未熟な旅人
暗闇でだんだん目が慣れていく現象を暗順応(あんじゅんのう)と呼ぶらしい。
寝る気になれなくて、夜中にベットメイキングをする。広がるシーツの上に静かに座って、暗闇の中で揺れるカーテンをただずっと見ていた。
隣の家から漏れ出た光に安心する。
自分の中のスイッチが、ぐんっと引っ張られた。
今日、コーヒーを飲んで良かった。
ずっと考えたかった。
1人で、考えたい。
眠りたくない。
執着は好きじゃない。
別れを愛する旅人になりたい。
他人を他人だと認識しながら、
人類全てを愛したい。
肯定できなくとも理解したい。
今の私なら、できる気がする。
だって私だし、君たちもいるし。
そうはいっても、私もまだまだ幼い未熟な1人の人間だから。
人にする代わりに、
暗い部屋の中で、ただ一つの空間にだけは、執着しても良いよね。
得体の知れないバケモノと対峙する、
暗順応が起こるこの時間だけは、弱い私にフォーカスしたい。