映画パンフレット感想#45 『化け猫あんずちゃん』
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感想
ベリーキュートでチャーミングなあんずちゃんが、でかでかとあしらわれた表紙。おお、まるでこちらに向かって手招いているようではないか。ほいほい、買っちゃお〜う。
しかもこの表紙、あんずちゃんのシルエットに沿うように、型で抜かれていて……と言葉にしてもなかなか伝わらないか。写真を撮ればいいよね、りょうかいまんにゃー。
このほかにも、巻末近くに1ページだけ厚めのカード紙が使われているところがあり、そこにはA4サイズいっぱいにあんずちゃんの顔が印刷され、「化け猫あんずちゃんになっちゃおう〜」とお面工作コーナーになっている。ただしお面とは私がそう書いてるだけで、顔面を覆うタイプでなく、装着時はおでこから上の部分にあんずちゃんの顔がぺたっと張り付けられたような見た目になるタイプなので注意されたい。このお面をなんと呼称すればよいのかご存知の方がいればコメントで教えてくださるとうれしい。ちなみに私はパンフレットをちょきちょきするのは勿体ないので脳内で妄想して楽しむことにした。
このように遊び心と仕掛けのあるこのパンフレットであるが、ここで映画『化け猫あんずちゃん』鑑賞直後の私のツイートを見てみよう。
宇野祥平の魅力に取り憑かれた狂気の男がここにいた。しかしこのような人間にも優しき手を差し伸べてくれるのがこのパンフレット。劇中では一目で宇野祥平とわかる、本人をデフォルメしたような閻魔大王が不気味かつゆるめのキャラクターデザインでアニメーションになっていた。なんとパンフレットには、その前の実写撮影段階で閻魔大王の衣装を身に纏い演技に臨む宇野祥平の写真が掲載されている。隣にはアニメ版の同シーンの写真が並び、比較できるようになっているのも痒いところに手が届く。宇野祥平の短文コメントも掲載されているので、宇野祥平ファンには強くおすすめしたい。
また、本作は他のアニメ映画とは一風変わった特徴がいくつかある。「実写で撮影してからアニメーションに落とし込む、ロトスコープという制作手法」と、「フランスのアニメーションスタジオMiyu Productionsが制作や製作に参画し、ほかにもフランスやアメリカの配給/映画会社が製作に名を連ねていること」だ。
ロトスコープやアニメーション制作に関する情報や裏話は充実している。ロトスコープの制作過程、俳優の演技や撮影時の工夫など撮影現場に関連する話、同録の音声を活用してつくりあげた音響など、多岐にわたる。本作のロトスコープは、ただその手法を選択したというだけでなく、映画の雰囲気や物語、設定との親和性が高く、作品の魅力を増幅させ唯一無二のものにする重要な礎であった。制作における各セクションの解説はその魅力の正体を明らかにしてくれる。
フランスのアニメーションスタジオMiyu Productionsのプロデューサーらのインタビュー記事も掲載。先日公開したばかりの『めくらやなぎと眠る女』や『リンダはチキンがたべたい!』の製作も手掛けているようだ。また本作の美術監督・色彩設計を手掛けたジュリアン・ドゥ=マンのコメントもあるが、この人物もシルヴァン・ショメ監督の『イリュージョニスト』や『レッドタートル ある島の物語』の制作に参加するエキスパートだ。
日本の伝統的な寺や田舎、はたまた都会が描かれ、化け猫・妖怪・地獄が登場する、「日本らしさ全開」のこの映画にこれだけフランスのスタッフが関わっていると考えると面白くもあり嬉しくもある。なにより国境を越えたクリエイターたちのコラボレーションにより素晴らしい作品が生まれたというのは実に幸せなことではないか。
ほかにもアニメ映画のパンフレットらしく、多数の場面写真、原作に関する記事、イメージボード集など、賑やかな内容になっている。すべてのページ色合いもやわらかな暖色系が多く、明るい気持ちになりながら読むことができた。