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北海道美深町でゼロからチョウザメ養殖 貴重なキャビア増産を目指す

 北海道北部にある美深町は平成28年からチョウザメの養殖を本格的に開始。現在は魚肉やキャビアの生産を行っています。「最初の頃は稚魚が全滅したこともあった」と語るのは美深町職員の紺野哲也さん(美深町)。養殖事業の実体に迫ってみました。


水槽内で泳ぐチョウザメ(8月6日 野中直樹撮影)

養殖施設にほぼ毎日通い“熱心”に世話 小さい頃は手がかかる

 美深町の山中に突如現れる建物。建物の中には所狭しと水槽が並べてあり、中にはたくさんのチョウザメが泳いでいます。


水槽内で泳ぐチョウザメ(8月6日 野中直樹撮影)

 チョウザメの管理は病気の心配がないので楽だと紺野さんは言います。餌やりをやるのは5月中旬から10月中旬まで。普段は毎日、朝と夕の2回だが、成長の具合を見て回数を増やすこともあります。

 「低水温だと消化不良を起こす」

 「夏だけで4、5キロ増える個体もいる」

 ほぼ毎日養殖施設を訪れて、熱心にチョウザメを世話しています。

 この養殖施設では地下水を利用してチョウザメを飼育しています。チョウザメが最も育ちやすいのは15~16度ほど。電気代との兼ね合いから、1年を通して11度ほどと安定している地下水を13~14度ほど加温しています。

 病気が少なく飼育しやすいと言われているチョウザメ。しかし、魚体が小さい頃は死にやすいです。「小さいときにあまり水温を上げないで、外の池に出してから大きくする。うちだと1万粒の受精卵のうち、残るのは1%ほど」。


チョウザメの稚魚(8月6日 野中直樹撮影)

 稚魚の期間は繊細。紺野さんは死亡原因の一つに共食いを挙げます。稚魚の頃には歯があり、「朝来たら3つくらいつながっていることもある。小さな個体に小さな個体がかぶりついて死んでいる」と言います。

 さらに最も死亡の原因として多いのが餓死。稚魚の時にはお腹にガスがたまり水面付近まで浮いてしまう個体もいます。しかし、しっかりとエサを与え続けるべきだと紺野さんは強調します。

 「チョウザメを飼い始めたころは稚魚が浮く現象が起こると『水質が悪い』『餌が悪い』などと言われた。しかし、私の分析だとそのどちらも違う」

 紺野さんの見立て通り餌を与え続けることで、稚魚が生存するように。今では「動揺せず餌をあげ続けて」と養殖場のスタッフに伝えています。

雌雄の判別は「お腹を開いて」確認

 世界三大珍味に数えられるキャビアは、どのようにチョウザメから採取されているのでしょうか。

 チョウザメは種類にもよりますが、早い種類で2年ほどでメスは卵を持つようになります。「お腹を5センチほど開いて卵があるか確認する」。2023年は2000匹ほどのチョウザメの雌雄を確認したため、非常に大変だったと紺野さんは振り返ります。


紺野さん(8月6日 野中直樹撮影)

 また気になるのが実際のキャビアの採取の様子。開腹して確認した際に卵が順調に成長していたメスの場合、卵の周りに余分な脂肪がついてしまわないように採取時期まで餌をやらないと言います。

道内レストランで魚肉が食べられる 貴重なキャビアは増産目指す

 魚肉として出荷されるチョウザメは1年間で1000匹ほど。実際にびふか温泉ではチョウザメの刺身やチョウザメラーメンなどが食べられます。びふか温泉以外にも北海道内の飲食店でも提供されています。

 また現在、キャビアの年間生産量は約10~15キロ。「あと3年ほどで年に50キロほど生産できるようになる」と紺野さんは予想します。キャビアはびふか温泉や「道の駅びふか」などで購入できるほか、ふるさと納税の返礼品としても手に入れることができます。

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