。
医療は、生きていく上で必要不可欠な仕事だと思っている。
でも、不要不急と言われる日常の余白に色を加えることで、人生を豊かにすることができる。
生を全うするならば、心をときめかせて生きていたい。
だから、「とっておきのおひとりさま時間」の提供も、「暮らしを彩るものたち」を探す買い物も、心健やかに生きていくために大事なものだと思うのだ。
自分らしく生きるために、私は世界一周には行かない。
でも、旅をしながら生きていきたい。
たくさんの物語に出会い、それを届けられる人でいたい。
またひとつ、私の人生の解像度が上がった。
手段は、自分らしいものを選べばいい。
このことに気づけたのは、間違いなく旅や世界一周を身近に感じさせてくれた仲間たちのおかげ。