”自社の魅力”は未来の社員のなかにも隠れている。知っておきたいEVPの考え方と実践ステップ
「うちの会社の”独自”の魅力ってなんだろう」と悩んだことはありませんか?
採用を目的とした広報、スカウト、エージェントとのコミュニケーション、はたまた選考段階での候補者とのコミュニケーション、すべてのシーンで「自社の魅力」を打ち出すことが求められますよね。
あらためて言葉にしようとするとありふれたキーワードばかりでてきたり、自分たちが魅力だと思っているポイントを伝えてみても候補者になんとなく響かなかったり・・・
求める人物像である候補者に魅力的に思ってもらうために、何をどう伝えるかを悩むことは多いのではないでしょうか。
自社の魅力を言語化しようというとき、自社のなか(現在働く社員)から見つけようとすることがほとんどです。
でも実は、まだ自社のことを意識していない、未来の従業員(未来の候補者となる候補!)のなかにこそ、発信するべき魅力が隠れているかもしれません。
この自社の魅力を候補者のなかから「も」見つけるために押さえておきたいのがEVP(Employee Value Proposition)の考えかたです。
今回、私の所属する採用市場研究所の所長が、自社の魅力を言語化していくプロセスにEVPを用いた考え方をまとめたスライドを公開しました。
また同じ時期に採用市場研究所のメディアでも「EVPとはなにか」についての記事を公開しています。
このnoteは、それぞれの資料からポイントとなる部分を抜粋しながら、「じゃぁ、実際にどうやって自社の魅力をみつけるのか」についてをまとめたものです。
解説版じゃなくてスライドそのものがみたい!という方はこちらから、登録など不要でダウンロードしていただけます。
このnote自体は、あらかじめスライドをご覧になっていなくてもわかるように心がけていますので気軽に読んでいただけたら嬉しいです。
事例:未来の従業員のこたえを深ぼることで気づいた自社の魅力
EVPそのものの話に入るまえに、EVPにつながる考え方を用いて、実際に候補者のなかから自社の魅力に気づいた事例を少しだけご紹介します。
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社員に自社を選んだ理由、今現在働き続けている理由をインタビューしたら「ワークライフバランスがとれるのが良い」という答えがあつまった企業がありました。
魅力ポイントとしては「ありきたり」であることに悩まれていたことから、今後採用したい、求める人物像である外部人材にもインタビューを実施することを提案。
外部インタビューでは、「ワークライフバランスも大切だけど、実務のなかで先端の技術に触れたい」「スキルの高いエンジニアと一緒に仕事をしたい」という答えが回収できました。
当初は「うちは先端技術とかそういうのはあまり・・」と消極的に受け止められていましたが、「先端の技術」とは何を指すのかをさらに深堀りしていったら、自社で扱っている技術と共通項があったり、「スキルの高いエンジニア」について自社内を見渡してみたら、実は大学で講義をしていたりコミュニティに貢献しているエンジニアがいたり・・
回収した答えを深ぼることで隠れていた自社の魅力ポイントの発見につながりました。
このプロセスも、EVPの考え方とつながっています。
EVP(Employee Value Proposition)とは
Employee Value Proposition、略してEVPは、従業員価値提案と訳されます。
要は、その会社で働くことになった瞬間から退社するまでに得る、報酬、経験、すべてのことを「企業が従業員に提供する価値」ととらえた考え方です。
この「従業員」には過去/現在/未来の働き手が含まれます。
中心となるのは「候補者/従業員がなにを価値と捉えるか」
EVPの概念を実践で使うときに、気をつけたいことがあります。
それは、企業が考える価値を一方的に押し付けるのではなく、「候補者(未来の従業員)/従業員がなにを価値と捉えるか」を中心に据えるということ。
提供できる価値は何か、だけではなく、提供する価値を受け手がどう評価しているか。評価していないのであれば価値そのものを見直す、ここまでがセットの考え方です。
もっとEVPについて知りたい、そもそもどういう考えからうまれたのか、かつての日本企業におけるEVPはなんだったのかなどについては採用市場研究所の記事でご覧いただけますので、興味のある方は読んでいただけると嬉しいです!
EVPを設計する3ステップ
さっそくEVPを設計していきましょう。
ステップそれぞれの詳細を紹介します。
1.情報収集
だれから、なにを、どうやって情報収集するのか、この3点が気になりますよね。
「誰から収集するのか」
「誰から」についてはこちらの3つの階層すべてを対象とします。
第一階層 価値共感者:現在働いている社員
第二階層 関係人口:現在所属はしていない退職者や内定者、選考辞退者
第三階層 未開拓層:採用対象であるが自社のことを知らない、または興味がない人たち
ほとんどの企業は「価値共感者」へのヒアリングのみで自社の魅力を作ろうとすることが多いですが、第一階層だけで終わらせてしまうことはおすすめしません。
リーチの難しい第二層、第三層へヒアリングを行うことでこそ、隠れた「新たな観点の収集」ができる確率も高くなります。
「なにを収集するのか」
EVPが最初に提唱されたのは2000年代の初頭。
比較的新しい概念のため、EVPを構成する要素や定義については固定化されておらず、さまざまな観点があります。
わたしたちは比較的網羅性のたかいAdoptTech社のこれらの要素を参考にすることをおすすめしています。
「どうやって収集するのか」
現在働いているメンバーや直近入社したメンバーへのデプスインタビューを通し、さきほどの「なにを収集するのか」の項目をベースに確認していきます。
前述の第三階層 未開拓層に対しても、基本的な項目は共通です。
より踏み込んで、採用ターゲットのもつ「もやもや(本人も言語化できていない潜在ニーズ)」を探り、インサイトを探索するところまで広げたり、自社が現在どうみられているかの実態調査を組み込むこともあります。
このあたりは、かけられる予算や、現在どこまで言語化されているかによりなにをどこまでやるかが変わってきます。
2. 情報の構造化
情報を収集したら、項目ごとに仕分けをします。
ポイントは、価値をもっているけれど提示できていない事象がないかを確認していくこと。
例えば、下の表でいうと採用ターゲットである第三階層 未開拓層がキャリアの観点で「高い専門性を持った集団」を魅力と感じています。
一方、自社の現状を見渡すと、「戦闘能力が高い社員がいる」ことに気づきました。
これは、企業側では価値として認識していなかったけれど、打ち出していける魅力のポイントの発見です。
3. 提供価値の策定
社員や候補者のインタビューを通して自社の魅力がわかってきたら、それらの魅力が機能するかどうかを評価します。
機能しない場合の特徴は以下の3つです。
・ありきたりである
・ターゲットが絞られていない
・現実味がない
機能するかどうかを評価するには数値化が有効です。
各項目に対し、5-市場支配、4-差別化、3-業界標準、2-標準以下、で数値づけし、魅力の優位性を確認します。
すべての項目で最高点を揃えることは現実的に難しいため、目指すべきは標準以下を作らないこと、そのうえで圧倒的な価値を1つと差別化可能な価値を1つもてるよう設計します。
これらの数値評価は、社員や候補者にインタビューする前と後で、集計内容を比較することもおすすめです。
よくある質問
Q.EVPは会社として作れば使いまわせる?
A. 会社の魅力とポジションの魅力は、必ずしもイコールにはならないため十分な魅力とならないことの方が多いです。
「特定の人を惹きつけるために」という文脈が最も重要で、ペルソナが複数存在するのと同様に、ペルソナごとにEVPも複数存在します。
事業単位、ポジション単位に作成されることもあります。
Q.文化には自信があるのですが、給与が業界水準よりも圧倒的に低く「理想型」になりません。
A. 飛び抜けたひとつの魅力で勝てる企業は、残念ながらほとんどありません。
足を引っ張る項目がある場合、それをどう業界標準にもってくるかという「実態」を改善する動きが必要になります。つまり、給与が低くて標準以下であれば給与をあげることも検討対象です。EVPが従業員価値「提案」であることから、提案できる状態にすることがゴールです。
Q.すべての数値平均に揃えにいくと、どこにでもある会社になりませんか?
A.足をひっぱる要素をなくしたうえで、圧倒的な優位性を作るという考え方です。圧倒的な優位性がどこか、そこに企業、事業、ポジションごとの独自性があらわれます。
おわりに
今回は私の所属する採用市場研究所の所長の公開スライド、採用市場研究所のメディアの記事からポイントとなる部分を抜粋しながら、「じゃぁ、実際にどうやって自社の魅力をみつけるのか」についてをまとめてきました。
少しでも参考になる情報があれば嬉しいです!
参考資料一覧
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