「時代が追い付いた」事例―”ぺこぱ”が支持される世界―
今、TVで見かけない日はないお笑いコンビといえば、
圧倒的に”ぺこぱ”である。
なんだか、この2人がTVに出ていると、安心感がある。
我が家、家族4人は好みが違うが、”ぺこぱ”は家族全員がすきだ。ぺこぱが出演するバラエティ番組があると、そのチャンネルにあわせてしまう。
CM出演も多く、2020年上半期ブレイク芸人にも選ばれ、今の世の中が彼らを必要としていることがうかがえる。
昨年末、2019年のM-1グランプリ。もともとお笑いがすきな私は久しぶりに、腰を据えてじっくりTVで観ていた。2018年、若手の”霜降り明星”が優勝したこともあってか、希望をもった若手を中心に多くの芸人が奮起し、ファイナル出場9組のうち、初登場コンビが6組という異例のラインナップ。その中の一組が、ぺこぱだった。
敗者復活組で、ここ数年M-1常連の”和牛”を加えた10組中、ラストの10番目に登場したのが、ぺこぱだった。
「ロンリネーーーーース!」とステージに出てくるなり、頭を振り続けるV系メイクの紫スーツの男、変な動きでおしりをふっている長身のぼっちゃん。
そして、みたことのない、あの漫才というか、パフォーマンスというか。
ツッコむかと思いきや否定しない、でも癖がありすぎる。
なんだこれ!!!!
おもしろすぎる!!!!
おそらく、第一印象の好みは分かれると思うが、私は、新しいし大笑いしたし、すぐにすきになった。
そして、爆笑の中、最後のその出演コンビ、しかもファイナル初登場コンビがまさかの3位(最終決戦進出)に入るというドラマ付き。3年連続でM-1準優勝という”和牛”に、最終決戦の舞台がなくなった。大どんでん返しが起こり、スタジオは騒然。なんというコンビだ。
最終決戦では、同じく初登場の”ミルクボーイ”が圧倒的に票を獲得し優勝。”かまいたち”に次ぐ3位で終わったが、この後、彼らの需要は急上昇することとなる。
審査員による結果は3位だったものの、その後、M-1を観ていた芸能人で「ぺこぱにハマった」というひとが続出。2019年のM-1自体が盛り上がったことも手伝い、バラエティのゲストで呼ばれたりすることが増えた。M-1出場によって、キャラクターが個性的なぺこぱの需要は上昇した。
私がいつも観ているYouTubeチャンネル『カジサックの部屋』に出演が決まったときは、嬉しくて心が躍った。
これを観て、私は、ツッコまないツッコミ松陰寺太勇さんの人柄や真面目な姿勢に加え、ボケのシュウぺイさんのもつキャラクター、人となりの破壊力に圧倒された。そして、今でもこの動画を定期的に観ては笑い転げている。
何より、お笑いの番組に興味がなかった、だいすきなジャニーズタレントにあえることが嬉しい、M-1の登場時のせりあがりの場面で天井のカメラを観ていた、など、”漫才に懸ける芸人”とはかけ離れたシュウぺイさんの人となりに、過去、円形脱毛症になるほど命を懸けてM-1の舞台に立っていたカジサック(キングコング梶原さん)は、度肝を抜かれていた。
知れば知るほど、なんておもしろいコンビなんだろう。
今、芸歴13年目を迎えるという彼らは、「泥水をすすってきた」と本人たちが言うように、本当に苦労人だった。とはいえ、私は、2019年のM-1で彼らを知ったばかりのにわかファンなので、わかったようなことはいえない。
芸風が定まらず、ボケやツッコミを入れ替えたり、キャラクターや設定をいろいろ試したりするがなかなか世に出られない。2019年元日の『おもしろ荘』で優勝するも、「♪パンケーキ食べたい」でお馴染みの”夢屋まさる”さんの方がブレイクしてしまったことで、メディアに出る機会がすぐに減ってしまう。そして、所属していた事務所の芸人部署がなくなるという不運。しかし、松陰寺さんの尊敬する先輩や、カンニング竹山さんとのご縁で、現所属のサンミュージックに入ることができた。まさにM-1に向けて、という年だったので、この出来事は大きかっただろう。
彼らがようやく掴んだM-1後の”ブレイク”、これからというときに、今度はコロナさんがやってきてしまった。TV出演、舞台も今まで通りにはいかない日々の中、リモートで彼らはTVに出続けた。自宅待機の期間ももちろんあったが、彼らの持つYouTubeチャンネル『ぺこぱチャンネル』で、毎日動画をあげ続けた。
今までの、必死にバイトをしながらの地下LIVE生活からようやく世に出られたチャンス、彼らはそのありがたさが身に染みていたと思う。松陰寺さんは与えられた仕事にとにかく真摯に、そしてシュウぺイさんはとにかくTVに出たい!という前向きな気持ち。コロナ禍でも、気づいたら「あ、またぺこぱだ」という頻度でTVに映っているような状態になっていて、今では毎日のように、むしろ忙しさが心配になるほどひっぱりだこだ。
先日、『お笑い二刀流』というネタ番組に、ぺこぱが出演した。
”二刀流”、というのは、漫才とコント。ぺこぱのコントは、きっと過去にはやってきただろうけれど、観たことはないのでどうなるのだろう?と楽しみに待っていた。
、、、、、、と、ここで、テレ朝公式チャンネルの動画の公開期間が終了したことが判明、、、、、、
公式ではないけれど、こちら。
、、、、、、このコント中に松陰寺さんが何度も口にするフレーズ、
「キザーン」。
これ、どこかで聞いたことがある。
それは、ぺこぱチャンネルにUPされていたのか、何かで観た。昔、まだ芸風に迷っている頃のセリフか、何か、過去の売れない時代に彼らがやっていたネタだな、ということはすぐに分かった。
このコントがオンエアされるとすぐに、TwitterやYahoo!検索ランキングで、「キザーン」というワードが上位に入る。
このことについて、本人たちが語っている動画がある。
この”幼稚園”ネタを作ったのが、2013年だという。
当時ウケなかったネタが、時を越えて、2020年に日本中で話題になること。
タイミングって、あるんだな。
来るんだな。
模索しながら、長年ひとつのことを続けてきた彼らに、フィットする時代がようやくやってきたのだろう。
「時代が追い付いた」、の例になるのが、彼らなのかな。
現在、日本では災害、そしてコロナさんにおいては世界中に無期限の不安が募る、疲労困憊の世の中だ。
そんなときに、彼らの”否定しない”言葉たちが、そんな人々に安らぎを与えている。
「悪くないだろう」「、、、とも言い切れない」などと、シュウぺイさんのボケを全て受け入れていく松陰寺さんの”ツッコまないツッコミ”スタイル。また、「シュウぺイでーす!」といつも明るく自己紹介するシュウぺイさんの”シュウぺイポーズ”は、マネしやすく子どもから大人まで幅広くウケている。
芸風だけではない、2人の人柄の良さも画面からは伝わってくる。
ぺこぱは、いわゆる”第七世代”と呼ばれる芸人さんとのお仕事が多いが、2人は既に30代。松陰寺さんは30代後半だ。
収録現場で、必然的に芸人の中で松陰寺さんがいちばん年上、という場面も多く、そのときの、若手芸人さんに対してのさりげないフォローや見守り、気配りは、本当に大人のやさしさを感じる。肯定のツッコミをしていることで「やさしいですね」とインタビューなどで言われると「そういうわけじゃない」と答えていたが、芸風うんぬんを抜きにしてもにじみ出るやさしさは、ぺこぱ人気の理由のひとつに間違いない。
シュウぺイさんは、TVの仕事が増えるなど”芸能人”になって以降、YouTubeのカジサックチャンネル出演当時からの成長が、目に見えてわかる。漫才に興味がないと言っていたのに、あるときTVでネタ(コント)を披露してから、ぺこぱチャンネル内で「あれはもっとできたはずだ」と、真剣に反省し悔しがっていた。シュウぺイさんが真面目に”芸”と向き合う姿に感動したのを覚えている。また、たくさんのタレントさんと会い、今の仕事を心から楽しんでいることが本当に伝わってくる。また、ビビりキャラ&おバカキャラとしての需要も多く、視聴者を楽しませてくれる。
シュウぺイさんに関して。
もともとバイト先で出逢った松陰寺さんに誘われてお笑いの世界には入ったが、サッカーや幼稚園教諭、俳優など、やりたいことは別にあった。ボケやツッコミも定まらない時代もあったが、ツッコミという立場が彼には合わなかったという。現在の形のぺこぱのスタイルが、いちばんシュウぺイさんらしくいられるようで、彼が今生き生きしているのにはそういう理由もあるように思う。また、『突破ファイル』というTV番組で、芸人さんが演技をしているのだが、彼のやってみたかったことのひとつである”俳優”、私はオファーがくるのではないかと。演技が上手で、きりっとした表情もいい。
(ただ、彼は3行以上のセリフを覚えられないらしい。笑)
キャラクターを作りながらも、人柄がにじみ出たときのやさしい笑顔が素敵な松陰寺太勇さん、天真爛漫な明るさに元気をもらえるシュウぺイさん。
ここまで来るのには相当な道のりであっただろうし、ブレイクしている今でも、常に危機感を抱きながらの仕事。芸人という職業は誰しも、いつどうなるかわからない。安定なんてない。
ただ、鬱病患者の私は、この2人に笑わせてもらったり、癒されたり、心を救ってもらっている。そしてこれまでの経緯を知って(知識不足だけれど)、
不遇の時代の先にあるものを、信じてみようと思えた。
鬱病歴8年。ぺこぱのもがいていた期間に比べたら、まだまだだ。
芸人を諦めなかったことで今のぺこぱはあるけれど、私は、、、
生きることだけは、諦めない。
私が知っているぺこぱの知識については、本当に浅いので、詳しい方がもしもいらして気分を害されたら、すみません。
ぺこぱ、ありがとう。
どうか、心身の健康にだけは気をつけながら、ますますのご活躍を!
ひたむきにがんばるひとに、素敵なことがまっていますように。