再再再検査
やっと目を覚ましたかい?と、例のつば広帽子を被った男の子達が歌い出して、うっかりぼくたちわたしたちいれかわってるー!?と、叫びたくなりそうだ。
なるわけがない。
会社の健康診断を三週に渡って受け続けたという話をしたいだけで、当然のことだが、私は誰とも入れ替わってない。
しかも再再再検査じゃなくて再再検査が正解である。
前日からなにも食べずに迎えた診断当日は、二週間前に遡る。
陰気な色をした検査着に身を包み、自宅でもないのにブラジャーを取り外した胸はスカスカで、普段なら読みもしないオレンジページを気まぐれに手に取りながら検診の順番を待った。
そしてベルトコンベアに乗せられるが如く、身体計測からはじまり、血を抜かれ、レントゲンを撮り、心電図を取り、問診をし、乳をマンモグラフィに潰され、受付に戻って終了となる。
本来であれば健康診断なんて待ち時間含めても半日あれば終わるのだが、今年の健康診断はそう一筋縄ではいかなかった。
健康診断初回の朝、あろうことか私の女性ホルモンが乱れた。故に、一部の検査を後日に回さざるを得なかったのだ。
致し方なく翌週の土曜日に、再度予約を取る羽目になった。女性の身体とは実に不便である。
受付にその旨を伝えると、事務員は私に尋ねた。
「君の名は?」
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さて、迎えた翌週の土曜日だが、あろうことか私は熱を出した。さらに乱れていた女性ホルモンは乱れっぱなしだった。
無理やり病院に行ってみたものの、再度予約を、、、と言われた。
ですよね。
行った私もバカだが、高熱というのは人の判断を鈍らせる作用があるらしかった。
再予約します、と受付に伝えると事務員は私に尋ねた。
「君の名は?」
あと診察券の番号。
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予約を取り直した頃になってようやく、ホルモンも正常に戻り、体調はほどほどに良くなっている。
と、思ったのだが何故か良くなっていなかった。
正確には良くなったのだが、よりによって土曜日に突然、咳だけが不吉に止まらなかったのだ。
これ以上再検査を長引かせたくない、という個人的な判断により、私は黙って咳止めを飲み込みタイミングを見計らって三度目の健康診断に行った。
そして見事検診を受けることに成功し、三週に渡る健康診断はようやく幕を閉じる。
実に長い道のりであった。
願わくば、来年まで訪れたくないものである。
受付に戻り検査が終わった旨を伝えると、事務員がこう尋ねる。
「君の名は?」
「ぴんこです。(真顔)」